風に恋して ~自由人への応援歌~

風に恋して ~自由人への応援歌~

旅 「イスラエル」編 7章


平成8年2月25日

 昨夜は、身体がだるく、10時前にベットに入った。とても楽しい夢を見た。高校2年生の時のクラスメートが大勢出てきて、一緒にワイワイおしゃべりしたり、お酒を飲んだり、近藤君、三好君、藤本君、林善ちゃんの顔もあった。浮き浮きしてくる。大学生終了までが私の人生の第一ステージとするなら、高校2年生のこの時期が第一ステージのピークを彩った季節といえるだろう。17才の青春真っ盛り、演劇部長として県大会に出場、私たちの出場作品「夕鶴」は2位となり、中国新聞社より、個人として演技賞を授与された。この時、1位を競い合った学校の主役を演じていた河野美代子女史とは広島大学で再度顔を合せることになり共に演劇活動を続けたのだが、彼女は現在広島で元気印の産婦人科医師として、幅広い活躍をしている。「さらば哀しみの性」というタイトルで、女子高生の性につき、医師兼カウンセラーとして現場から、多くの警鐘を鳴らす本を出版してもいる。心の片隅に、初恋の男性に対する切ない想いを秘めながら浩さんの激しすぎる求愛のど真ん中にもいた。「愛している。」「結婚したい。」「結婚相手はたあ子しか考えられない。」私をたあ子と呼ぶのは地球上で浩さんのみ。彼の激しい求愛の波に巻き込まれつつも、当時の私は心が幼く、「愛」とか「結婚」という言葉になじめなかった。現実感がなく、むしろ不安さえ感じたこともある。毎朝、学校(広島県立呉三津田高等学校)の近くで(彼の家は学校の側にあった)、木刀の素振りをしながら私の登校を待っている。放課後も、太平橋(木製の小さな橋)の袂で土手に座り、タロウ(彼の愛犬)と共にギターを弾きながら、クラブ活動で遅く下校する私を待っている。家まで私を送ってきて、夕食を我が家で共に食べる。夜8時頃、彼はいったん自分の家に帰るのだが、真夜中になるとタロウを連れて私の部屋の前に立つ。私の部屋は、道路に面しており、大きな窓はスモークガラスとなっている。ガラス越しに走ってきたタロウの息遣い、浩さんの息遣いが伝わってくる。呼吸音だけの静寂の中、私は苦しかった。もちろん真夜中の訪問時、彼は声をかけたりはしない。しばらく窓の前に立ち尽くしているだけではあるが、その間、私は息を殺し、彼とタロウが、窓の前から立ち去ってくれるまでの時間を耐える。彼とタロウの気配が消えて、やっと安心して眠りに入るという毎日だった。激しく濃密すぎる浩さんの求愛に幼い私の心はついて行けなくなり、何度か彼を遠ざけたりしたが、そんなことで怯むような人ではなかった。ある夜、私の不得意だった漢文を教えてあげると言って彼は遅くまで私の部屋に居続けた。そして、勉強中、彼の手が肩にかかり徐々に私の顔を引き寄せる。どうしよう、どうしよう。心はうろたえる。焦るもののどうすればよいのか、幼い私にはなす術はなく、浩さんからのファーストキッスを受けてしまった。その瞬間、部屋のふすまが開き母が現われた。気まずい空気の中、母は口調は優しいけどはっきりと娘との交際は、しばらく中止してほしい旨伝えた。彼の両目からは大粒の涙が静かに流れ続けていた。こんな遠い思い出にしばらくまどろむ。夢のせい。

 朝食のレストラン、客たちが真剣な顔で何事かをあちこち固まって話し合っている。聞き耳を立てる。どうやらつい先程、近くのバスセンターで爆発事件が発生したらしい。アラブ人が爆発物を身につけ、自らの命と共に約20人を道連れに爆死したらしい。そんな会話が途切れ途切れに聞き取れた。そう言えば先程思い出にふけっている時、バスが壁に激突したようなドカーンという大きな音がしたが、のんきな私は大きな音がしたというだけで、それ以上何も考えないし、感じてもいなかった。まだ続くのか、悲惨な戦い。神よ、あなたは何を望む。もうよしたらどうだ。愚かで哀しい、そして一途な人間の犠牲をいつまで望むのか。客たちの話が一段落した後、お互いに「ミステイクしないようにね。」の声。その言葉に私は戸惑う。どの道を選ぶかで今日の生命がかかっている。そのことを知った上で、さりげなく「ミステイクしないようにね。」の一言で別れていく。この人たちの潔さ、静けさ、誰一人興奮する人もいなければ、近くである現場へ行ってみようとする人もいない。「今日は、雨が降りそうだから傘を持った方がいいわね。」とでも話しているみたい。同じことが、日本で起きたら野次馬を含めて大変な騒動であろう。この人たちの冷静さに生きることの質の違いを見せ付けられた。今日の生命は神のみぞ知る。

 事件現場と私の宿泊先YMCAは目と鼻の距離。多くの人に心配してもらったらしいのだが、帰国後、この事件について晶美嬢から詰め寄られる。「ママ、どう責任をとるつもりなの?!あの事件はね、ママが原因で起きたのよ。ママがエルサレムに入ったことでエルサレムの磁場が変ったの。それであの事件は起きたのよ。」責任をとれと言われても、何を責められているのかさえ腑に落ちない私は黙って晶美嬢の言葉をやり過ごすだけ。
部屋に帰ってくる。外が騒がしくなってきた。サイレンが鳴り響いている。波動が重い。頭がぼやけてくる。ハートが痛い。ともかくチェックアウトをしよう。フロントでアリが緊張した顔で待っている。「いま街がとても緊張している。何が起きるか予測がつかない。人の心を刺激してはいけないので、2人で並んで歩くことは避けよう。ここにメモを書いたので、このメモのものをドラッグストアで買ってきなさい。僕は荷物を入れて車の中で待っているから。」辺りを注意深く見回しながら、アリはピリピリしている。一人街に出る。歩いている人は少ない。静かだ。街全体が息を潜めている。エルサレムの街から離れると、やっとアリの波動が和らいだ。砂漠を通って、サンジョルジュへ向かうと言う。サンジョルジュが何なのか私には解からないが、「素晴らしいところだよ。是非君に見せたい。」と張り切っている。木は一本も生えていない砂漠を走る。途中、急に強い波動に包まれた。胸が苦しい。せつない。涙が静かに頬を伝う。理由は分からないが、涙は拭いても拭いても溢れてくる。「なぜ泣いているの?」「解からない、ただ泣きたいだけ。」理由はすぐに分かった。サンジョルジュ修道院だ。アリが見せたがった理由が分かる。切り立った崖の下に、修道院が作られている。とても美しい。懐かしい。ここに来てほしかったのね。ギリシャの聖人2人がこの地に来て、地から食物を出したという。聖人の名前はアルティドクス(?)。ここだけ少ないけど樹木が茂っている。周りは草ひとつ生えていない砂漠の中。この聖地に480年、エジプトのテーベから来た聖ヨハネが修道院を建て集団生活を始めたという。私は長い瞑想と祈りを捧げる。瞑想している間に、アリが友達だよとパレスチナ人の男性を一人連れてくる。その人から私はビーズで作ったブレスレットをプレゼントされた。

その後エリコへ向かう。エリコはパレスチナの管理下にあり肥沃な土地。二つの山から甘い水が集められているから、エリコは常に緑溢れる街なのだと教えてくれる。アリの求愛が始まった。「どんなに僕が君を愛しているか、君には解からないだろう。」「僕は、この2日間君のことばかりを考えていた。」「僕を日本に呼んでほしい。もしそれができないのなら、君は近いうち再度この地へ戻ってきなさい。」「日本へ帰ったらイスラエルに戻ってくるまでの間、毎週一回、必ず僕に電話をかけなさい。」「君は僕を忘れてはいけない。二人は特別な間柄なんだから。」一方的な話に私は答える元気がなくなってくる。そうしている間にも、車はどんどん進んでいき、クレメンタール(誘惑の山修道院)に到着。イエスが40日間断食して悪魔の誘惑と闘ったところだという。悪魔か。アリは悪魔なの?神なの?つまらないことを思う。「ここは君独りで行って大丈夫、安全だから独りで行っておいで。エリコ最古の街だよ。僕はここで待っているから。」私は炎天下、世界最古の城があったという地区に入っていく。「7回も破壊された城。破壊された都度、その城壁の上にまた城を建設する。破壊される、建設するということを7回繰り返したため、石垣が層になっています。」心地よい日本語の響きに誘われ、私は声のする方へ近寄っていく。幕屋のメンバーのようだ。手島佑郎さんと同年輩と思われる男性が最初に私に気づき、笑顔を送ってきた。どうやら私を日本人とは思っていなかった様子。佑郎さんと一緒にヘブライ大学へ通っていたという。私が一人で旅していることに、たいそう驚かれる。「一緒においでよ。エリーシャの泉が近くにあるのでそこに行きましょう」ついて行く。身体が震える。全身総毛立つ。数々の奇跡を起こしたと言われるエリーシャの泉の水を一口飲んだ。ブラジルに住む日本人を連れての巡礼で、彼はリーダーの様子。彼の説明はとてもわかりやすい。彼らはこれからガリラヤ湖に向かい、帰国の日も私と同じである。「一人じゃ大変でしょ。一緒においでよ。」との誘いに、一瞬心が揺れる。このグループ内に加われば土地の意味やこの地の歴史、人物など全てが明らかになり、守られて楽に旅をすることができるだろう。でもこの旅の目的は何?イスラエルの歴史を知ること?確かな答えなどまだ持っていないけれど、この旅は私自身を知る旅のような気がしている。観光旅行をしようとしているのではないよねと自分に問いかける。この人たちと合流すれば、無難で無事だけれど「私」が消えていく。アリとの旅は緊張感に包まれ、大変だけれど一瞬一瞬が驚きと感動に満ちている。アリは真剣な顔で「君にイスラエルの全てを見せたい。僕はその為に今日300km車を走らせて、南ユダから君を迎えに来た。絶対に君を幸福にする。」「君が一人じゃ見られないところ、君に必要な場所、全てに僕が連れて行く。」それが自分の使命であると言わんばかりの勢いがある。その気持ちを踏みにじる冷淡さを私は選べない。彼らの暖かい誘いに感謝の言葉を伝え、アリの待っている場所へ戻ると彼は満面の笑みで私を迎えてくれた。日本語の説明文が付いている「聖地写真集」と鳩のバッチ・いちご・サンドイッチを大事そうに抱えて。ありがとう、アリ。晶美嬢が言っていた「白髪の老女」に出会うチャンスを私は自らの意志で放棄した。幕屋グループについて行けば私は幕屋の創始者手島郁郎氏亡き後を守っている手島千代女史に会えた筈である。

ナザレに向かう風景は土地が豊かでトマトなどの野菜畑も多く、緑に彩られる。車窓を流れる景色に見とれているとアリからの言葉が続く。「これから行く全ての教会に献金しなさい。いいかい、それは教会のためでも僕のためでもない。君自身のために献金すべきなんだ。ここで千ドル、2千ドル多く使ったとしてもそれは君自身を清め、救うためだよ。一生に一度の体験じゃないか。お金はお金でしかない。」ほとんど命令口調で迫ってくる。言いたいことは解かるけれど有り余るお金を持っているわけじゃないので返事ができない。その後は「日本に恋人はいないのか?」「メイク・ラブはしないのか?」「ビジネスは何をしている?」「収入はどの位ある?」「どんな家に住んでいるの?」「子供は何人で、何をしているの?」などプライベートな質問攻めで、まるで尋問を受けている気持ちになり、「それ以上の質問をするのはやめて。私は何も話したくない。これからは一切答えない!」と怒ってしまった。「悪かった。謝るよ。でも僕は君について全てが知りたいんだ。」無視し続ける。セキュリティー(検問所)を2個所通過する。軍用トラックが通り過ぎる。私の日常とかけ離れた景色に身体が硬直する。私は一体どこを走っているのだろう。景色が一変した。急に菜の花畑を思わせる映像が入ってくる。オリーブの木、緑と黄色の絨毯が広がる。景色の中へ私は溶け込んでいく。これから何が始まるのか、このストーリーの主役は誰が演じるのか、もう私の意志とは関係なく、ページは進んでいくようだ。私はスクリーンの中へ迷い込んだ異星人。セントピーター養魚場、抜けるような青空、白い雲、両サイドに広がる伸びやかな田園風景、牛や羊の群れ、ヨルダンの山々、車内に流れる静かな音楽。これは現実に起こっていることなのか。夢か幻か。もう私には解からない。意識が身体から離れて、宙を遊ぶ。涙が意味もなく流れている。運転しながらアリは無言で私の手を取り、甲に優しくキスを繰り返す。これは現実じゃない。夢だよね。あまりにも美しい風景の中、私は今どこにいるのか、どこから来て、どこへ向かっているのか。そんなことにどれ程の意味があるのだろう。この地がアメリカであってもロシアであっても大差はない。私の意識は三次元の枠組みから飛び出し、空や雲、風、木々、花など自然界の綾なす呼吸と共鳴し、一体となっている。この場には私の肉体としての存在感はなく意識だけが存在している。心の時計は無限の時の中を遊ぶ。ずっと昔から自然はこんなふうにただただ存在し続けていたんだ。こんな四次元(と言ってよいのかどうか私には解からないが)空間への旅を味わっているこの瞬間(永遠の時間)を、至上の悦びで受け止める。どの位の時が流れたのだろう。心は無となり、宙を漂っている時、急に全身に鳥肌が立ち、身体が震える。「待って!スピードを落として!」何かがある。私は意識を集中して前方を見つめる。「お願い、ゆっくり走って!」それは私の真っ正面に現われた。これだ。近藤宏次郎氏が言っていた古代の日本の神々が封印されている石というのは、これに違いない。「アリ、車を止めて!私は、あそこに行かなくてはいけないの。今理由を説明している暇はない。とにかく止めて。私はあの白い石のところへ行くのよ!」まるで駄々っ子のように言い募る。

 平成7年11月、出雲大社へ行った時、近藤宏次郎氏から日本とイスラエルの和合は私の役目だといわれ、意味も分からないながらイスラエルへの一人旅をすることになり、出発前、近藤氏に会いに行った。旅先での注意事項など聞いておこうと思ったのだが、その時、近藤氏から依頼されたことがある。「浜口さん、ガリラヤ湖に行くのなら是非やってきて欲しいことがあります。気にかかっていたのですが、僕がイスラエルに行った時、どうしてもそこに寄ることができませんでした。ガリラヤ湖に到着する前に白い大きな石があります。その白い石に古代の日本の神々が封印されたままになっていますのでその封印を解き、神々を日本に連れて帰って下さい。」「そんなこと私にできる筈がありません。」「いいえ、あなたにできます。その石の前に座って瞑想して下さい。」「瞑想するだけでいいのですか。でもその石がどれかをどうやって私に解かるのでしょう。」「大丈夫です。行けば必ずあなたには解かります。お願いします。」「できるかどうか私には何もわかりませんが、その石が見分けられるならその前で瞑想すればよいのですね?」そんな会話を思い出す。

車を無理矢理道端に止めさせ、私は一人オズオズとその石に近づいていく。この石に間違いないの思いがある。両手、頭をその大きな石につけてみる。柔らかい。この石は呼吸している。エルサレムの嘆きの壁と同じ。石が私の身体に合わせて変形していくのを感じる。石に触りながら、まわりを一周し座り込む。瞑想に入る。「この石に封印されているという日本の神々よ。近藤宏次郎氏より依頼され、私はここでしばらく瞑想をさせて頂きます。もし、封印が解けるならどうぞ私の身体にお入りになって下さい。」ゆったりと時間が流れる。輝く太陽、紺碧の空の下、そよ風をうけて気持ちよい波動に包まれる。待ち疲れたアリに呼び戻されるが、気分がとても高揚していて私は歌を口ずさむ。踊り出したい気分。「どうしたの?」アリに聞かれるが答えるべき言葉も見つからないので、一人で歌い続ける。

 ヨルダン川公園。いったいどの位の数の人たちがこの場所で洗礼を受けてきているのだろう。ウキウキした気分はここでも続いている。洗礼の川ヨルダンに足を浸ける。冷たい水が快い。童心に返り鼻歌混じりに岸辺に座り、足をピチャピチャ遊ぶ。靴を履く時、目をこする。親指の爪が両方ともゴールドに染まり光っている。なぜ?再度目をこすってみるが、やはりゴールド色である。周りでも足を浸けて遊んでいる人たちがいるので、彼らにも私と同じ反応がでているかどうか、しばらく観察していたが、特に変った反応を示す人はいなかった。ヨルダン川洗礼の場所で足の親指の爪が黄金色に染まったという事実だけ胸に収めておこう。

 ガリラア湖畔のガイビーチホテルはとても素適なリゾートホテルだった。チェックインして外へ出る。屋台でピタとミネラルウォーターを一本購入。今夜の夕食は300円。ピクルス、玉ねぎ、トマト、カブ、オリーブ、ねぎ……20数種類並んでいる野菜をどれだけ取っても良いらしい。手当たり次第ピタに野菜をはさんでいく。今日もヘルシーな夕食に感謝、感謝。街を歩いていると、だんだんそれまでとは異なる重い波動に包まれてくる。路上ですれ違う時、現地の男性三人に囲まれた形になった。その時、異様な波動で気持ちが悪くなり、うずくまってしまう。ホテルに引き返す。
長距離運転の御礼をしようとロビーのティールームへアリを誘う。「ワインでもいかが?」アリは顔を顰める。アルコールは一切飲まないと言う。アルコールを飲むことに対する嫌悪感、罪悪感がその表情に出ている。紅茶を二つ頼む。これまでは質問され続けていたので、逆に私の方から質問をする。彼は南ユダに住むベドウィンで家族構成は母親と子供6人の合計8人。生活は大変苦しく、子供に靴や洋服を買ってあげることはほとんどできない。ちゃんとした教育を受けさせたい。その為にはどうしても現金収入が必要で、これまでホテルに勤めたりしていたが、今は正式な資格を取ってツアーガイドになろうとしている。今年11月にはガイドのテストを受けるつもりだと教科書や自分の作ったノートを見せてくれる。決して遊んでいるわけじゃないが、豊かになれない。ベドウィンとして生れてきたことにやりきれなさを感じている心が時折覗く。家族が安心して一緒に暮らせる家が欲しい。ポツリポツリと話すアリの姿を見詰めていて思う。家族を幸せにするために一生懸命なんだね。そんなアリを尊敬するよ。とても素適だよ。がんばってね。今、学んでいることがあなたを大きくしていくわ。あなたは日本人である私をうらやんでいるようだけれど、私も過去、この地で砂漠を歩きまわる油脂の行商人だったことがある。あなたと同じ想いを何度もしてきたわ。あなたは私なのよ。私は明日のあなたかもしれない。生きているどの瞬間にも意味がある。今こうして紅茶を飲みながら話しをしている私たちの存在自体が、とても大きな意味があるわ。大丈夫よ。あなたは家族と一緒にとても幸せになれる人よ。イメージで私はイスラエル全土と、その中で暮らすアリ、アリの家族を抱きしめる。「イスラエルに愛を送ります。アリとその家族がいつまでも幸せに生きていけますように。」近くに友人がいるので、今日はそこに泊めてもらうから、明日9時頃迎えに来ると言い残して彼はティールームから去っていった。

部屋に入ってフロントで手渡されたメッセージを読む。晶美嬢と理恵からのFAX。何か我が家で異変が起きているらしいのだが、文面からは内容が解からない。電話を入れてみる。出国してやっとつながった電話だ。晶美嬢は興奮しているし、理恵は泣きじゃくっている。まるで要領を得ない。森本氏が一緒にいるようなので、森本氏にかわってもらい、ようやく全体像がつかめる。

1月22日、UFO氏と共に我が家にやってきた千亜紀という名の女性がいる。九州から出てきたらしく、その日から彼女は我が家の住人になっている。26歳。UFO氏からの呼び出しで彼女が池袋へ出かけた時、どうやら理恵を一緒に連れていったようで、そこで30歳~50歳代までの男性3人(精神世界に興味を持って学んでいる人たちらしい?)と合流し、夜遅くなって泊まるところがないからとこの3人を我が家に連れて帰ることになったようである。その帰りのタクシーの中で理恵は酔っているこの3人の男たちから言葉の暴力を受けた様子。私もかつてそうだったけれど、いわゆるコカ・コーラのボトル体型の女性は年齢に関係なく卑猥な言葉を投げかけられる。家に着くと千亜紀嬢は一人でさっさと眠ってしまい、理恵はこの男たちから危害を受けるのではないかという恐怖にかられて、耐え切れず晶美嬢に泣きながらすぐ来てくれとの電話を入れたらしい。驚いた晶美嬢は夜中、理恵のもとへ駆けつけてくれ、事の顛末を知り千亜紀嬢を責める。責められた千亜紀嬢は家を出ていって帰ってこない。男たちは翌朝去っていったが、理恵の恐怖心は消え去らず、男たちが待ち伏せしているかもしれないとの妄想のため学校へ行くことを拒否。家から一歩も外に出たくない、恐いと泣き続けている。理恵を安心させるため、晶美嬢は友人のミンさん(モデル歴がありとても美しい女性)を呼び、また森本康彦氏や田中氏も警護として呼び出したらしい。UFO氏から晶美嬢に対し「千亜紀をいじめ、なぜ追い出した?彼女は泣いている!」強い怒りの口調で電話が入ってきたりで、複雑な様相になっているということが森本氏の説明で明らかになる。森本氏と相談の上、私からUFO氏に電話を入れ、これ以上事を複雑に大きくしたくないので、私が帰国するまでは我が家に来ないで欲しい、言い分は帰国後、ゆっくり聞きますと伝える。娘の気持ちを落ち着かせるためにFAXを送る。
TO RIE
FAXを今、全部受け取りました。やっと話しができたね。辛い目に合わせてごめんね。母さんの想いが足りなかったと思う。本当にごめん。理恵は母さんの一番大切な宝。どんなことがあっても母さんは理恵を守っていくよ。理恵はこれからも多くのことを体験していくけれど、大丈夫。あなたはとても強くなれる子だと母さんは思っています。あなたの優しさを利用する人が今後も出てくるでしょう。でも、大丈夫だよ。あなたは日一日と強く、そしてしっかりとしていくでしょう。今回のことは母さんの配慮が足りませんでした。これから毎日神への祈りの時、理恵が幸せで、多くの人に守られていますようにとお願いしていきます。もう、大丈夫。母さんを信じて、晶美さんたちを信じて、楽しく母さんの帰りを待っていて下さい。美しく成長していくあなたを見つめていくのが母さんの最高の悦びです。愛しています。I LOVE YOU!!
TAKAKO

娘を最も恐怖に落とし込んだYという人に私は5月、京都で出会うことになるのだが、それは後のこと。

To be continued


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: