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その春の休暇はキャンセルになった。
オフィスの自席からぼんやりとパーテーション越しにくぎられた青空を眺めた。
あのころはそれでよかったはずだ。
「予定が変更になった」
「優先順位どうなってるわけ?」
どこかで聞いたような台詞のあとに電話は切れる。
リダイアルする気もおきないほど僕はつかれていたのだろう。
短い恋の季節にでかけた車内でそれはながれていた。
深夜の天気予報のBGMにふいにその曲はながれてきた。
「どうしたの?」
「この曲が流行ってたころなにしてた」
「きみはなにしてた」
「また質問に質問でこたえるんだね」
「なんか遠くをみつめる目つきだったよ」
「そうか」
「ちょっと中学生してた」
「この曲は天気予報のBGMみたいといってた」
「かわった娘だったのね」
「それが世代というものかもね、きみにはどう聞こえる?」
「ちょっとこれでもかって感じ」
「そうか」
僕はすこし気まずい感じで、そのyoutubeをとめた。
NAGISA MODERATO
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