TESTAMENTO

TESTAMENTO

2006.09.27
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30年前に冬の海に憧れて、北の日本海を一人で旅したことがあった。

一歩踏み出せばそこには、もう一つの明日があった。

打ち寄せる白波の前に立ち、芯まで冷えきって行く身体に生きていることを感じていた。

まだ何も無かったけれど、親がいて流れて行く時間があって、目的の無い明日があった。

幾つかの明日が消えて一つの道を歩み、今日を生きながら、伴侶ができ子供ができ、今日を生きることが目的だった。

母が倒れ父が倒れ、今日を支えることが目的だった。
父が逝き母が逝き、子が育って離れて行き、やがて支える今日が軽くなった。

今また、あの頃のことを思い出している。

一つの明日が終わって、もう一つの明日を考えられる自分に戻っている。



ただ、いつでも誰からも自由でいたかったようだ。

深入りをせず深入りをさせず、いつでも突然に姿を消しても、小さな傷がすぐに癒えるようにと。


いつもずっと、あの冬の日本海の前で立ちすくんでいたのかもしれない。

多分、今からもそうやって生きて行くのだろうな。

もう一つの明日を抱き続けることが、もう一つの今日を生き続ける支えだったのかもしれない。





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最終更新日  2006.09.27 23:13:34
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