ぬくもり







冷たい雨は ビロードの肌触り

どこか北国の 野辺の送りのように

しめやかに 体温を奪う。




抱えた腕の温かさが 

消え入りそうな意識を呼び覚まし

記憶の澱(おり)が ゆらゆらと舞い上がる。



あの日 あなたの絡めた腕の

柔らかな ぬくもり 

ふれあう肩 重ねる手



雨は 知っていた

移ろいは 失うことだと

そぼ降る雨にくすぶる 焚火のように

やがて静かに 沈んでゆく。




© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: