Atomic Heart

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中つ国第2紀

中つ国の歴史
~第2紀~

【第2紀】
先の怒りの戦いの折、大部分の人間達はモルゴスの側に立って戦っていました。戦いが敗北に終わるとこの人間達は東へと逃げ、その地に住んでいた同族達を恐怖をもって支配し、王として君臨するようになりました。モルゴスは滅びを迎えようとも、彼の蒔いた憎悪や不信は中つ国に残り、育てるものさえいれば、いくらでも悪しき果実を実らせるのです。一方、エルフの友としてヴァラールの側で戦ったエダイン達には、褒美として智恵や力、そして常人に数倍する寿命と、危険な中つ国から離れた島、アンドール(贈り物の国の意)が与えられました。この島はヌメノ―ルすなわち西の国とも呼ばれました。実際この島は、中つ国より“至福の島”に近かったのです。『指輪物語』に登場する“偉大なる人間”、“西方人”とも呼ばれるドゥネダイン族の起源は、ここにあります。そして彼等の初代の王は、かのエアレンディルの息子エルロスでした。

 ドゥネダインは有限の寿命しか持たぬ人間でしたが、背は高く智恵と力に溢れ、病を知りませんでした。目には星の輝きがあり威厳は増し、人間というよりはむしろエルフに似ていたのです。実際彼等は中つ国と“至福の島”のエルフとの交友を保っており、王族を中心にエルフの言葉を話す者も多かったのです。この頃エルフからは多くの贈り物が携えられてきました。その中の一つに白の木があります。これはかって“至福の島”に存在したテンぺリオンの木によく似ており、二ムロスという名でも呼ばれていました。

 彼等は航海術に長け、中つ国の遥か南方や北方、あるいは東の果てまでも航海し、時には中つ国の人間達に力を貸すこともありました。エルフとの交友を保ったドゥネダイン達は、中つ国の人間達よりあらゆる面で勝っていたのです。人々は暗闇の恐怖から脱し、ドゥネダイン達を王と崇めたのですが、彼達が中つ国に長居することはありませんでした。彼等の心は東の中つ国より、むしろ西の“至福の島”に向いていたのです。しかし、常命の人間が西方を目指す事はヴァラールによって禁じられており、あえて禁を犯そうとするドゥネダインはおりませんでした。そう、この時代には未だ、いなかったのです。

 ドゥネダインは死にました。力ある存在であり、その生は輝かしいものでしたが、老いによる倦怠を退ける事はできず、その先にくるものから逃れることもできなかったのです。永遠の命を得たいという欲望は強まり、後にはヴァラールによる西方への渡航の禁に対する不満を口にする者も現れるようになったのです。彼等の心に影が兆しました。

 ヌメノ―ル14代目の王の時代(このころ既にヌメノ―ルは2000年以上を経ていました)、このころヌメノ―ルは2派に分裂しました。王を始めとする圧倒的な多数派は王統派と呼ばれ、もはやエルフやヴァラールを心に留めようとせず、死を恐れ、それによって得られるものに心を向けようとはしませんでした。死の不安から逃れるために彼等は享楽や富を求め、中つ国に植民地を設けては、住民を支配し朝責を求めたのです。対して少数派はエレンディリ(エルフの友)と呼ばれ、エルロスの血を引く王家への忠誠は失ってはいないものの、依然としてエルフと親交を保ち、ヴァラールへの敬意も失っていませんでした。彼等は中つ国のギル=ガラドに協力し、その頃新たな脅威となっていたサウロンの魔手と戦っていました。

 これ以降、エレンディリにとって苦難の日々が続きます。20代王は己が前でエルフ語の使用を禁じ、22代王の治世の間には白の木は枯れ始めました。更にエルフ語の使用を完全に禁じられたこの頃、彼等の大部分はヌメノ―ルを離れ、ギル=ガラドの元へ発ったきりついに戻りませんでした。

 第3紀3261年、時の王アル=ファラゾンは、大艦隊を仕立て中つ国に出兵しました。かの地にてサウロンが“人間の王”を号し、ヌメノ―ルに挑戦してきたためでした。しかしドゥネダインの大艦隊の威容に打たれたサウロンは早々に降伏し、この戦いはあっさりと決着がつきました。彼は捕虜としてヌメノ―ルに護送されることが決まりましたが、これはサウロンにとっても望むところだったのです。彼は言葉巧みに王に取り入ると、あろうことかメルコールを崇めるように仕向けました。サウロンが王の寵愛を得ていることに気付いた国民達も大部分がこれに習いました。そして西方からの贈り物であった白の木は、遂に切り倒されてしまったのです。

 この時代のヌメノ―ルにも、僅かながらヴァラールに忠実な者も残っていました。王の顧問官であり、王の遠い血縁でもあったアマンディルとその息子エレンディル、そしてその息子であるイシルドゥアとアナリオンといった人々です。中でもイシルドゥアは白の木が切り倒される寸前に、その実を持ちかえるという手柄を立てていました。しかし、彼等の力をもってしても避けられぬほど、ヌメノ―ルの滅びは間近に迫っていたのでした。

 老いたアル=ファラゾン王は、死への恐怖からサウロンの甘言に乗り、遂に“至福の島”への侵攻を開始したのです。そして王が西方の地を踏んだその夜、ヴァラールはこの世界を捨て、イルーヴァタールはその全能の力で世界を作り直しました。海は荒れ、嵐は吹き荒れ、火山は火を吹き…、凄まじい力がこの世に降りかかり、王の軍もヌメノールそのものまでも海中に没したのです。サウロンすら恐れた軍勢も、人の技を極めた尖塔や宝物、ドゥネダインが築き上げてきた全ての物が、雄々しい戦士や着飾った美姫もみな、藻屑と化したのです。これ以降、“至福の島”はこの世から切り離され、決して人間の手に届かない所に移されました。この大没落を生き延びたのは、最期までヴァラールに忠実だったエレンディルとその一行だけだったのです。彼等は中つ国に流れ着き、この地に王国を築きました。しかし彼等の哀惜の思いは強く、その思いはしばしば西へと向うこととなったのです。

 これがヌメノールの没落として伝えられる物語です。そして第2紀にはもう一つ端倪すべからざる物語があります。マイアのサウロンと力の指輪の物語です。そう、『指輪物語』の直接の原因となる“指輪”は、この時代に作られたのです。では、少し時間を戻してサウロンに焦点を当てて見ましょう。

 前にご紹介したとおり、サウロンはモルゴスの副官として最も信任を得たマイアールでした。彼はモルゴスが滅ぼされると、ヴァラールによる懲罰を厭うて中つ国に身を隠し、再起の時を待ちました。

 一方、中つ国にはエルフやドワーフが自らの国を築いていました。エルフの工匠ケレブリンボールがエレギオンに築いたのもそうした国の一つです。この国はドワーフの王国モリア(ドワーフの言葉では、カザド=ドゥムと名づけられていました)に程近く、両者の間には友情が生じ、共に大いに繁栄を迎えていました。

 サウロンは密かに勢力を伸ばし、人間達の間に隠然たる影響力を築いていきました。しかし彼は、エルフを支配する考えも捨ててはおらず、各地を回っては正体を隠し、エルフ達と交わりました。このころの彼は高貴で美しい外見を保っており、またアナタール(贈物の王の意)と名乗り多くの知識をもたらしたため、大概のエルフは彼を歓迎しました。中でも特に歓迎が大きかったのは、工匠の国エレギオンにおいてでした。この国のエルフ達の間で、彼のもたらした技は非常に高く買われていたのです。そして己が力が円熟を迎えたことを悟ったエルフの細工師達は、その技の集大成である力の指輪を鍛え始めたのです。

 彼等は多くの指輪を鍛えました。試作であり習作でもある初期の物から、だんだんと技を磨き、後になればなるほど指輪に込められた力も大きくなっていきました。一方、エレギオンを遥かに離れたモルドールの地では、サウロンもまた指輪を一つ鍛えていました。彼の指輪はエルフ達のどの指輪よりも強力で、あらゆる指輪を支配下に置くことができました。と言うのも、エルフ達の技はサウロンの教えによる部分も大きかったため、彼はエルフ達の行いを指導し、監視できる立場にあったからです。彼は己の指輪、すなわち一つの指輪を使い、エルフ達が指輪を使って行った事をことごとく監視し、捻じ曲げ、支配しようという計画を練っていたのです。

 しかしエルフ達は、サウロンが期待した程易い相手ではありませんでした。サウロンが一つの指輪を完成させ、それを指にはめた時、エルフ達はサウロンの正体とその邪な計画の全貌を悟ったのです。彼等は指輪を隠し、激怒したサウロンは公然と軍を率い、エレギオンを襲撃しました。この戦いでエレギオンは滅び、王であるケレブリンボールも死を迎えました。しかし、彼が最期に鍛えた3つの指輪は難を逃れ、エルフの賢者達に預けられました。この3つこそサウロンが最も欲した強力な指輪だったのですが、エルフ達は公然とこの3つを使うことはせず、サウロンもその行方を掴む事はできなかったのです。

 ちなみにこの頃、荒廃したエレギオンに代わって裂け谷にエルフの避難所が設けられました。裂け谷の主は、エルロスの兄弟である半エルフのエルロンドでした。この憩いの館は第3紀まで残り、『指輪物語』の時代にも自由の民の避難所として重要な役割を果たすことになります。

 さて、3つの指輪を逃したサウロンでしたが、残りの指輪は皆、彼の掌中に入りました。彼は七つの指輪をドワーフに、九つを人間に与え、これらの種族を支配しようとたくらみました。しかし、ドワーフ達は頑堅・頑固であり、容易にサウロンの支配下には降りませんでした。しかしそれでも黄金に焦がれる彼等の欲望を煽り、多くの禍事が彼等に降りかかりました(後にこの七つは、あるものは竜の炎に焼かれ、それ以外はサウロンの取り戻す処となります)。一方人間達は、容易にサウロンの軍門に降りました。指輪を受け取った者達は永生と力を得たように感じましたが、長い年月が経つうちに生は倦怠に代わり、肉体は薄れ果てて、指輪の(ひいてはサウロンの)奴隷と化したのです。この9人こそサウロンの最大の下僕である指輪の幽鬼、またの名をナズグルといい、主の影として各地で暗躍を繰り返しました。

 こうしてサウロンの勢力は拡大し、自ら“万物の王”を称すと、エルフとヌメノールを滅ぼしたいと望むようになりました。彼の手によって多くのエルフが害され、自由の民が恐れと憎しみを込めて呼ぶ名“冥王”が広まったのもこの頃のことです。サウロンの増長は必然的にヌメノールの目にとまるようになり、時のヌメノール王アル=ファラゾンはついに冥王討伐の軍を挙げました。

 この戦いの顛末とヌメノールの没落は、先にご紹介したとおりですが、この時、サウロン自身も大海に沈み、その霊魂だけが中つ国の拠点であるモルドールに帰り着きました。一方、ヌメノールを脱出したドゥネダイン達も中つ国に王国を築き始めました。北方に流れ着いたエレンディルのアルノールと、南方に流れ着いたイシルドゥアとアナリオンのゴンドールです。彼等はヌメノールから7つの石を携えて来ました。これはパランティアという秘宝で、これを覗くと時間的にも空間的にも離れた場所を窺い知ることができ、これによってドゥネダイン達は敵を知ることができたのです。

 サウロンはドゥネダインの生き残りが勢力を広げている事に憤り、モルドールの暗黒の生き物達を糾合して、ゴンドールに戦いを挑みました。これを知ったエレンディルはエルフの上級王ギル=ガラドと語らい、共にサウロンと戦うことを決意しました。世に言う最期の同盟です。両軍はダゴルラドで激突し、エレンディルとギル=ガラドの軍が勝利を得ました。彼等はモルドールに敵を追撃し、7年に渡ってサウロンの暗黒の塔を包囲しました。エレンディルの息子アナリオンを始め、多くの犠牲が必要でしたが、遂にサウロンは追い詰められ、自らエレンディルとギル=ガラドの前に姿を現しました。冥王はエレンディルとギル=ガラドを討ち取ることに成功しますが、自らもここで力尽きました。ちなみにこの時エレンディルが使っていた剣の名をナルシルといい、最期の戦いの際、彼の身体の下で2つに折れました。イシルドゥアはサウロンの指から一つの指輪を切り取り、戦利品として納め、サウロンの魂は放逐され荒野へ逃げ去りました。

 こうして冥王の脅威は去りましたが、一つの指輪は残りました。イシルドゥアはこの指輪を破壊することを是としなかったのです。彼は戦いで亡くした兄弟の記念に白の木をゴンドールに残し、父の国を継ぐべく北へ去りました。そしてゴンドールはアナリオンの息子が継ぐこととなったのです。

 こうして、中つ国の第2紀は幕を閉じました。




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