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王の帰還
The Return Of The King
~王の帰還~
ガンダルフは、ピピンを伴って愛馬飛蔭で三昼夜を走り通し、払暁、ゴンドールの都ミナス・ティリスへ到着した。ミナス・ティリスは大河アンドゥインを挟んでモルドールの対面にあり、長年モルドールの脅威に抵抗してきた西方国の要衝だった。ガンダルフはそこでゴンドールの執政デネソール侯を訪い、彼の長子であるボロミアの訃報を伝えた。そしてまた、サウロンが今や大軍を挙げて一斉攻撃をかけようとしていることを告げた。彼らの会談に同席したピピンは、目の当たりにした大侯の威儀に感動してその場でゴンドールに忠誠を誓い、ミナス・ティリスの近衛兵に取り立てられた。都には、会戦に向けて召集された辺境諸侯の全兵力が到着したが、敵の軍勢に対しては余りにも少数だった。そしてボロミア亡き今全軍の総大将とも言うべきファラミアは、まだ前線から帰着していなかった。
その頃、メリーはローハンのセオデン王の軍勢と共に馬鍬砦へ向かっていた。アラゴルンは途中まで彼らと同行していたが、合流した自らの一族である北方のドゥネダイン、エルロンドの子息エルロヒア、エルラダンらと共に、先発して去っていった。自らミナス・ティリス救援に赴くことを決意したアラゴルンは、不吉な伝説を持つ「死者の道」を通ると言う。馬鍬砦で彼を迎えたエオメルの妹、ローハンのエオウィン姫は彼を必死で止め、さもなくば同行を願いでるが却下され、絶望と共に彼を送り出した。アラゴルンの一行に遅れること2日、全軍を召集したローハン軍も、盟邦ゴンドールの救援のため馬鍬砦を出発した。メリーはセオデン王の小姓に取り立てられたが、ミナス・ティリスに同行することは許されなかった。が、落胆している彼にデルンヘルムと名乗る若い騎士が声をかけ、密かに彼の馬に同乗させてくれた。
ようやくミナス・ティリスに到着したファラミアは、ガンダルフらに、イシリアンでのフロドたちとの出会いを報告した。彼らはキリス・ウンゴルへ向かったと聞いて、さしものガンダルフも顔色を失ったが、デネソール侯は指輪を棄却する試みを非難し、再びファラミアに前線での戦いを命じた。ファラミアはただちに戦地へ向かったが、圧倒的な戦力の差のため敵軍に大河の渡河を許し、ついにミナス・ティリスの外壁も落ちてしまう。
モルドール軍を指揮するのは、指輪の幽鬼にしてナズグルたちの首領であり、サウロンの麾下の中でも最も恐るべき魔王だった。ファラミアは敵の矢に倒れ、意識不明の重体となってしまう。ミナス・ティリスの城門は打ち壊された。しかし入城を果たそうとした黒の総大将の前に、白の乗手ガンダルフが単身立ちはだかった。
時を同じくして、都の何処かで雄鶏が夜明けを告げ、角笛が響き渡る。それは、待ち望んだローハンの到来を告げていた。
ローハン軍は、ミナス・ティリスへの街道をモルドール軍に塞がれた中、森に棲む野人の長ガン・ブリ・ガンの巧みな案内によってペレンノールの外壁に達し、敵軍を急襲した。セオデン王は軍勢を率い、数々の武勲を立てたが、城門からとって返したナズグルの首領によって討ち死を遂げる。主君を失い恐怖に混乱するローハン軍の中、一人黒の王に立ち向かったのは、デルンヘルムと名を偽って従軍してきたエオウィン姫だった。こうして、生き身の人間の男には倒せないと伝説に言われた黒の王は、女性であるエオウィンによって倒された。この時、メリーも助太刀をしたが、エオウィンともども、黒の息によって重傷を負ってしまった。
ローハン軍は、一向に勢いの衰えない敵の大軍に次第に追い詰められていった。さらに追い討ちをかけるように、そこへアンドゥインを溯ってウンバールの海賊船団が現れる。しかし驚いたことにその海賊船には、死者の道を行ったアラゴルンらの一行が乗っていた。死者の道とは、そのかみサウロンとの戦いにおいて、ヌメノールとの誓言を破った山々の王が誓言の石に封じられた地で、イシルドゥアの直系であるアラゴルンには、彼らに誓言を果たさせ、呪縛を解く力があるのだった。
こうして、死者の軍勢を伴ってアラゴルン一行は海賊船団を討ち滅ぼし、ペレンノール野に駆けつけたのだった。
ガンダルフは黒の王が城門から去った後、ピピンからの知らせで城内の廟所へ向かった。ファラミアの負傷でついに乱心したデネソール候が、息子を道連れに焼身自殺を図ろうとしていたのだ。しかし近衛隊のベレゴンドの活躍もあってファラミアは救われ、デネソールは単身炎に身を投じた。やがてペレンノールで際どい勝利を上げたアラゴルンが密かに入城し、ファラミア、エオウィン、メリーたちを「王の手」で癒した。
ガンダルフは都に集結した諸候を集め、会議を開く。そして残された総力をあげて、モルドールに正面から総攻撃を仕掛けることを提案した。敵軍に対して問題にもならない乏しい兵力だったが、既にモルドールに潜入したと思われる指輪所持者から冥王の目を惑わすための、全滅を覚悟の最後の作戦だった。アラゴルンをはじめ諸侯はこれに賛成し、影の山脈を北上しモランノンの不落の門へと進軍する。いまだ傷の癒えないメリーはミナス・ティリスに留まり、ピピンがこれに従軍した。全軍は7日かけて黒の門にいたり、迎え撃つモルドールの大軍とついに正面から激突した。
サムは、モルドールの要塞の地下門の入り口で目をさまし、たった一人で主人の救出に向かった。フロドは、エルフのマントもミスリルの鎖帷子も剥ぎ取られ、キリス・ウンゴルの巨大な要塞の中、塔の最上階の一室に閉じ込められていた。状況は絶望的と思われたが、ここでちょうどオークたちが仲間割れをはじめた。サムはどさくさに乗じて塔に潜入し、ついに主人を捜し当て脱出に成功する。指輪はサムから再びフロドの手へ戻され、2人はオルドロルインの滅びの亀裂へ向かって、望みない旅の最後の行程へと出発した。
ガンダルフの目論見通り、サウロンの警戒は殆どミナス・ティリスへ向かっていたので、2人はほぼ敵に見つかることなく滅びの山へと向かうことが出来た。最大の敵は不毛の地での飢えと乾き、そしてフロドの内面を直接苛む指輪の魔力だった。サムは、刻々と衰弱して行く主人に心を痛めたが、見守るより他にどうすることもできない。しかも、モルドールに潜入して以降もしつこく追跡してくるゴクリの気配があり、それもまた不安の種だった。
とうとうフロドは立ち上がれないほど疲れ果て、サムはすっかり軽くなった主人を背負って滅びの山を登った。そしてあと僅かで目的地に達しようとしたその時、再びゴクリが現れ、指輪への凄まじい執念を見せて彼らを襲う。サムとゴクリが争っている間にフロドは滅びの亀裂に辿り着いたが、最後の最後になって魔力に屈し、指輪を我が物と宣言した。しかし驚愕するサムをよそに、ゴクリは指輪をはめたフロドに襲い掛かり、ついに指輪ごとフロドの指を食いちぎって彼の「いとしいしと」を奪い返した。が、その興奮のあまり火口で足を滑らせ、指輪と共に滅びの亀裂へと落下してしまった。
こうして一つの指輪は破壊された。
指輪の消滅と共にフロドは正気を取り戻し、救われたが、同時にモルドール全土の崩壊も始まり、彼らに逃れる術はなかった。
その頃モランノンでは、西軍の大将たちがモルドールの猛攻撃に最後の抵抗を試みていたが、突然モルドール全軍が凍りつき、静止した。ガンダルフは冥王の滅亡を声高く宣言した。そして一人丘の上に立ち、大鷲グワイヒアとその一族を頼んで、指輪所持者たちの救出に向かった。フロドとサムはイシリアンに運ばれ、王の手で癒された。モルドール軍の掃討と怪我人の治癒を待って全軍はミナス・ティリスに凱旋し、アラゴルンは数世紀ぶりに正式な西方国の王として戴冠した。そしてその年の夏至に、エルロンドの娘アルウェンを王妃として迎えた。またファラミアも、エオメルの妹エオウィンと婚約し、喜ばしい日が続いた。
指輪の仲間もしばらく都に留まっていたが、やがて各人の故郷へ帰ることになった。ホビットたちはセオデン王の棺を故国ローハンへ送る大部隊とともに出発し、エドラス、アイゼンガルドを経て、裂け谷へ到着する。ここで年老いたビルボとようやく再会を果たし、秋が深まるころ、ついに裂け谷を出発して懐かしいホビット庄へと向かった。
しかしホビット庄は、出発前とすっかり様子が変わっていた。村は荒れて、人相の悪い男たちがうろついている。裏で糸を引いていたのは、驚いたことに、アイゼンガルドの崩壊後乞食にまで身を落としていた魔法使いサルマンと蛇の舌だった。サルマンの復讐の矛先がホビット庄に向かうとは、誰一人予想しなかったことだった。しかし戦うことを学んだメリーやピピンに率いられたホビットたちは、ならず者たちを掃討し、サルマンを追い詰めた。フロドは彼を殺さず解き放ってやるが、結局サルマンは腹心の蛇の舌に裏切られて殺され、蛇の舌も居合わせたホビットたちにその場で殺された。
これでようやく冒険のけりをつけたホビットたちは、荒らされた土地の復興に力を注ぎ、ホビット庄は以前にも増して豊かな恵まれた土地になった。特に庭師であるサムは人一倍忙しく過ごしていたが、フロドは人知れず病んで、ホビット庄の一切の活動から目立たないように離脱していった。
冒険で受けた心身の傷は、決して癒えることはなかった。
更に翌年の秋、フロドはサムを短い旅に誘う。今ではエラノールという娘も居るサムだったが、少しの間ならと主人について旅に出た。すると途中、末つ森で出会った一行は、今や大海を越えて不死の国へ渡ろうとしているエルロンド、ガラドリエルと大勢のエルフたち、そして彼らと同行するビルボだった。サムはようやくフロドの行き先を察して深く悲しんだが、フロドは自分の全てをサムに相続すると言って港へ向かった。港では、やはり共に海を渡るガンダルフが一行を待っていた。サムは一人ぼっちの帰路を思ってますます悲しむが、そこへメリーとピピンも駆けつけ、フロドに最後の別れを告げる。
そして指輪所持者たちを乗せたエルフの船は、水平線の彼方へ去って行った。
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