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≪就学保障≫について
『同和教育研究大会』での発表内容です。
今まで、私が方々で訴えてきた内容とダブりますが、
何度も何度も訴えて、知ってもらうことしかないと思っています!!
超長いですが、読んで頂けたら嬉しいです。
はじめに
現在、大貴は 気管切開のために10~15分おきの痰の吸引と、
食事が口から取れないので、鼻のチューブからミルクを注入する経管栄養といった
医療的なケアと、就寝時のみ人工呼吸器を必要としていますが、
一昨年、市内の小学校へ入学し、障害児学級に籍を置きながら、
原学級の子どもたちと共に生き生きと学校生活を送っています。
地域の小学校を選んだ理由
6年前、大貴が病院を退院したときは、まだ 24時間人工呼吸器を必要としており
首も据わらず寝たきりの子どもでしたから、幼稚園や学校へ行かせることなど
夢にも考えておらず、せめて自宅の庭へ出してやれたら、
外の空気を吸わせて上げられたら…その程度のことを考えるだけで精一杯でした。
しかし、在宅が進むにつれ、大貴自身に体力がついてくると、
親は欲が出てきました。まず最初に考えたことは、お友達を作ってあげたい!
ということでした。幼稚園や保育園へ行くことはかないませんでしたが、
療育施設へ訓練に通いながら、同年代の子どもたちとふれあうことの喜びを
大貴が全身で感じているのがわかるようになりました。
就学を迎えるに当たり、まず大貴に今何が一番必要かと思ったとき、
同世代の子ども達とのふれあいや子ども達からの刺激は、
地域の学校でしか学べないものであり、大人では与えてやれない何かが、
地域の学校にはあると考えました。それに加え、重度の障害を持った子どもの親は、
常に親亡き後のことまでを考えなくてはなりません。
小さいうちから、地域で育てることがこの子の将来のためにどんなに大切か、
一人でも多くの人にこの子のことを知ってもらうことがどんなに必要か、
私は、そのチャンスが小学校時代にあるのではないかと考えました。
全国規模の親の会やインターネットの情報から、重度の障害を持っている子や
人工呼吸器をつけていている子でも、地域の学校で当たり前に学校生活を
送っている子ども達がいることを知り、その子とその子を囲む子どもたちの
素敵な笑顔に、私は背中を押されたような気がしています。
就学に到るまで
重度の障害を持った子は、当然のように養護学校を進められること、
まして医療的なケアを必要とする子は訪問教育を受けるのが当たり前といった
間違った認識があることを知っていましたから、地域の小学校への
通学を希望した場合、相当の覚悟がいると思っていましたが、
私の思いを知った すでに地域の学校に通っている重度の子ども達の親御さん方から、
たくさんの応援を頂きました。まずは、大貴のことを知ってもらうこと!
地域の学校へ通わせたいという意思を伝えることから始めるように
アドバイスを頂きました。
地域の学校への入学はかなり厳しいだろうという先入観と思い込みもあって、
11月の就学相談で始めて子どものことを知ってもらうのでは遅すぎると考え、
また、いきなり教育委員会に出向いても感情が先走ることはわかっていましたから、
最初はとにかく大貴のことを知って頂くための手記を作り、
7月には市の教育委員会、養護学校、そして、大貴が今通っている小学校の先生方に、
『大貴の願いと親の思い』という手記を読んでいただくことにしました。
地域の小学校の先生方は、大貴の姉を通して、早いうちから大貴のことを
知って下さっており、「来年、元気に入学しておいで!待ってるよ。」と
力強い後ろ盾になってくださいました。地域の子は地域でという先生方の意識と、
そこへ行き着くまでの壁をひとつずつ取り除いて下さった保護者の方々のおかげで、
大貴は私たちの心配をよそに、親の付き添いという条件があるにせよ、
小学校への入学がすんなりと決まりました。
しかし、地域によっては、まだまだ重障児が学校へ通うことを当たり前とは
捉えてもらえない哀しい現実があります。障害を持った子は当然養護学校へ
といった誤った認識もあります。就学相談では、我が子のことを一番理解している
親が悩んで悩んで決めた学校――養護にするか地域の学校にするか
または訪問にするか――を学校や先生方の都合で決意を覆され、
行政の都合で就学先を決められることも少なくありません。
入学した後も、これで良かったのだろうか?と子どもに変わって
判断したことに対して 自問自答している親も少なくないと思います。
障害を持った子の親は、入学通知が来るまでの数ヶ月間、
まったく不必要であるはずのエネルギーを使わなくてはならないのです。
地域の学校に行くか、養護学校に行くか、通学は厳しいので訪問教育にするか、
それは子供本人 もしくは子供のことを一番理解している親が選択すべきことであり、
たった数回の面接で教育委員会が判断すべきことではないことは
いうまでもありませんが、地域の学校に通っていて無理が生じれば
養護学校への転校もありえるでしょうし、子どもの年齢が上がれば
体力的にも精神的にも改善される子どももいるわけですから、
養護学校から地域の小学校への転校もあって当たり前ではないでしょうか?
その柔軟性があれば 就学時、または就学後の親の苦悩は今よりも
ずっと改善されると思えて仕方がありません。
「たった一人の為に(特学)は作れない」「(特学)がないから他の校区へ」
と言う信じがたい話を聞きました。兄弟と同じ学校へ行きたい!
地域の子どもたちと一緒に学校に行きたい!当り前の権利です。
その子が1日中原学級で過ごすことが負担になることが考えられるなど、
特学の必要性があるのであれば、当然学校が配慮すべきであり、
子どもを養護学校や他の校区の学校へ行かせるなどと、
なぜ子ども希望する学校へ行けないのか?子どもが犠牲になるような方向へ
仕向けられるのでしょう?何を主体に何を中心に教育を考えておられるのか、
首を傾げてしまいます。
特別支援教育が実施されますが、養護学校をもっと充実させれば
障害を持った子どもたちが養護学校へ行きやすくなるというような考えの教育は、
時代に逆行し行政が思い違いをしているとしか思えませんし、
本当に親の声を聞いて実施されようとしているのか疑問です。
同じ予算で特別な支援をするのであれば、親の声に耳を傾け、
子ども達の実態を直視すれば もっと他にやるべき支援はたくさん
あるのではないかと思います。
付き添いと学校訪問看護支援制度について
現在、私は朝9:30頃から16:00頃のお帰りの時間までを
子どもと共に学校で過ごしています。
朝は、他の家族のことやある程度の家事をこなさなくてはならず、
学校へ行く準備にも時間がかかり、どう頑張っても登校時間が
遅くなってしまいます。
まる1日学校にいるわけですから、下校してからは一般の主婦の家事に加え、
大貴の食事、お風呂等の介護も加わっていて すさまじい忙しさです。
後回しにできることは大貴が寝てからこなしますので 寝る時間は遅くなりますが、
夜中は何度も大貴の様子を伺うために目を覚ましますから
睡眠時間はご想像通りです。
付き添いを強いられた親が、体調を崩せば子どもは学校へは行けません!
私は、たまたま付き添いが可能でしたが、小さな兄弟がいたり
さまざまな事情で付き添いができない家族もいるはずです。
全国で医療的なケアを必要とする子ども達の通学が何かと話題になっている今、
そんな私たち家族の声を聞き、すぐに対策を練って下さった市の教育委員会には
大変感謝し、学校訪問看護支援制度の実施で
付き添いをしている私たち家族にとっては大きな一歩を踏み出すことができました。
週にわずか90分ではありますが、看護師さんに子どもを託した後、
付き添いをしている間できなかった 役場や銀行・郵便局の手続きや、
買い物も子供のことを気にせずに行くことができるようになりました。
子どもから解放され、自分の時間を作ることができた!というところにまでは
至っていませんが、それもいずれは可能かな?と期待をしています。
この制度については、同じ学校内に介助員のついた生徒がいる一方で、
親が丸1日付き添いをさせられた上、看護師さんの派遣費用を一部であるにせよ
負担している不公平さはどう考えてもおかしな話で、
週にわずか90分という時間ではあまりにも短かすぎるといった
納得のいかない点もあります。
親の付き添いをなくす為に 市が試行錯誤の上設立して下さったこの
学校訪問看護支援制度を、看護師さんの派遣時間の延長など、
さらに充実した制度、利用価値のある制度にする為に、
スタート時点から活用することができている私たち親がネットワークを作り、
改善を求めていかなくてはならないと考えています。
地域の学校に行ってよかったこと
約2年間、大貴が学校に通う毎日の様子を見ていて、私は理屈ではないことを
学びました。障害があるとかないとか関係がないこと、
大貴がどうやったらみんなと一緒に生活できるか?
大貴と一緒に何かを成し遂げようとする時、自分たちに何ができるか?
お友達に障害があればそれを自分たちがフォローすれば良いじゃないか!
お友達が困っていればそばにいる誰かが助けてあげれば良いじゃないか!
大貴を囲む子どもたちは そんな当たり前のことに
大人はどうして講釈を並べるんだろう?と教えてくれているような
気がしています。
差別や偏見を正す大人の方が、本当は差別をし偏見を持っているのだと
思わずにはいられません。
大貴の周りの子どもたちは、「障害者やお年寄りに優しくしよう!」という
口先だけの学習ではなく、たくさんの思いやりや優しさを
自然と身体で学んでくれています。教室の移動も運動場へ出るときも、
われ先にと大貴の世話をやき、気を配ってくれます。
大貴がよだれを垂らせば、躊躇することなくタオルでふき取ってくれます。
車椅子を押すのは、たぶん校長先生より上手です。
鼻のチューブからの栄養注入のことも、痰の吸引のことも先生方に説明が
できるくらい詳しくなりました。学校行事の絵を書かせれば、
絵の中に必ず大貴の車椅子が登場します。「私たちと一緒に中学校も行こうね!」
「僕たちと一緒にいたらもっと元気になるから!」子どもたちからこんな言葉も
出てきます。学校の勉強以外で、こんなことを学べるのは大ちゃんが
いてくれたからだと、お母さんたちから感謝をされました。
もちろん そんな風に子どもたちを導いて下さったのは、
クラスの先生のお力と愛情のおかげです。
地域の学校へ入学できたこと、先生やこの子ども達に出会えたことは、
大貴と私たち家族の一生の宝となりました。
子ども達が小さいうちから 障害の重い軽いに関係なく、
いろんな個性の子どもたちを知り関わっていれば、大人になって偏見や差別を
持つことはなくなるのではないでしょうか?それを導いていくのが
学校の先生方の務めだと思います。
少なくとも 今、大貴を囲む子ども達は、少なくとも差別や偏見を持たない
きっと素敵な大人に成長してくれると信じています。
全国すべての先生方へ、学校の主役は子どもたちです!!
子ども達の心を育てるのは先生方です。障害を持った子どもたちが
はみ出してしまわない教育、差別や偏見のない教育、
障害を持った子どもたちを振り分けるようなことのない教育を心から望みます。
お付き合いありがとうございましたm(__)m
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