To the last drop of her blood

『DARK  CANE』  6



 そんな土地で民家から離れた野菜畑の中でポツンと明かりが灯った。誰かが発光性の物体を持っているようで光が人の手を浮かべさせていた。その人物は指でボタンを押し得体の知れない物体を顔の横、耳に当てる。そして、彼女の独り言が始まった。


「This is 『J』. How many is it tonight?」


「Two? Ok. A place?」


「Is it a D spot? Do you understand what kind of person it is?」


「Oh... A girl is the person alone who does not get distinction of
one and man and woman」


「Ok. No, I do not mind alone」


「Good night!」


 女の独り言が終わった。折りたたみ式の『MC』を閉まった。『MC』は機械王国の『ブレッセ』で人気の簡易通信機械だ。『ブレッセ』ではこの略称に別の語を当てはめた『ミラクル・コンパクト』という名で販売されているが他の国ではあまり流通はしていない。


「さて行くか」


 女が振り返ると足元から少し離れた木陰から複数の獣の気配がした。女は唇に指をあてて口笛を吹いた。音を合図にオジスタが一斉に飛び掛ってきた。
(オジスタか・・・計3匹)
 女はミニスカートをギリギリまで上げ太ももに巻きつけてあるロープのようなものを取り外した。


「槐(エンジュ)、snake・curious!」


 女が太ももに巻きつけていたのは『鞭』だった。鞭は女の声で基の長さからぐんぐん伸びて、オジスタの首に巻き付いた。しかも、3匹一気に!オジスタが襲い掛かってきた勢いを利用して女は振り回した。


「ホームラン!」


 遠心力によってオジスタは遠くに振り飛ばされた。2・3秒遅れてから鈍い音と獣の悲鳴が聞こえた。


「あたしに逆らおってのが悪い!ちゃっちゃと食われちまいな」


 女はホテル街の方に向かった。彼らが言う“D地点”とはこのホテル街を示す。他には“A地点”は王宮を、“B地点”は農家の方を、“C地点”は商店を示している。ただ、細かい地点は教えられない。どこに隠れているかは分からないのが事実だ。女は『RATTRAP』実行部の部長である。仕事の内容は主に『殺し』。


「そろそろ外すか。この辺りだろ」


 暗闇で分からなかったが女は黒塗りのサングラスをしていた。そして今、サングラスを外す。赤紅色の瞳が目立つ。赤眼は禁忌の目と称される反面、歴史上でしか存在しない架空の話なのだ。実際にその目を見たものはおらず、鬼しか持たない目とされ『鬼眼』と呼ばれるようになった。女は目を閉じて気配を鎮めた。


「能力開放。Electric Catfish」


 女の頭にはいろんな映像が浮かんでいる。ホテルの壁など関係なく全てを“透かして”見える。人体の血管や筋肉など『鬼眼』に見えないものはない。女は自分の立ち位置を一回転し目を開けた。


「なるほど・・・あたしが動いていることに気付いているな。S27E14」


 女はサングラスをかけ直し、鞭をホテルの壁に打ちつけて蹴り飛んでいった。
 均一の低い建物が並んでいる貪地区と呼ばれるホテル街があった。ここは木賃屋という泊まるだけのホテルで金の持っていない商人や旅人が利用する。この貪地区の一つの屋根に一人の人影があった。女はその人影に近づいていく。そして人影の首に刃物を突き立てて布で口を塞いだ。




『DARK  CANE』  7

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