トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2005/06/28
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カテゴリ: 読書
■ネタバレなしでこの本の感想を書くのはほとんど不可能である。それでも、できるだけこの物語の周辺をウロウロ書いてみたい。まずは目次を抜き出してみる。

initiation love
●A面
揺れるまなざし
君は1000%
YES-NO
Lucky Chanceをもう一度
愛のメモリー
君だけに

●B面

DANCE
夏をあきらめて
心の色
ルビーの指輪
SHOW ME


■1枚のアルバムを想像してみる。それももちろん、CDではなく、LPレコード。A面の曲調を思い浮かべる。オメガトライブに、CCBに、松崎しげる。恋愛讃歌が並んでいる。今度はB面のタイトルを眺めてみる。太田裕美に、浜田省吾に、中村雅俊。どちらかというと、A面に比べ、暗い感じがしませんか。という具合に前半6章、後半6章をA・B面という形式で書き分けた小説スタイルをとって物語は進行していくわけだ。

■なんか騙されちゃうようだという、この小説の評判は薄々聞いていたので、結構細心の注意を払って読んでいった。でもね、段々その内容自体に引きこまれてしまい、読み進めるうちにスピードがついていってしまった。そしてラストでやってきたサプライズ!

■この「エッ!?」という驚きはなんかムズムズとした感じで、どこで読み間違えたんだろうって、あわててパラパラと心当たりのページを読み直しても、なかなか腑に落ちなかった。つくづくちゃんとした読み手じゃないんだなぁ、自分、って思ってしまうんですよね。東野圭吾の「どちらかが・・・」だって、結局「?」だったし、どうも、論理的に読み進めるという事に関しては苦手みたいだ。

■ラスト数行で世界がガクッと反転する、いわゆる騙される喜びみたいなものを味わう事自体は嫌いじゃない。歌野の「葉桜・・・」、東野の「秘密」、折原一の諸作など、いわゆる作者のミスリードにまんまと乗せられてしまった経験は少なくない。中でも一番印象的だったのは我孫子武丸の「殺戮に到る病」。これはいまだに彼のベストだ。

■で、我慢できずにネットで検索してみると、あるは、あるは、この小説の分析ブログが。そうか、そういうわけか、なるほど、あー。でるは、でるは、ため息と舌打ち。用意周到ですよ、この小説。読み手の心理を見事に利用した作りになってました。ネタバレに近い事、言ってしまえば、キーになったのはあるテレビドラマ。テレビドラマファンを自認しつつも、不覚にも気がつきませんでした。でもこのドラマにはあまり興味がなかったものでね。(負け惜しみか)

■特に80年代に青春のまっただ中にあったミステリーファンの人は感慨ひとしおかもね。この小説、読書会に最適です。私はここで気づいた。ここも引っかかった。この曲にはこういう意味があった。10人寄れば10通りの着眼点が。誰も死なない、誰も消えない、だけど、こんなに謎に包まれた小説もあり得るんですね。最後にこの物語、映像化は絶対禁物、よってドラマ化はあり得ません。





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Last updated  2005/06/28 09:59:18 PM
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読んでみたい!!  
サリィ斉藤  さん
とっても面白そうな本のご紹介をありがとうございます。先日「葉桜…」を読んで、気持ちよく騙された記憶も新しく、この作品も絶対に読んでみたいと思いました。

話がそれますが、「レコード」で聴いていた昔のアルバムをCDで聴くと、ちょっと違和感を感じることがあって…それが何なのかなぁと思っていたら、A面からB面へ「ひっくり返す」間がないんだ、っていうことに気づきました。(カセットに録っても、裏表ってありましたものね) (2005/06/29 06:15:36 PM)

読んで欲しい!!  
サリィ斉藤さん

あえてレコード紹介みたいな体裁をとったのも、実はこの小説のたくらみに荷担しているからなんですよ。一読で理解できたらすごいと思います、挑戦してみて下さい。
レコードの利点はたくさんありますが、とりあえずA面だけ聞いて寝よってことができなくなりましたね。それと、ライダーズの「大都会交響楽」がCDだとエンドレスで聞けません。 (2005/06/29 08:41:41 PM)

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ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
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Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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