トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2005/07/12
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カテゴリ: 音楽
■三大なんとか、というのが得意だ。三大プログレ・バンドといえば、クリムゾンとイエスとピンクフロイド。三大男優といえば、ダスティン・ホフマン、アル・パシーノ、ロバート・デ・ニーロ。三大脚本家といえば、山田太一、倉本聰、向田邦子。三大ギタリストといえば・・・って、きりがない。

■三代女性ミュージシャンといえば、80年代の終わりまではこの三人に決まっていた。中島みゆき、松任谷由実、そして矢野顕子。新譜が出るたび、発売日には必ず手に取った。特に80年代中頃にかけて、彼女らの新作を聴く喜びは、当時のシーンの先端の動向を知る喜びとも一致して、知的好奇心煽られまくり、そんな印象である。

gohanga01 ひとつだけ
02 ぼんぼんぼん
03 COLOURED WATER
04 在広東少年
05 HIGH TIME
06 DOGS AWAITING
07 TONG POO

09 げんこつやまのおにぎりさま
10 ごきげんわにさん
11 また会おね
12 てはつたえる→てつだえる
13 ごはんができたよ
14 YOU’RE THE ONE

■で、最終夜は矢野顕子編。みゆきとユーミン、二人が様々な形で好敵手の如く語られるのに対し、矢野顕子の存在は彼女たちの立ち位置とはまたちょっと違った次元に置かれるものだと思う。それはどこに由来するかというと、この人のキャリアなのではないか。中島みゆきが文学系少女からの転身、ユーミンが美術系学生からの転身というバックボーンが見え隠れするのと違って、矢野顕子は生まれながらの音楽少女という感じがする。興味対象が音楽という創作に向かい、プロとなった者と、もともとがプロだった者の違い。

■「全身音楽家」という言葉があるとすれば矢野顕子はまさにそれにピッタリあてはまる。生活の柄が音楽、考える仕草が音楽、喋る言葉使いが音楽、玉葱刻んでも音楽、きっと寝言もメロディアスなんだと思う。

■三人の新譜の中でいまだに追い続けているのは実は矢野顕子のものだけである。それはなぜかと考えるに、みゆきとユーミンのそれがいわゆる脚色した物語であって、その発想や物語性に出来不出来が存在するのに対し、矢野顕子のそれはノンフィクションであり、彼女が好きなこと、好きなものを追い続けること自体が、聴く側の喜びになってしまっているという点にあるのではないか。

■取り上げる彼女の一枚は「ごはんができたよ」。坂本美雨がおなかにいた頃にできた傑作である。幸せに順位なんてつけられないけれど、人が生きてきて、幸せを実感する時のひとつは、好きな人ができて、好きな人と一緒にいて、好きな人の子供ができた時、それは、まさにピークなのではないですか。M1は最良の人間讃歌だと思う。「離れている時でも、悲しい気分の時も、わたしの事思い出して、ねぇお願い」「ねぇお願い」が強い。この「ねぇお願い」があるのと無いのとではずいぶん名曲感が違う。あの声であのメロディで「ねぇお願い」、それが矢野顕子だ。

■彼女の創作の特徴のひとつは好きなものなら何でも食べてしまうところだ。本歌が童謡であれ、(旧)文部省唱歌であれ、他人のヒット曲であれ、全部彼女流に咀嚼して、矢野顕子オリジナルにしてしまう。このアルバムではM9がすごい。何しろバックのYMOが彼女に合わせるのに汗びっしょりになっちゃっているんだから。全盛期YMOを叱る事ができたのはあっこちゃんだけですよ、きっと。M11,M13もM1と並ぶ傑作。みゆきの文学性に、ユーミンのテクニックに、矢野顕子の自然体がすんなり追いついてしまっている。






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Last updated  2005/07/12 10:19:00 PM
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ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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