トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2005/11/14
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カテゴリ: 読書
sikoku

■佐藤雅彦さんは、CMドンタコス、バザールでござーる、ダンゴ三兄弟、ゲームソフト「IQ」などを手がけたクリエイター。慶応の教授でもある。でもって、この新作は、もともとはアニメーションとしてネットで配信されたもの(ねっとのおやつ)を文庫化したコミック集だ。読んで(見て)みると、ああ、あの人の描いた絵かってわかるような可愛らしいキャラがたくさん出てくる。

■彼は「一日一本」毎日、ここに収録された作品をネットで配信していたらしい。好きなものについて語るとか、今日何があったかを語るのは、それほど頭を使わない。しかし、クリエイターというものは、なにか面白いものを思いつき、さらにそれを作品に仕上げなければならない。毎日これだけの水準のものを作り続けられた才能に驚くばかりだ。

■タイトルの「四国はどこまで入れ換え可能か」は秀逸なタイトルである。日本地図をずっと眺めていての発想だと思う。まず北海道と四国を入れ換えてみる。どうにもバランスが悪い。次に九州と四国を入れ換えてみる。これはそんなに非バランスではない。「アリ」だと思う。最後に小型のオーストラリアを四国に入れ換えてしまう。これがあなた、ジャストフィット、実にピッタリなんだ。というわけで次の頁にはその部分にオーストラリアの地名も入ったリアルな日本地図が現れる。

■このようにまず視覚ありきの作品がおもしろい。頭の中に現れる「~だったりして」という想像や妄想がこの人の発想の原動力なのだと思う。その他にも縮小された生物たちの物語(ちび象や新米忍者)や、身の回りにある電化製品などが繰り広げるお喋りや人間観察が好きだ。(賞味期限切れの製品君たちのエピソードやリモコンvsテレビなど)

■大笑いする種の話ではないんだけど、ところどころ吹き出してしまう作品が愛おしい。シュールと言うよりはポップな寓話だ。時々えらく観念的でドキッとさせられるストーリーも登場する。これは立ち読みではもったいない。手元に置いて、時々見直したい。ひょっとしたらプレゼントに適しているかもしれない、なんて思う。

■毎晩ディスプレイの前で今日はどんな話なんだろうってワクワクしながらマウスをクリックして動く画面をニヤニヤしながら見ていた時の気持ちと、こうやって「本」という形で彼によって描き出された作品群をまとめて眺められる楽しみ方ってどのように異なるのだろう。そんな媒介(メディア)論みたいなことを考えてしまうのはこの作者の別著「プチ哲学」的でもあるなんて思っているんだが、どうなんだろう。





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Last updated  2005/11/14 09:24:07 PM コメント(2) | コメントを書く


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Comments

ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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