トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2006/01/22
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カテゴリ: 音楽
kurohune
02.何かが海をやってくる
03.タイムマシンにおねがい
04.黒船(嘉永6年6月2日)
05.黒船(嘉永6年6月3日)
06.黒船(嘉永6年6月4日)
07.よろしくどうぞ
08.どんたく
09.四季頌歌

11.颱風歌
12.さようなら

■一昨日から加藤和彦に夢中だ。フォークルの使命がアマチュアリズムに基づく体制への投石作業ということであったならば、サディスティック・ミカ・バンドとなった彼のスタンスはこちら側から向こう側に一歩も二歩も踏み出して、それこそ偉大なるプロフェッショナリズムという方向へシフトしてみせたと言っても良いと思う。

■おそらくジョン・レノンのプラスティック・オノ・バンドを真似てのネーミングであると思うが、それはただの冗談に過ぎず、本家の演奏集団たちを凌駕する彼が集めたミュージシャンたちの腕の良さったらない。(ま、ミカさんだけはヨーコさん同様素人ですけどね)

■キーボードに今井裕、ベースに小原礼、ドラムスに高橋幸宏、そしてギターに高中正義。ひとりずつその凄さを書いても1レビューくらいになってしまうのだが、とりわけこのアルバムにおけるユキヒロのドラミングと高中のフレージングが華麗。もちろん加藤和彦のカッティングもかっこいい。アルバムの半分近くがインストゥルメンタルなのだが、そこで表現される音世界が言葉を伴った作品以上に「黒船」というコンセプトを際立たせているように思う。

■M1はあたかも扉が開いてこれから姿を現す巨大なものが遠い海から顔を出したかのようなどっしりとした静かな静かなプロローグ。当時まだ20代だったユキヒロの声が懐かしい。M2はその動くものが次第にこちらに近づいてくる感じをワクワクドキドキしながら沿岸から眺めている風景。まるで心臓の音みたいな小原礼のベースがかっこいい。

■そしてこのアルバムのハイライトはA面の終わりに置かれた黒船3部作。1日目はやって来た黒船の輪郭をギターの音がまざまざと表現してくれるし、2日目ではそれを見た人々の驚きを、そして3日目はこの到来によって変化していく時代の前触れを劇的に表すことに成功していると見る。とにかくこの3曲での高中正義のプレイはピンクフロイドの「狂ったダイアモンド」におけるデイブ・ギルモアのプレイと同様、ロック史上、最高にいかした音であり、メロディではないかと思う。もちろんそれを支えるリズム隊の乗りとテクニックも尋常ではないけれど。

■日本のロックバンドの始まりをGS以降とするのならば、このミカバンドは黎明期に出現したグループのひとつに数えることができる。驚くべき事はそのバンドの2作目である今作がいまだに打ち破られることない完成された傑作になっていることである。トータルアルバムとしてのコンセプト、ひとりひとりのミュージシャンシップ、どれをとっても日本ロック史上最高のアルバムであると思う。リリースから30年、今でも色褪せない名作でいられる秘訣はあの時タイムマシンにお願いしていたことが幸いしていたのかもしれないね。

■多摩のかっちゃんと歳がそれを見て驚いたのと同じように当時のリスナーはこのアルバムの完成度に騒然となった。あのふたりが戦利品としてくすねてきたコルクがその後の彼らの運命を決めたのと同じように、このバンドの演奏後のステージで高中のピックを拾って、それを後生大事にしまって持っているギター少年がいるんだという話はあながちフィクションでもないだろう。

PS

■私にとって音楽的な嗜好の中で加藤和彦の占める部分はものすごく大きかったんだなってあらためて感じた。坂本龍一も、鈴木慶一も、矢野顕子も、細野晴臣も、高橋幸宏も、みんなこの人経由で繋がっていったんだ。

さて、この勢いで明日は「パパ・ヘミングウェイ」だったりして。(笑) でも”これから先のことは”私にもわからない。





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Last updated  2006/01/22 09:17:31 PM コメント(10) | コメントを書く
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ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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