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「孫子」はリズミカルに格好よく「勝利への道」
世間では「孫子の兵法」と呼ばれているぐらい、戦争や戦略については中国、いや世界の古典、名作と呼ばれている。
大所、高所からの戦略とともに、戦術については微に入り、細に入り、こまやかな考え方や対処方法が述べられている。
「戦いは国家の総力戦である。
戦いは国とともに国民の財産を使い、軍隊とともに大勢の国民を動員して、死活を賭けて行うものであるから、おいそれと始めるものではない。
敵からの挑発にも簡単に乗ってはいけない。」
と冷静沈着な思考を求める。
根本には平和・共存への願いと哲学が、全編を通じて流れている。
「王は戦いに勝ちたい一心で戦争を始めたがるが、戦いは勝つ為の道筋が見つかり、優位に運べる方法が確認できた時に始めるものだ。」
「平凡な王は、一般に戦い始めて
『いかにすれば勝てるか』
と悩むが、これこそ敵の思うツボであり、
後手を引いては、勝機を見出しにくい。
「勝機を何通りも、いろいろな状況を想定しながら様々なパターンを、沈黙の中、忍耐強く確認し、信頼すべき部下とも心より共有できた時に準備に取り掛かるのが善い。」
と計画・準備の大切さを繰り返し説く。
「王と将軍は欲望を同じにするのが善い。
また将軍と兵士一人一人とも欲望を同じくすると戦いに勝てる。」
欲望とは志であり、理念を意味すると想われる。
戦場で命をかけて戦うのは兵士である。兵士の多くは農民出身であり、故郷を離れ、武器を持たされる。
本音は「家族のもとへぶしに帰りたい」と願っているはずだ。
そこで戦う目的、理念を確立し、お互いに共有できてこそ、全体のモティベーションは上がる。
来るべき戦場に於ける環境や条件を観察し、冷静な客観主義をもとに戦略・戦術を立てるのが善く
「戦うか、平和の話し合いをするか」についての意思決定は
「 50 50 」の確率を踏まえ、和の道を歩くのが手堅い。
それでも決戦に踏み込み、勝利できたならば、兵士には賞を贈らなければいけない。
日本ではボーナスのことを賞与と呼ぶが、この語源は「孫子」の考え方に由来する。
「よく働いてくれた。」
「よく戦ってくれた。」
という嬉しいご褒美である。
もし賞を与えることなしに、次の戦いを進めようとするならば、勝利は絶望へと陥るであろうと想われる。
「国は国王のものではなく、国民全体のものである。」
とする謙虚な思想が「孫子」には脈々と流れている。
当方がどのように考えようと敵からの攻撃にさらされれば、どうしても戦いに突入しなければいけない。
「孫子」では「勝利を得る為の戦術」について、具体的にケースバイケースで解説している。
例えば敵がよく整備された大軍で、粛々とわが軍に迫ろうとしている場合は勝ち目は乏しく、たとえ勝っても消耗が激しいと見込まれ際は
「三十六計 逃げるに如かず」
の冷静で謙虚な考え方が披露される。
わが軍の大半は、闇の夜にこっそり逃げてしまい、戦力を温存するのが賢明である。
その際はガサガサとしっぽを巻いて逃げるのでは、敵から一方的に追われるのは目に見えているから、翌朝からは軍旗を高々と掲げ、大きな声で軍歌や太鼓をたたきながら
「いつでも決戦に臨むぞ」
との格好を、たとえ少人数でも示し続けなければいけない。
この逆も真実なりで、
敵だって「分が悪い」と判断すれば、主たる兵力は、いったんは逃げ隠れようと試みるはずで、その場合は敵方を好きなように逃がしてあげるのが肝要である。
「これがチャンス」と判断し、深追いすれば、敵の伏兵が待っている可能性が強い。特に山の斜面や川ふちへは追いかけるのは禁物で、
難所に於いて味方の軍はバラバラに切れてしまい、兵力を落として危険である。
互角にわたりあっている場合、間(スパイ)の役割が重要となる。
間は変装して敵陣に乗り込み
「王や将軍がどこにいるのか」
「兵力はどのくらい強く、まとまっているのか」
「兵士は十分に食べて、休養をとっているか」
等の具体的な情報をとらえ、
「わが軍との兵力比較」をふまえ、タイムリーに報告させるのが急務である。
例えば敵兵が川の水ばかりガブガブ飲んでいたり、
農民出身と想われる兵士たちが、故郷恋しさに夜更けてオイオイ泣いているのを発見すれば、
「敵軍の士気は落ちている」
とみなすことができる。
水鳥が集まっていれば
「死骸をついばんでいる」
と推測されるから、
「敵はもうじき兵を引くであろう」
とも読み取れる。
その際は、敵を追って戦うのは禁物で、疲れた敵兵は死力を尽くして反撃に出て、ここぞと勇敢さをあらわす確率が高い。
人間は欲の塊であり、生きてゆくためには必要不可欠ではあるが、物事を進めるに当たっては決してむさぼってはいけない。あくまでも冷静な客観性をもとに行動するのが望ましい。
この考え方は、老子の説く
「足るを知れば危うからず
留まるを知れば辱められず」の深い思想につながる。
「辱められず」とは、「恥ずかしい目に遭わない」という領域を超え、「敗北し、屍となって晒しものになる」という極限の状況まで示唆しているように想われる。
戦いは生死の境で行われる。
「勝ちを急いではいけない。」
「まして勝機がはっきりしない場合は、こちらから戦いを仕掛けてはいけない。」
孫子は考えを進めて
「たとえライバルの強国と互角に戦う自信を抱いても戦えば両国とも消耗することは目に見えており、周りの第三国が虎視眈々と両国の制覇を狙っている。」
と警告している。
そこで憎い敵とも場合によれば、手を取り合うことも生存を継続する為には重要である。そこで忍耐友好の思想「呉越同舟」が第十一「九地篇」に於いて述べられている。
それ呉人と越人とのあい悪(にく)むや
その舟を同じくして済りて(わたりて)風に遭うに当たりては、
その相救うや左右の手の如し。
「昨日の敵は今日の友」
と臨機応変に変身することが重要であるとしながら
敵陣へ恭しく貢物を持っていく態度を取りながら、刀を突如抜くような奇襲戦法も勝利のためには必要であると構想を広めている。
「はじめは処女のごとく扉を開ければ脱兎のごとし。」
と敵の意表を突き、奇策を弄(ろう)するのが、勝利戦略の基本である。
正攻法で堂々と戦うのは、戦力が互角の場合、勝利はむつかしい。
必勝の確率を高めるためには、情報収集の間(スパイ)を活用することが極めて大切である。
「孫子」は十三章から構成されるが、その内の一章「用間篇」として、間の意味、勝利への価値、使い方や条件をパターンに分けて力説している。
味方から選んだ間(スパイ)は大事に育成してから敵陣へと送り込む。
逆に敵陣から巧妙にスカウトし、敵陣にいながら情報を送らせるという高等戦術も考えられる。
当然に敵も同じように考え、間をわが軍の中へひそかに送り込んで来るはずである。そこで首尾よく敵方の間を捕まえた場合には、やみに切り殺したりせず、よく話し合って「我が方の間」として活用することができるならば、貴重な情報を適時に手に入れる可能性が生まれる。
ただしその敵方と当方にまたがる二枚舌スパイは気を付けなければいけない。
その二枚舌スパイが、味方の部下と同じ機密情報を語る場合はつるんでいて、はめられる恐れがある。罪を発見すれば、即死刑に処すべきである。
間は情報を伝え、操作しようとするスパイである。うまく使えば懐刀(ふところ刀)になり得る。
実戦では直属の部下である将軍たちが大事であるのに対し、
作戦を練る上ではお気に入りの参謀や間を使うのが、勝利への道を歩むことになる。
王は孤独である。
試行錯誤により作戦を立て、「勝つ」と信じられるタイミングを図る。「戦い勝つ道」とともに、「平和への道」を同じぐらいの比重で思索する。
こうした二刀流の戦略が、長い目で見れば、戦いでのダメージを避けつつ、国の繁栄、国民の幸せをもたらすことにつながる。
王は二刀流の思考を持ちつつ、手の内は誰にも語らずじっくり温め育てるのが肝要である。
「敵の攻めざるを守り、敵の守らざるを攻める。」との奇襲戦法をじっくり温めつつ、平和への対話を模索する。
王は人間力が求められる。
また人間力を育てるべきチャンスと苦労が待っている。
「孫子」は多角的かつ立体的に「戦争と平和」を思索しているように想われる。
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