不良中年日記 こんにちわ

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脳内出血


その日は月曜日。得意先を朝早く訪問、そこの社長にあいさつして、帰ろうとした時、突如として、呂律が回らなくなった。

 右手の握力がなくなり、携帯を何度も、落とした。会社に連絡しよとするが、呂律が回らない。

 「大変なことになってしまった。どうなるのだろう。脳梗塞か?」と思ったが、幸い、足は動いていたので近くの私鉄の駅まで歩き、電車に乗る。

 電車の中でも、頭の痛みとかは一切なかった。ただ、自分の体に大変なことが起きていることが、恐怖だった。「どうなるんだろう」。

 異変を感じて、すぐに救急車を呼ばなかったのは、心の中で何%かは、「大丈夫、すぐによくなる」と、大病にかかっている自分を認めたくなかったのだ。

 「とにかく、病院にいかないと。そうだ、金も必要だ」。

 私鉄の駅を下り、銀行のATMに入る。そのころには、右手の麻痺も進んでいて、なんども機械操作を間違えた。

 ようやく、金を下ろして、タクシーに乗る。

 呂律が回らない、口でなんとか自宅まで帰った。病院に直行しなかったのは、その日は月曜日で、美容院経営の妻が自宅にいることが分かっていたから。
「まず、妻に知らせなくては」の思いからだ。それと、怖かったのだ。一人でいるのが。

 十時ごろ、自宅に着く。妻がいた。そのときには、右腕がだらりとさがっていた。上着を自分で脱げなかった。

 タクシーで病院に。二人とも無言だった。

 「俺は、どうなるんや」、胸が重くつぶれそうだった。

タクシーを降りた。まだ、足は動いていたので、歩いて、緊急窓口にいく。

 CT検査で、左脳の脳内出血と判明した。

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