三人寄れば文殊の知恵

三人寄れば文殊の知恵

「坂の上の雲」を読んだ



昨年の年末に放映されていた「坂の上の雲」を見て、原作を
読む気になりました。

以前に第一巻だけ買って置いてあったのを手に取りました。

最初のうちは、子規と秋山兄弟の話ですから、
なかなか進まなかったのですが・・・

日露戦争になってからは、早い早い。

来客などがあっても

「これから旅順攻略なのに・・・」

「奉天会戦のいいところで・・・」

やっと読み終わりました。

全体としては面白かったのですが、残念なのは最後です。

「日本海海戦が終わると、いきなりポーツマス条約!」

歴史上では、事実そうなのですが、これまで詳細に日露戦争を
書かれている流れからしたら、もう少し丁寧に
書いて欲しかったですね。

満州では日本軍約20万とロシア軍30万が対峙しています。
日本は、もはや本土防衛の予備役部隊まで投入してがら空き状態!
しかも連戦の疲れが色濃く現われて、弾薬もありません。
一方のロシア軍は、日々シベリア鉄道で精鋭と物資弾薬が続々と
送られてきます。

日米戦争と比べるまでもない圧倒的な軍事力の差!

おお~日本軍あやうし!

何とか講和を・・・

焦りながらもそういうそぶりを示さないで交渉する
日本政府と小村全権

なけなしの軍をはたいて、交渉を有利にするために
樺太占領軍を派遣!

あくまでも講和を渋るロシア。
しかし、本国で火の手が上がります。

そのあたりを全部飛ばして

「日本海海戦が終わると、いきなりポーツマス条約!」

野球中継を一点差で勝っているところで7回ノーアウト満塁の
ピンチで、いきなり打ち切られたようですね!

司馬さんの目論見としては子規と秋山兄弟を描くのが
主なんでしょうが・・・

私の遠い昔の学校で習った記憶では、日露戦争は「日本勝ち・辛勝」
というイメージでした。

軍事関係の本を読んだ限りでも、

「日米戦争時の日米より、はるかに国力の差があった」

「弾薬が足りなくて追撃できなかった」

「戦争にべらぼうな予算をつぎ込み外債でようやくまかなった」

ぐらいが新しいところです。

かなり苦戦してようやく勝ったという感じですが・・・

「坂の上の雲」を読んでビックリ!

冷静に考えると国力差から日本負け。
ロシアの失点が積み重なって、それでも日本負け寸前。
そこで、ロシアの国内不安から、何とか講和。

そもそも、

「ロシアは日本が開戦するとは思っていなかった。」

その証拠に、無防備で停泊中の旅順艦隊を日本駆逐艦隊が
雷撃しています。

それほど、日露には国力差がありました。
日米開戦時の日本の比ではありません。

それでも、日本はロシアを朝鮮から追い払うことに
成功しています。

1、戦争計画があった。

華々しく勝利してすぐに講和という前提がありました。

日中戦争を戦いながら、戦争計画なしに日米戦争へ入りこんだ
先の戦争とは全く違います。

2、外交がうまくいっていた。

日英同盟という、当時の超大国相手に、日本が有利な同盟を
結べたのは天佑でした。

現在の日本の立場も米国・ロシア・中国の三大国の間に挟まれている
ということから考えると、英国が米国に変っただけで、
当時と変らないと思えます。

ただ、これだけでは全く勝てません。

これに加えて、ロシアの国内事情が悪化しており、
さらに運がよかった。

かの有名な旅順攻防戦は日本では「坂の上の雲」の影響で

「乃木将軍の戦が下手だった」

ために、苦戦し、かの有名な203高地を落して終了の
ようなイメージがありますが、現実には・・・

「旅順の司令官が防戦を放棄した」

「え~」

乃木将軍と水師営で会見した旅順要塞の司令官ステッセルは
後に軍法会議で要塞を放棄したという罪で死刑を求刑されます。

現実にはロシアが旅順で徹底抗戦していたら・・・

乃木軍は旅順に貼り付け、来る奉天会戦に負けて「日本負け」

それ以外にも

黄海海戦で運命の一発がなかったら・・・

旅順艦隊が日本海を荒らしまわって、
日本は大陸への補給を絶たれ「日本負け」

クロポトキンが黒溝台会戦・奉天会戦で引かなかったら、
日本の前線が崩れて「日本負け」

バルチック艦隊がネボガトフ少将率いる第3戦艦隊を待たずして
もう少し早く日本近海にやってきて、ウラジオに数隻の軍艦が
逃げ込んでいたら・・・
日本は大陸への補給を絶たれ「日本負け」

日本海海戦後に満州で日本と対峙するロシア陸軍が
大規模会戦を行なっていたら兵力・装備・弾薬で劣る
ために大敗北で「日本負け」

ありとあらゆる場面で、失敗したら「日本負け」の状況で
綱渡り・神がかりの勝利?を積み重ねた結果の講和でした。

何とか勝ちに持ち込んだとはいえ、問題点は山積み。

それが、恐ろしいことに、日米戦争でも繰り返されます。

最終更新日 2010年03月25日

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