三人寄れば文殊の知恵

三人寄れば文殊の知恵

仙人の翼



そんなに昔の話ではありません。
明治時代の話です。

その人は、断食を100日以上?経験したといわれ、
ほとんど食事を取らないそうです。

取材記者が高尾山を訪れた時、
40歳を過ぎていたにも関わらず、20代半ば位に見えたそうです。
山野を飛ぶように駆けるそうで、あまりの速さに取材記者は
全くついて行けなかったそうです。

そんな話は作り話だと思っていました。

私は縁あってある山の中腹にあるお寺で
断食をすることになりました。

断食中は動かないでいると、筋肉が衰えて歩くことさえ
困難になってしまいます。
ですから、無理してでも動かなければなりません。

しかし、体は鉛を仕込んだように重く、だるく、
座っていることすら億劫になります。

その状況下で裏山へ登りました。
まったての急な登りが続きますので、
5メートル・10メートル進んでは休み、
階段では一段ごとに休みました。

そのうち、山の気を取り入れながら、
呼吸と足の踏み出しを合わせると、
ゆっくりながら、休まないでも
上がれるようになりました。

そんな生活が10日ほど続いたでしょうか?

不意に断食を打ち切り、
少しだけ食料を口に入れました。

すると、体が翼でも生えたように軽いのです。
昨日まで地獄のように苦しんでいたまったての
登り坂も駆け上がるように登ることができ、
息が乱れることもありません。
不思議な感覚でした。

しかも食事は、成人男性の一食分の半分を
三回に分けて食べているようなものでした。
栄養学的には全く足りません。
しかし、その状態で体は普通以上に動いたのです。

冒頭の仙人さんはこの技を身につけていたに
違いありません。

ところが、翼には使用期限がありました。

食事の量が増えて行くにつれ、
段々からだが重くなったのです。

一週間後にはその感覚は全く無くなりました。

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