妖精のいたずら

妖精のいたずら

つれづれ草・・・第六章・・・


           「動揺」

 何事もなく、普段どうりの仕事が続いていた。
 変わったのはあいつが自分の会社のように毎日来ては誰かの机を分捕ってなぜか仕事をしている事だ。 
あれだけ(用のある時には呼ぶから)って言ってあるのに今じゃ当たり前のようにここにいる。  まわりも、気にせず溶け込んでいる。
あの、社長でさえ嬉しそうに毎日話しこんでニコニコしてる。 いったいどうなってるんだ!
(気にする事もないのに変だぞお前!)一人でブツブツ言いながら机に向かっている。
「あのー」目の前にあいつが来ていた。  
あせった!コーヒーをこぼしてしまう。「わっ!」
「きゃ!  ごめんなさい 」
何なんだ俺とした事が何をあせっているんだ!
「大変!大事な書類が・・・・・すぐ拭きますから」ばたばたとあせりながら「テイッシュ・テイッシュ」と一人で騒ぎ出している。
「いいよ。 たいした事ないから気にするな」側にあったタオルで拭き始める。
「でも、それって例の企画提案書では・・?」
「ああ、気に入らないから直そうとしていたやつだ」
「そうですか・・・ほんとに平気ですか?」
「何故かいまいち納得できないから、今のうちに訂正しておきたくて考えていたところだから」
「それってどういうことですか?」
「うん、俺なりになんかインパクトが薄いと感じているんでね。」そういいながら机の上を整理し始めた。
「それじゃ、これ見ていただけませんか?」  「うん?」
「私なりに読んで、考えてみた事を書き出してみました。  お役に立てればと思って持ってきました。」  
差し出されたレポートを読んであせった。(なんだこれ? 俺の考えがわかるのかこいつは?)そこには、俺の欲しかった答えが綺麗に整理されて書き込まれてた。
「いつ考えたんだこれ?」
「はい、昨日お借りしたレポートを読んでて、思いついたんです」
嬉しそうな顔をしながら俺を見つめている。 
確かに俺が欲しかった答えがそこにあった。 それも、俺が出したいと思っている答えが・・・・。
(やられた!)ここまではっきり書き込まれると、何にもいえん。
ただバタバタとしているお嬢さんだとばかり思っていたのに。
「う~~ん  参った!。」頭をかきながら社長の席に向かう。
「おまえ、ついてこいや」 「はい」少し不安そうな顔をしながら相変わらずバタバタとついてくる。
「社長! ちょっと見てください。」手渡されたレポートをいぶかしげな顔をしながら目を通す。
「おい、これじゃ・・・!」驚く社長の目が嬉しそうに変わった。
「いいね!  インパクトあるよ」
「でしょ! 彼女の提案ですよ」振り返りながら俺はまた、小夜子を思い出さずにはいられなかった。
あいつの言った言葉・・・『彼女使えるわよ』・・・と言う言葉を。
(もしかしたらこいつ・・・・・。)ニコニコと笑顔を振りまきながら社長とおしゃべりしている彼女は、ただの社長令嬢だけではなさそうだ。
悔しさと嬉しさがミックスされた俺は彼女を見つめていた。
確か名前は(小野幸子)だったっけ。
サっチャンか・・・・・
単なるフロックなのか?それとも、もともとのセンスなのか?
これからが楽しくなりそうな予感がしてきた。
そう、久しぶりの{パートナー登場}となるか、明日からが楽しみになってきた。








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