伊東准教授のまとめです
人間の耳は厳しい自然環境の中で危険から
身を守れるよう大変に微細な音でも気がつき、
また巨大な爆音がしても耳が壊れないよう
精密に設計されています。
音の圧力にして一万倍というような違いが
実は割りと頻繁にある。
僕の本業は、音を大きく聴かせるとき
音圧に拠らず巧妙に音楽を作るような仕事です。
ブラスバンドの合奏練習でメロディが
聴こえないなんてとき「ラッパもうちょっと強く吹いて」なんて言う。
この流儀はアマチュア向けで
高度に洗練されたオペラの現場では決してやってはいけない。
歌手の喉に負担を掛けて
美しい声を損ねるなら伴奏者として失格です。
ではどうするかというと別の知恵がある
都会の大騒音の中でも小声で
自分の悪口を言っていたらパッと判りますよね?
私達の耳(~脳)は物理的な音量ではなく
別の認知のシステムで音の主観的大小を決定している。
20代一杯現場の楽隊仕事でこうした事に多数触れ、
体を壊し時間が出来たので関連の仕事を纏め
博士号を取ったら大学に呼ばれました
以前のこのツイッターでも物理的音圧と
認知的音響感という話は 幾度かしていますが
(ご興味の方は例えば「指揮者の仕事術」
(光文社新書)をご覧下さい)、
現在の原発事故問題で言えば
「物理的放射能強度Gy」や「Bq」と
「人体の生理的ダメージSv」が
これと良く似ています。
Bqではなく健康が問題
本来の仕事は、音の空間的な歪みや
人間の脳がそれをどう聴くか?
という特質を正確に踏まえてバッハとか
ヴァーグナーあるいは自分達の世代の音楽を
創り演奏し録音録画等するというもので、
非線形音響測定や言語脳認知など
科学の道具を使って芸術音楽を作っており
共通の基礎で原発も一定理解できます
放射線科の中川さんが医学の観点から、
物理学科の早野さんが物質科学の観点から
「餅屋」で専門の内容を提供されますので、
そちらをメインでと申しておりますが、
僕は物理的な発音行為とそれを知覚が
どう認識し結果としてどう人間として
芸術的な経験を持つか臨床医学等の道具を併用して
音楽を作る仕事で
「最終的な人間への影響」
(普段であれば、まあ「音楽による感動」ですが、
今ここでは放射性物質による健康への影響の有無、
或いは甚大さの評価)を、
物理の面と生理の面、
双方を繋いで考えるものと規定して
出来る努力をしてみます。
先ほど申した僕の仕事は岩波書店の
月刊誌「科学」に連載しているので
「物理の響き♪こころのひびき♯♭」
(月刊「科学」岩波書店、連載第一期を終了し第二期準備中)を
ご覧下さい。欧州で仕事する際、
音楽は思う以上にキリスト教に根ざした
「調和の学」で、理科に根を持つ
確固とした根がある事で、
教会ともオペラハウスとも大事な仕事が
進む面があることも記しておきます
いま報道を見るに際して重要と思うことは、
身近になってきた放射線量について
Bqという単位は一秒あたりの崩壊の数でしかなく、
どんな物質がどれくらいのインパクトで
影響しているか以前のラフな値という事。
音で言えば周波数と書いたとおり
[/s]疫学指標のSv等参照して健康への影響の自覚が大事
「何ベクレルの測定値」「政府基準の何倍」
「通常運転値の何倍」等の報道に接し、
ふーんそういうものかと受け身の徒手で聞き流すと、
後で不安になります。
算数の計算問題でも楽器の稽古でも
自分で手を動かさなければ身につきません。
このツイートはそういう手を動かし
安全を確かめる一助にと思います。