専業トレーダー DaTsU

人の意見と自分の意見


をよく人に話す人がいます。「こうやって儲けた」と言う話も良く聞きますが
ここでは相場の見通しについて人に聞くな、と言う話です。人の話を鵜呑みに
するとろくなことはなく、損をすればその話をした人を恨み、儲かれば自分の
相場観が正しかったからだ、と妙に納得してしまうことも多いのです。相場を
よく見る上でいろいろ人に聞くことはいいことなのですが、しっかりとした、
自分の了見も持たずに人の話ばかり聞いていると訳がわからなくなったり、ど
うしていいかわからなくなるものです。人の意見はあくまで「参考」にして、
しっかりと自分の見通しを持ちたいものです。

 何程心安き人にも、売り買い進め申すまじきなり。若し、了見違うときは、
恨みを得るなり。すべて、相場高下の論すまじきなり。この道を心得る人は、
我が了見を立てず、人の了見にて商いする人はなきはずなり。少々にても図に
当たる時は、募り、了見を立てたがるものなり。これ第一つつしむべきところ
なり。もちろん、たしかなる高下を見定め、打ち明け人に語り進むる時は、人
もその気になる故、ニ三俵方も利を得る人は、一俵ならで利運ならざるものな
り。たしかなるところを見据え候らわば、人々にかかわらずして、売り買い致
すべく候。もっとも世の中に随い、諸国作合い、豊作凶作、上方相場、九州様
子、聞き合わせ随分宜しきなり。存念は決して人に語るべからず、是大極意な
り。常々専ら慎むべし。

 どんなに気の置けない人でも売り買いを進めてはいけません。もし、見込み
が外れたときは恨みを買います。そもそも相場の高い、安いというのは議論す
るものではないのです。相場というものを良くわかっている人で自分の考えも
なく、人の考えだけで売買をする人はいないはずです。少しでも自分の考えが
当たったときはここぞとばかりに自分の考えを人に言いたがるものなのです。
これは第一に慎むべきことです。もちろん、しっかりと相場の方向性を見極め
た上で人に話すときはその人も聞く耳を持ち、同じような行動を取るので、2、
3俵を取るような人は1俵ぐらいは取ることができるのでしょう。逆に自分が
しっかりと見極めたのであれば他人の意見に左右されずに売買をするのです。
もっとも人の意見を鵜呑みにするのではなく、世間の動向やいろいろな地方の
出来具合、豊作や凶作、上方の相場や九州の様子などいろいろと研究するのは
とてもいいことです。自分の相場観を決して人に語ってはいけません、これは
とても大切な極意です。常日頃から心して慎むべきことなのです。

 これは筆者のように相場の状況や方向性を自分なりに研究し、それをお客様
に伝える立ち場としては非常耳の痛いことです。ただ、ここで言っているのは
いい加減な言動に惑わされてはいけないということなのです。しっかりとした
事実に基づいた動向などは非常に参考になることが多く、逆に大いに参考にす
べきことも沢山あるのです。根も葉もない噂に振り回されて、人の後ばかりを
追って、人と同じことをやっていればいいということではなく、逆に人の後ば
かり追っていくとどうしても遅れ勝ちになり、人が「○○を買ったよ」と言う
のを聞けば自分の慌てて買って、実はもう「○○を買った」といった人は既に
売ってしまって、しっかり儲けた後だった、ということもよくある話です。先
週のこの欄で「ポジショントーク」の話をしましたが、それこそ、売りたいが
ために、「買い推奨」をしたりする輩も多いのが事実なのです。相場の動きは
天然自然の理が働いて、必ず動くべくして動くものなので、他人の言動にまど
わされず、しっかりと見極めていけば自ずと動きも見えてくる、少なくとも大
きな間違いはしないものなのです。また、「100万円儲けた」とか「200万円が
1億になった」などと聞くとその人がとても相場がうまくて何か「秘伝」のよ
うなものを持っているあるいはものすごい情報を持っていると思いがちですが、
そういうことではなく、自分にあったスタイルでただ、安いところを買って、
高いところを売る、という行為を繰り返したに過ぎないのではないかと思いま
す。その人の猿真似をするのではなく、その人の考え方を参考に自分でしっか
りと相場を見極めながら売り買いをすることが大切なのだと思います。筆者も
自分の考えを述べていますが、自分の考えを押し付けるのではなく、一つの考
え方として相場を見極める上で参考にしていただければと思っています。


 一年中、商い手の内にある時は利運遠し。折々仕舞い候て、休み見合せ申す
べきこと第一なり。

 一年中売買し常にポジションを持っているようなときはあまり儲からないも
のです。時々ポジションを整理して休むときがとても大事なのです。

 年がら年中売買していないと気がすまない人も多いのでしょうが、いつもあ
たふたと動いているような人はなかなか儲からないものです。ディーラーなど
のように毎日仕事として売買している人もいるのでしょうが、ここでいう常に
売買している人というのは何の了見もなく売買をしていないと落ち着かない人
をいいます。毎日売買したいのであれば、それはそれでいいと思うのですが日
計りディーリングの中でも常にある程度自分で相場感をもって取引すべきなの
です。何も考えずただ、「高そうだから買う」相場が安いと「もっと安くなり
そうだから売る」とあちこち相場の動きにあわせて動いてないと気がすまない
というような人もいて、そういった人はまず儲からないと考えていいでしょう。
自分のリズムで売買していてもどうしても引っかかってしまった(回転が聞か
なくなった)ときもあり、そのときにはしっかりとポジションを整理して(持
って置くべきものとすぐに処分してしまうものとに分けて)少し休んで見るこ
とが大切です。そして自分のリズムや相場観をもう一度見直しながら相場に参
加していくのがいいのではないかと思います。「動かなければ損」とばかりに
ばたばた動くことこそ「損」になってしまうのです。


 米急に引き上がる節、思い入れに売付くべしと売り気に赴くべし。又、急に
引き下がる時、買い入れ申すべしと買い気になるべし。但し、上げ留め下げ留
め知れざる故、売り放ち買い放ちも少し危し。しかしここ売るべし、買うべし
の心持ちなき時は上げ詰めのところにて買うものなり、又下げ詰めのところに
て売るものなり。右の心持ち必ず伝なり。

 相場が急に上昇したときなどは売らなければ、と思って売る気を持ち、また、
急に相場が下がったときはそろそろ買わなければ、と買い気を持つことは大切
です。ただ、上昇しきったところか、下げ止まったところかを考えていないの
で、売っては見たものの、買っては見たものの、ということになってしまいと
ても危ないのです。また、しっかりと「このあたりで買っておけば」「このあ
たりで売っておけば」という見通しを持っていないと天井で買い、大底で売っ
てしまうものなのです。この「買い気を持つ、売り気を持つ」ということはと
ても大切なのです。

 相場の天井底をいつも考えていることも大切なのですが、常に相場も見てい
なくて相場が急上昇したときに「どこで売ろうか」と考え、相場が急落したと
きも「どこで買おうか」と考えることは大切です。特に相場が急落したときな
どはおろおろするばかりで「どこで買おうか」と考える以前に「どうしよう、
どこまで下がるんだろう」と慌てふためいてしまうのです。そういった時に常
に相場の天底を考えていれば底値圏にあるときに急落してくれば「そろそろ買
い場かな」と見極められるのです。逆に皆がわいわい騒いで相場が急騰してい
るようなときも冷静に売り場を探すことを考えれば大きな間違いをすることは
少ないのではないかと思います。


 何となくすっきりとしない相場が続いていますが、こういったときこそ、し
っかりと自分なりの投資尺度を持って、人に、相場に惑わされることなく、「
安いところを買って、高いところを売る」ことを心がけたいものです。

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