専業トレーダー DaTsU

アイアンマン



巨大軍事企業の社長であり、天才発明家でもあるスタークが、アフガニスタン
でテロ集団に拉致されてしまう。密かに着脱式パワードスーツを開発して脱出
した彼は、さらに高性能なスーツを作り、悪との戦いに挑んでいく。

監督:ジョン・ファブロー
出演:ロバート・ダウニー・ジュニア、テレンス・ハワード、ジェフ・ブリ
ッジス、グウィネス・パルトロウ 他


ハンドメイドの鋼鉄スーツを身に纏い、敵を粉砕し、空を飛ぶヒーロー「アイアンマン」。この手作り感覚が堪らない。モデルは航空機デザインも手掛けた伝説的実業家、ハワード・ヒューズだとか。リアルなキャラ設定だ。昆虫からパワーを貰い受けたわけでもなく、執事や専門のメカニックにも頼らず、実業家兼発明家という経験とスキルを生かして、兵器製造で財を成してきた自らの過去を清算し、地球平和のために立ち上がる男。このモチベーションにも強く共感できる。DCコミックと共にアメコミ人気を支えてきたマーベル・コミックの中でも、「アイアンマン」が格別の存在なのはそのあたりに原因がありそうだ。

原作が売り出されたのはベトナム戦争最中の1960年代。さすがに今回の映画版では、舞台をベトナムからアフガニスタンに移し、主人公のトニー・スタークが最新鋭兵器をプレゼンするために訪れたアフガンでテロリストに拉致され、そこから鋼鉄スーツを着て生還する、という設定に替えられている。巧いアレンジだ。現在、世界中で行われている戦争の仕掛け人が、実は国家やテロリストではなく武器提供者であるという生臭いメッセージが、エンターテインメントのフィルターを通すと噛み砕きやすいことが、よく分かる。

しかし、『アイアンマン』が全米興収で大成功を収めた理由は、魅力的なメカニックと、アイアンマンことトニー・スタークをロバート・ダウニーJR.が演じたこと、この2点に尽きる。トニーが拉致されたテロリストのアジトで、板金工のようにコツコツと作り上げる鋼鉄スーツ第1号、マークIの、さながら潜水服のような無骨なルック、さらに、帰還後に完成させる戦闘機並みの飛行能力を兼ね備えたマークIIの一気に洗練されたライン、そして、遂に誕生するマークIIIの煌びやかなボディは、例えば段階を追う毎に美しさを増す変身ドラマのよう。特に、トニーが自分の体にマークIIIのパーツを一つ一つフィットさせて行く出陣シーンは、一見の価値ありである。

ヒーローぶらず、刹那的でなく、飄々として優しい、人間味溢れるトニー役に、ロバート・ダウニーJR.がピッタリだ。『チャーリー』(’92年・チャップリンの自伝映画)だろうが『ゾディアック』(’07年・実録連続殺人もの)だろうが、題材に関係なく個性で魅せてきたダウニーにこそ、役者不在に陥りがちなこの種のイベントムービーが相応しいから。

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