3つのたから

3つのたから

創大・出産。



「ん~・・・予定日まで待ってると、これは5,000g越えるねっ。誘発した方

がいいな。うん、出そう。」

「・・・出す?」「5,000g?」

やむなく、誘発分娩する事になった。そうの誕生日は、生まれる前から『8月11

日』と決まった。


38週目。8/10。夕方、入院。薄暗い、なんの飾り気もない陣痛室に連れて行

かれる。 もう1人、私と同じく誘発分娩のために入院してきたママと一緒だ。

2人して処置室で、ラミナリヤという海草で出来た管を入れられ(子宮口を広げる

もの)陣痛室で一晩過ごす事に・・・。

緊張と不安、期待と管を入れた痛みとで眠れない。もう1人のママは、かすかに

陣痛が来だしているらしい。腰をすりすりしている。何か話を・・・と思っても

お互いにこれから待ち受けている『出産』という未知の世界の事で頭がいっぱいで

「頑張ろうね!」とかそんな事ばかり言ってたような・・・。

真夜中。陣痛がなかなか来ない私は、寝たり、起きたりを繰り返していた。

向かいのベットでは、陣痛が調子よく付きだしたようだ。

「ふぅ~っふぅ~っ」と息が苦しそう。助産士さんも付き添い腰をさすってあげて

いる。

私ももう少しで、そうなるのか・・・ドキドキ・・・。

(8月11日)
明け方近く、かすかに痛みがやってきた。「いよいよかっ!?」時計とにらめっこ

開始!   しかし、明るくなる頃にその痛みは消えてしまった。


相変わらず、向かいでは容赦なく陣痛が襲ってきているらしい。うめき声も本当に

辛そうだ。その声を聞きながら、私はしっかり朝食を食べた。

「ん~・・・ラミナリヤ抜いて、バルーン入れようかな?!」

ナント、なかなか開かない子宮口に風船を入れて、広げるという。まな板の上の鯉

とは良く言ったもので、私はされるがままに風船を入れられたのである。

そんな中、向かいのママが分娩室へ。いよいよ生まれるのかぁ・・・いいなぁ。

でも、相当痛そうだ・・・。こ、恐い・・・。

「今、生まれたよ~!大きい子だったよ!3,400gくらいあったみたい」

「ほぉ~ッ大きいねぇ・・・頑張ったねぇ~!良かった良かった」

この後、自分もその子を越す大きなベビーが出てくる事も知らずに、のんきな母

である。

陣痛が付きだした。ほぉ~~これが、陣痛か・・・。と思う間もなく、ドンドン・

ズンズン・ジャカジャカとやって来た。しかし、まだ全開にはならないらしい。

先生は「破水させるから」といった。その瞬間「ぷちっ」「じょじょじょじょ~ぉ

~ん・・・」とものすごい量の生暖かい羊水が出てきた。

でも、ここは陣痛室のベットの上。こんな所で破水させていいのか?

ここからは一気!でも、7cmの子宮口。いきみたいっ!!とてつもなくいきみた

いっ! ううう~~~吐き気がっ!吐くよ~吐くよ~!でも、誰も来てくれない。

私の出産時刻と助産師サン達の交代時間がぶつかってる~!!

痛いのに腰もさすってくれない。恐いのに、誰も励ましてくれない。

吐きたいのに誰も来てくれない。生まれそうなのに・・・。

ナースコール押しまくり、やっと捕まえた!!「吐きたい・・・いきみた

い・・・」「あ~っごめんねぇ~!これに吐いててね」

おいっ!行くのかよっ!?ふざけんなよ~!こんな私を1人にするのかぁ~???

とは言えないので「お願い~行かないでぇ・・・」と腕を掴みましたよ・・・。

「今ねぇ・・・忙しいのよ~」

「もうダメ。生まれる。だから、行かないで。」

「どれどれ?まだ7cmだよ。でも、ホント息みたくなってる?じゃぁ、いきんで

いいよ。よしっ!他の仕事、あきらめた。もう、生もう。」

嬉し~~~~~っ!息んでいいのね?ホントにもう生んでいいのね?

あ、その前にパパッチに連絡して。あ~っ生む前にパパッチの顔が見たかったな

ぁ・・・。あ、きたきたきたきたぁ~ッ!息むよ~~!!ん~~~~~~~~っ!

アレ?そう言えば、ここは陣痛室だよ。分娩室は?行かないの?あ、また陣痛

が・・・ ん~~~~っ!!

と、イキミながら私はベットごと分娩室に連れて行かれたのであった。

分娩室に入る直前、ベットが運ばれている時にパパッチがギリギリセーフで間に合

ったのである。頑張ろう!と気合が入る。

「もう少し待っててね・・・」 「頑張れよ!」 「う・・・ん」

さぁ~いよいよだっ!!

分娩台に上がり、後は陣痛の波に合わせて息むのみっ!!

でも、問題発生! この分娩台は、どこを掴んで息めばいいのぉ~?!

あっあった!なんと、頭の上にバーみたいに付いてると思ってたのに、これは

腰の脇あたりに、電車のつり革みたいのが付いてるだけ。こんなの引っ張って息め

ないよ~!!どうしようぉ・・・あ~きたきたきたきたぁ~~~~!!

私は、そのつり革をどうしても引っ張って息む事ができず、なんとつり革を押すよ

うな形で頑張ったんですぅ・・・。だから、ただ持っているだけ状態。

なんで、あんなつり革だったんだろう?あんなの無理だよぉ・・・。

そんな事している間に、べビちゃんは頭が見えてきました!

「もう少しだよっ!」「はいっ!!」「んんんんんんんん~っ!!」

「ほんぎゃぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んっ!」

・・・生まれた・・・。(頭、真っ白。放心状態)

「はいっ!大きいよぉ~!」

「そうちゃん・・・」

「名前決まってるの?!そうチャンって言うんだ?」

「3,976gあるよ~っ!久々、ヒットだぁ!笑」

人生初めての出産。妊娠中は、いろんなことがあってちゃんと産めるのかな?

元気に生まれてきてくれるかな?なんて、いっぱい考えた。

出産も恐かったし、痛いのやだし、本当に不安だった。

でも、昔の人は良く言ったものですね。

『案ずるより産むが易し』

まさにその通りでした。

創が生まれた日。パパッチは、病院に向かう車の中から空を見上げたそうです。

その時、空には『トンボ』が飛んでいたと・・・。

今でも、8月にトンボを見ると必ず「創が生まれた日は・・・」と話します。

私達の『1つ目のたから』が誕生しました。



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