TRICK PARTY

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distance night 5



「2回も呼ぶなって。聞こえてる」

「ナスト」

「3回目……。なかなかに飽きてくるな」

「ナスト!」

「4回目ともなると景品のプレゼントでも……」

とすん。

あたしはナストに飛びついていた。

「おわっ!?」

いきなりのことに、ナストがうろたえる。

「ナスト……!会いたかった!」

「やめんか。オレら百年ぶりに再会した恋人か!」

「似たようなもんじゃん?」

「今日はずいぶんと大胆だな、まなみん」

「久しぶりの再会だもん!」

「まあとりあえず離れろ。ラブラブタイムはまた後でいくらでもやってやるから!後ろからの視線がイタイ!」

あたしははっとしてナストから離れ、後ろを見た。腕を組んだルシャがこっちをいつもよりさらに冷めた目で見ている。

「まーかんどーてきな再会だことでー」

すんごい棒読み……

「オレは無実。勝手に抱きつかれただけで~す」

「てかあんたもう役目終わりでしょ?もうどっか行ってよ」

「おーおーずいぶんな言い分だな、まなみん。らしくもない」

「ま、言われなくても出ていく」

そう言うと、あった時と同じように慇懃に頭を下げ

「それではお二人だけの濃密かつ濃厚な時間を十分お楽しみくださいませ」

と言った。

「な……っ!」

「おわー、すんげー切り返しだな~」

「感心してる場合かっ!」

「顔が血のように真っ赤だぞ?」

「例え悪っ!」

「いやあ、でも赤面って顔に血が上るから起きるんだろ?きわめて合理的」

「まあそういえばそうか……。じゃなくて!ルシャ!」

あたしは叫んで振り返った。が……

「ばーか、とっくに出て行ったよ」

「もう!毎回毎回あいつは……!」

「あいつ、ねえ……。またもらしくない……。さもご立腹のご様子なのである」

「だってホントむかつくのよ、あいつ……」

「ルシャマルク・メルステント・カイ・レルナントだろ?」

あたしは自分の目が見開かれるのがわかった。

「知ってるの?てかよくそんな長ぁい名前覚えられるわね」

「ま、いろいろと変わったヤツだからな~、あいつは」

「なんとなくわかるけど……」

「伝説もうわさも多いやつなんだよ」

「伝説……?」

「それはまたおいおいヒマな時にな」

「今ってものすごいヒマじゃないの?」

「まあまあ。とりあえずよ、立ってんのもなんだしそこ座れよ」

ナストは入り口のそばのいすを指差して言った。

あたしは素直にそこに腰掛ける。

「で、どうよ?こっちの世界」

「しょーじきつまんないかなあ……。なんかどこも閑散としてるし……」

「お前らの世界がやかましいだけだろ?」

「それを言っちゃあ身も蓋もあったもんじゃないんだけどね。なんでこんなに関わりあいがないの?」

「オレたちは生まれつきそうだからな」

ははっとナストが笑って言った。

「理由になってない……」

「生まれつき、に理由があるわけなかろ?それはお前になんで目と鼻と口とその他諸々があるのかっていう疑問と同じだ」

「ふ~ん、まあいいわ。て、そんことじゃないのよ!何なの?“処分”って!」

「んあ?ああそうか、そういやそうだったな。まあ読んで、じゃない言って字のごとくだな。いつかオレも処分されるってこった」

「ちょっ!そんな淡々と言わないでよ!何よ、ナストがこ……殺されちゃうってこと?」

「たぶんいつかな」

「なんで?なんでまた??」

「おいおい、まず落ち着け、もちつけ、うそつけ、人間正直に生きようね」

「冗談言ってる場合?」

「誰だって何だって終わりがくるだろ?お前だっていつか死ぬし、この世界だっていつ終わるかもわかったもんじゃない。オレだって同じだ。“いつかは”死ぬ」

「いつか……?」

「そっ。お前はいつか来る死を恐れて今からビクビクしてんのか?疲れるぞ、そんなの」

「だってだって……!処分ってことはその時期が近くなったってことでしょ?」

「他のヤツらよりは、な。でもいつ事故で死ぬかもわからんだろ?結局みーんな確率は同じ」

「でもでも!その確実性が……」

「おいおい。そんな悪く考えんなって、な?こんな暗い話聞くためにお前をここに連れてきたんじゃねえんだし。もーちょっと明るい話をしよおよー」

ナストが口をとがらせて、ねだるように言う。

「あ、ごめん……」

「ま、謝るこっちゃないさ。それだけオレも心配されてるってことだもんな、うんうん」

なぜか満足げにうなずく。

「さて、そんじゃあお前の世界の話でも聞かせてもらおうかな~」

「え?なんで??あたしがこっちの話を聞かせてもらうんじゃないの?」

「なぬ?オレもそっちの世界の話を聞きたいぞ?」

「よ~しそれじゃあ……」

あたしはこぶしを握って言う。

「じゃ~んけん、ぽん!」

2本指をたてて、チョキ!

ナストは……

「……?何やってんだ?お前」

「……ありゃ?」

「……?」

「……」

「……」

「……もしかしてじゃんけん知らない?」

「……知らん」

ぶあしッ!

「痛ったーっ!なになになに?オレが何をした!?なぜにぶたれねばならん!?」

「知らないなら言ってよ!!今の3点リーダ間すっごい恥ずかしかったじゃない!まるであたしがアホみたい!」

「だからってたたかなくたっていいじゃないかぁーっ!不意打ちだったから痛かったぞ!」

「もう!じゃんけんっていうのはこっちの世界のゲームなの!まさか知らないなんて」

「へえ~、おもしろそうだな。詳しく教えてくれよ」


かくしてあたしのじゃんけん講座が始まったのであった。



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