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TSUTAYAプレミアムの1カ月無料期間キャンペーンに応募しました。この時間のある機会にたくさんレンタルができると考えました。子どもと例のアニメを見ています。自分も初見のシリーズだったりして改めて奥深さを感じています。子どもは,当然のようにほしいプラモデルが何かあれこれ逡巡する日々です。
2020.03.08
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念願の単著が完成し,送られてきました。エイプリルフールではありません。生活環境の変化,指導教員の退職,自分の立場の変化など,もろもろの節目に刊行できたので感慨深いです。次のステップへつなげるための一区切りになりました。amazonでもそのうち購入可能になると思います。医療システムと情報化: 情報技術の受容過程に着目して 中村 努
2019.04.01
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大学院の講義が始まりました。学部生も一人加えて,交代で輪読をすることになりました。課題図書は「都市のフードデザート問題」です。前著の続編にあたりますが,現代の少子高齢化問題の象徴といってもいい社会問題をGISを用いて見えるかしています。公共サービスの整備のあり方についても考える機会となります。統計処理の手法については少々難しいところがありますが,一度チャレンジしておくことは無駄ではないと思っています。
2017.04.22
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ソーシャル・キャピタル入門 孤立から絆へ【電子書籍】[ 稲葉陽二 ]価格:702円 (2016/8/4時点)東日本大震災のさい、人々は互いに譲り合い、整然と行動した。自分を犠牲にしてでも弱い者を救った。これは、決して見返りを期待しての行動ではなく、絆や他者への信頼、思いやりの表れであった。このような絆や互酬性の規範をソーシャル・キャピタル(社会関係資本)という。ふだんは目に見えない、しかし、教育や健康等に大切な役割を果たしている社会関係資本をどう育み、活かすのか。第一人者が理論と実践を紹介する。最近地理学でもじょじょに導入が試みられている概念ソーシャル・キャピタル.その入門書を読んでみました.人々の絆といいかえてもいいと思いますが,これが強いほど,健康にもいい影響を与えるのではというその可能性が検証されてきています.本書で関係がありそうなのは,第5章の健康と福祉の向上における,「地縁的ネットワーク・NPO・行政の協働」です.須坂市における三つのケースでは,自治体や商工会といった地縁的団体と目的別に設立されているNPOが共同して各課題に取り組み,これを行政が後押しする形をとり,地縁的ネットワークとNPOのネットワーク,行政のネットワークの三者が協働している.保健補導員のケースでは高甫村という山裾の村で住民が孤軍奮闘している保健婦に自主的に協力を申し出たのが始まりであった.地縁的な活動ではあるが保険という目的が明確であり,今でいうNPO活動でもあった.さらに住民の協力申し入れを行政が受けて,行政がバックアップする形で保健補導員制度が確立した.地縁団体・NPO・行政の協働といえるだろう.助け合い起しでも,従来中心となって活動していた社会福祉協議会がコーディネーターとなって,地縁団体とNPOの両方をメンバーとする助け合い推進会議を作っている.また,行政は職員を社会福祉協議会へ派遣している.「望む会」も母体は「へそのお」というNPOであるが,地縁団体も行政を含めた大きなネットワークを形成している.本章で取り上げた三つのケースは,いずれもNPO的な目的が明確な活動と地縁団体の活動が融合し,それを行政が側面から支援している形態をとっている.結局のところ社会関係資本を住民間のネットワークとして考えると,それがうまく機能するには,核となるキーパーソンも大切だが,キーパーソンの意思を実践に移すことのできる地域のネットワークの存在がより重要である.-------------------------------こういうネットワークの強度は,統計学的手法による量的把握が難しいところだと思います.実証的な質的調査が強みを発揮するように思います.うまくいくかいかないかではなくて,地域にとってのそれぞれの最適解とそこに至るプロセスの地域的多様性を明らかにできればいいなと思っています.
2016.08.04
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ご当地アイドルRe:ReKOCHIの定期ライブがあったので見に行ってきました。1日目はTSUTAYA先月はたまたま初めてお目にかかって、帰り際にハイタッチをさせてもらって子どもがすっかり気に入ってしまいました。センターのRINちゃんがよくアイコンタクトをしてくれてとても照れていました。周りはこんな感じ。追っかけのコアファンが陣取っています。帰り際にみんなから名刺をもらいました。先月会ったときのことも覚えててもらったような気がします。二日目はフジグラン新曲初お披露目だったそうですが、雰囲気もかなり違ってよかったです。前日のこともよく覚えてくれていて、名前を聞かれたりしてお話もしました。照れすぎて答えられていませんでしたが。世代を超えたファンサービスは今どきのアイドルには欠かせないと思いました。
2016.07.24
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医療政策を問いなおす [ 島崎謙治 ]【内容情報】(「BOOK」データベースより)地域医療構想の策定や在宅医療・地域包括ケアの推進など医療制度改革が矢継ぎ早に進められている。そして2018年には、次期医療計画や医療費適正化計画の策定、改正国民健康保険法の施行、診療報酬と介護報酬の同時改定など、一連の改革が結節する。そうしたなかで、国民皆保険を堅持するために、今、我々は何をなすべきなのか。医療政策の理論と実務に通暁した著者は、国民皆保険の構造の考察や人口構造の変容の分析を行い、わが国の医療政策のあるべき方向性と道筋を明快に展望する。医療問題に関心をもつ人すべてにとって必読の1冊。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 問題の所在/第1章 日本の国民皆保険の構造と意義/第2章 歴史から得られる教訓と示唆/第3章 近未来の人口構造の変容/第4章 人口構造の変容が医療制度に及ぼす影響/第5章 医療政策の理念・課題・手法/第6章 医療提供体制をめぐる課題と展望/第7章 医療保険制度をめぐる政策選択/終章 結論と課題【著者情報】(「BOOK」データベースより)島崎謙治(シマザキケンジ)1954年生まれ。政策研究大学院大学教授。東京大学教養学部卒業後、厚生省(当時)入省。千葉大学法経学部助教授、厚生労働省保険局保険課長、国立社会保障・人口問題研究所副所長、東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター客員教授等を経て、2007年から現職。2013年から医療政策コースディレクター。博士(商学)。社会保障審議会専門委員。独立行政法人長野県立病院機構理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)かなり骨太の議論でした。過去の医療政策の経緯から医療政策のあり方を展望しています。特に、地域格差についての目くばせもしており、参考になりました。------------------人の生活は「地域」と切り離して存立しえない以上、まちづくりを含め地域における連携体制の構築も必要になる。その具体的なあり方は地域によって異なる。地域の人口、医療・介護資源の分布、地勢、住民意識等が異なるからである。たとえば、都市部では関係者がネットワークを組むタイプの形態がなじむのに対し、過疎地では基幹的な病院・施設が中心となって地域包括ケアを推進するほうが適している場合が多い。ちなみに、ここでいう地域とは市町村という行政管轄エリアよりも狭い。実際、同一市町村の中でネットワーク型の地域と基幹病院中心型の地域が併存することは珍しくない。象徴的なのは尾道市である。筆者が知る限り、全国的に見て、尾道モデル(在宅主治医と病院主治医が中心となり他職種とともに「退院時ケア・カンファレンス」等を行うことにより連携体制を構築するモデル)はネットワーク型、御調モデル(公立みつぎ総合病院を中核として地域包括ケアを実施するモデル)は基幹病院中心型モデルの最高峰に位置する。そして、尾道市と御調町は2005年3月に市町村合併したが、その後も2つのモデルは市内で併存している。その方が地域の実情に合っているからである。その意味では、地域包括ケアや在宅医療の最適解は地域の数だけ存在するといっても過言ではない。------------------非常に地理的な視点で興味深い事例でした。地域の数だけ地域包括ケアが存在するということで、その多様性の実態とその要因を分析することが課題となります。なかには地域の実情に合っているものと、ミスマッチを起こしているものもあると予想されるので、需要と供給のバランスがどうなっているのかを検証して、その多様性を評価し、あり方を展望できればよいと思います。
2016.07.15
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稼ぐまちが地方を変える [ 木下斉 ]価格:799円(税込、送料無料)【内容情報】(「BOOK」データベースより)人口減少社会でも、経営者視点でまちを見直せば地方は再生する!補助金頼りで利益を生まないスローガンだけの「地方創生」はもう終わった。小さくても確実に稼ぐ「まち会社」をつくり、民間から地域を変えよう!まちおこし業界の風雲児が、心構えから具体的な事業のつくり方、回し方まで、これからの時代を生き抜く「10の鉄則」として初公開。自らまちを変えようとする仲間に向け、想いと知恵のすべてを吐露します。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 学生社長、ハゲる/第1章 まちから「利益」を生み出そう!(アメリカで学んだ「自立型」まちづくり/ふたたび“実践”の世界へ/「まち会社」の顧客は誰か)/第2章 まちづくりを成功させる「10の鉄則」(小さく始めよ/補助金を当てにするな/「一蓮托生」のパートナーを見つけよう/「全員の合意」は必要ない/「先回り営業」で確実に回収/「利益率」にとことんこだわれ/「稼ぎ」を流出させるな/「撤退ライン」は最初に決めておけ/最初から専従者を雇うな/「お金」のルールは厳格に)/第3章 自立した「民」がまちを変える(金食いインフラを「稼ぐインフラ」に/行政と民間は緊張感ある連携を/民間主導でまちを変えていく)【著者情報】(「BOOK」データベースより)木下斉(キノシタヒトシ)1982年東京都生まれ。まちビジネス投資家/事業家。一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事(2009~)、一般社団法人公民連携事業機構理事(2013~)。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、経営学修士。高校在学中から早稲田商店会の活動に参加し、2000年株式会社商店街ネットワーク設立、社長に就任。その後経営学の理論を合理的な地域再生ビジネスの方法論に落とし込み、2008年より熊本城東マネジメント株式会社を立ち上げる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)まちづくりに実際に携わってきた著者だからこその経営の視点があります。印象的だったのは,活性化の定義についてです。活性化とは「事業を通じて経済を動かし,まちに新たな利益を生み出すこと」に尽きるのです。利益を生まない事業に過大な期待と投資をするなということだと思います。しかし,実際には降りてきた補助金を使い切るために公益事業に投資する案件は多いと思います。それでも運営コストを賄える継続性のある仕組みであれば,まだいいのかもしれません。特に,教育や医療など効率化はしづらいが,住民の生活のためには赤字構造でも実施しなければならない事業もあろうかと思います。そこは,地方だけの問題としてとらえるのではなく,複数の市町村や都道府県まで巻き込んだより広域の視点でとらえる必要があると思います。すでに自分たちで何ともできない部分をどうするかについて合意形成を図っていくことの重要性と難しさを感じるこの頃です。
2016.04.15
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日本の医療格差は9倍 [ 上昌広 ]価格:885円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)医者の数は圧倒的な「西高東低」だ。日本の中に生まれた新しい「格差」は、戊辰戦争と明治政府、日本陸軍、そして田中角栄によって歴史的に作られてきたー。なぜ関東に医者は少ないのか?なぜ医学部は西日本に多いのか?なぜ金持ちの子どもしか医者になれないのか?素朴な疑問から、現代社会の「格差」を見出した東京大学医科学研究所特任教授が、日本医療と教育へ提言する。医学部受験生も必読!【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 野球と医師と西日本(大学の「売り」は何か?/とりあえず「医学部」へ ほか)/第2章 日本「医学部」近現代史(近代化と医学部/京都と徳島は医師が多い ほか)/第3章 大学を見れば「医師不足」がわかる(北海道地方ー広大な土地と医師不足/関東地方ー医学部進学者は四国の3分の1 ほか)/第4章 「医師不足」時代の医師たちへ(国立がんセンターで学んだこと/医者になるなら地方を目指せ ほか)【著者情報】(「BOOK」データベースより)上昌広(カミマサヒロ)東京大学医科学研究所特任教授。医学博士。1968年兵庫県生まれ。1993年東京大学医学部医学科卒業、1999年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員を経て、2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンス、メディカルネットワークを研究する。医療関係者など約5万人が講読するメールマガジン「MRIC」編集長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)医者の数の西高東低の実態とその要因を近現代史から読み解いています。人口当たりの医師数が少ない県は,人口当たりの医学部数が少なくなっています。逆もまたしかりです。人口当たりの医師数は,人口当たりの医学部数,つまり地元での医師養成数と相関しています。この状況は,医学部の卒業生が出身大学の近くで就職することを意味しています。医学部偏在の要因は以下の3つです。1.明治から戦前にかけて,政府は西日本を中心に医学部を作りました。官立の医学部は13(旧七帝大と旧官立六医科大学)あり,うち8つが西日本に存在しました。明治政府を仕切ったのが西国雄藩であったことと関係します。2.高度成長期の1973年,第二次田中内閣のもとで,一県一医大構想が閣議決定され,1979年にかけて全国に16の医学部が設定されました。この時,新たに国立医学部が中国・四国・九州には8医学部が設置され,西日本への偏在に拍車をかけました。人口でみると,1975年の千葉県は475万人に対して,四国は400万人。したがって,人口の多い関東圏では人口あたりの医学部数が小さくなることになります。3.東日本,特に関東地方における急速な人口増加が挙げられます。1975年から2013年の間に,日本の人口は約14%増えています。一番人口が増えたのは,関東地方で,同時期の増加率は約30%です。これに対して,近畿は9%,九州は8%,四国は―3%。この結果,関東での医師養成数の不足は深刻化していくことになります。わが国の特殊性は,戊辰戦争という内戦に勝った西国雄藩を中心とした官軍が,幕府側の拠点であった江戸に拠点を置いたことです。教育や医療への投資に関しては,東京へ集中的に投資され,東京周辺の地域は放置され,現在のような教育・医療の過疎地となってしまいました。このような問題は,日本全体だけでなく各県レベルでも認められ,深刻な医師の偏在を招いています。--------------------------------医師不足の地域格差に焦点を当てて,地誌的に過去の歴史から読み解いているところがおもしろかったです。データも豊富にあり,説得力がありました。こうした基本的な史実を踏まえないと,医療の本質は理解できないと感じました。
2016.04.13
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【送料無料】 塩狩峠 / 三浦綾子 【単行本】価格:1,728円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)結納のため札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた…。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う長編小説。【著者情報】(「BOOK」データベースより)三浦綾子(ミウラアヤコ)1922-1999。旭川生れ。17歳で小学校教員となったが、敗戦後に退職。間もなく肺結核と脊椎カリエスを併発して13年間の闘病生活。病床でキリスト教に目覚め、1952(昭和27)年受洗。’64年、朝日新聞の一千万円懸賞小説に『氷点』が入選、以後、旭川を拠点に作家活動。’98(平成10)年、旭川に三浦綾子記念文学館が開館)あるサイトでおススメする小説にあがっていたので読んでみました。あとがきを読んでみるとわかりましたが,実話でした。主人公がキリスト教に目覚めながら一筋に病弱の友人の妹を支え続けます。しかし,その後の結末を知らずに読むとかなり衝撃でした。誰も真似できないような死に方をしているからこそ感動を呼ぶのだと思いました。天変地異がいつ起こるとも限りません。そのときに究極の選択を迫られたら,どう瞬時に決断を下せるか。人生の価値観を見直させられた本でした。
2016.03.05
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】飯舘村は負けない [ 千葉悦子 ]価格:864円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)村に放射能が降った。浜の避難者を懸命に受け入れた人々への全村避難指示、不安と混乱。家を牛を、豊かな土を、丹精込めた村を捨てるのか。世界中が注視するなか、役場の奮闘、若者の発信、女たちのがんばり、諦めない人々の長いたたかいが始まる。寄り添ってきた研究者が様々な村民の声を拾い、未来のために報告する。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 村に放射能が降った/第2章 村はどう対処したか/第3章 村づくりのこれまで/第4章 いのちと健康を守る/第5章 なりわいを守りたい/第6章 一人ひとりの復興へ【著者情報】(「BOOK」データベースより)千葉悦子(チバエツコ)1952年北海道生まれ。北海道大学大学院教育学研究科博士課程修了、博士(教育学)。専攻は社会教育学、農村女性・家族論。現在、福島大学行政政策学類教授。福島県男女共生センター館長松野光伸(マツノテルノブ)1945年埼玉県生まれ。法政大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得。専攻は行政学、地方自治論。現在、福島大学行政政策学類特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)執筆時点で震災から1年。飯舘村の復興のために,村は何をどう考え対処したか,村民はどのように考えて行動してきたか,畜産農家,村内外に発信する若者,地域づくりを担ってきた男性,女性,その家族,村職員など,その時その時の彼ら個々人の思いや行動を辿り直すことを目的としています。行政や住民の帰還に対する思いと行動がつづられています。国も除染を前提とした帰還に向けた作業を続けていますが,帰還が開始された場合に人口が元通りなるのか。同じ場所に同じように人は住まうのか。震災から5年を迎えた今では,避難先で亡くなっている方もいるのでは想像します。放射能の健康への長期的影響が見えにくい中で,仮置き場にある除染の除去土壌の行方も気になります。巡検では実際に飯舘村を訪問して話を伺いましたが,現場では毎日放射能と向き合って生きる姿を垣間見ました。限られた人生を他人に売り渡さざるを得ない状況が続くことに心を痛めました。
2016.02.11
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】ヘルプマン!(1(介護保険制度編)) [ くさか里樹 ]価格:575円(税込、送料込)発売日: 2004年05月著者/編集: くさか里樹出版社: 講談社サイズ: コミックISBNコード: 9784063520705普段漫画はめったに読まないけれど,自身のテーマに関連する介護を扱ったヘルプマンを読み始めました。お世話になっている方からおススメされました。高知県日高村の出身の漫画家です。介護保険制度の変遷を踏まえて,書かれているために制度による現場への影響について知るには勉強になるとのこと。早速1巻から読みました。高校在学中に介護職に携わる主人公が素人ながら,介護に奮闘する様子が描かれています。ストーリーは明快ですらすらと読めます。理想と現実のはざまで揺れる思いから介護の実態を勉強したいと思います。
2016.01.27
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ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来 岩波新書 / 広井良典 【新書】価格:886円(税込、送料別)富の偏在、環境・資源の限界など、なおいっそう深刻化する課題に、「成長」は解答たりうるか。近代科学とも通底する人間観・生命観にまで遡りつつ、人類史的なスケールで資本主義の歩みと現在を吟味。定常化時代に求められる新たな価値とともに、資本主義・社会主義・エコロジーが交差する先に現れる社会像を、鮮明に描く。目次 : 人類史における拡大・成長と定常化―ポスト資本主義をめぐる座標軸/ 第1部 資本主義の進化(資本主義の意味/ 科学と資本主義/ 電脳資本主義と超(スーパー)資本主義vsポスト資本主義)/ 第2部 科学・情報・生命(社会的関係性/ 自然の内発性)/ 第3部 緑の福祉国家/持続可能な福祉社会(資本主義の現在/ 資本主義の社会化またはソーシャルな資本主義/ コミュニティ経済)/ 地球倫理の可能性―ポスト資本主義における科学と価値第三の波の次に来る波について論じています。一気に切り替わるのではなくて,併存する状況が続くような気もします。関心をもったのは社会的関係性をめぐる諸科学の展開です。「個人」あるいは個体というものを単に独立した存在として捉えず,他社との相互作用を含む社会的な関係性の中でとらえたり,あるいは他者との協調行動や共感,利他的行動といったものに焦点を当てるような研究が,近年,文・理を含むさまざまな学問分野で百花繚乱のように生成し発展している。それはたとえば,1.健康や病気に影響を及ぼす社会的要因に関する「社会疫学」の分野2.ソーシャル・ブレイン(社会脳)やいわゆるミラーニューロン(他者の痛みを自己の痛みとして認識するような気候にかかわるニューロン等の研究)3.人と人との信頼やコミュニティないし関係性の質に関するいわゆるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)論4.人間の利他的行動や協調行動に関する進化生物学的研究5.経済学と心理学ないし脳研究が結び付いたいわゆる行動経済学ないし神経経済学の一部6.経済発展との関係を含む,人間の幸福感やその規定要因に関する幸福研究もともと近代科学(特に経済学)は「独立した個人」が利潤の極大化を追求することを基本にしたモデルでしたが,近縁は個人ないし個体間の関係性や協調行動,利他性に注目するようになっています。医療や健康をめぐるテーマについても,社会的な要素や側面が重要になるという研究がみられています。うつなどの精神疾患を含め,慢性疾患等への疾病構造の変化の中で,特定病因論の実では解決が困難な病気がむしろ一般的になっているのが背景にあります。こうした状況においては,病は神体内部の要因のみならず,ストレスなどの心理的要因,労働時間やコミュニティとのかかわりなど社会的要因,貧困・格差など経済的要因,自然とのかかわりを含む環境的要因など,無数ともいえる要因が複数に絡み合った帰結としての心身の状態として生じるという視点が極めて重要になってくる。そして実際,近年発展している社会疫学と呼ばれる分野は,健康の社会的決定要因という基本コンセプトに象徴されるように,まさにそうした病気や健康を巡る社会的な要因に注目し,対応や政策のあり方を含む研究や分析を行っている。---------------------------上記の現象が,ある特定の地域に現れるとしたら,その規定要因は何かを追求することが求められます。貧富の格差は勝ち組と負け組を分けますが,負け組だけが不健康のリスクを高めるだけでなく,勝ち組も常にストレスにさらされるなかで,かえって病気のリスクが高まるという傾向が指摘されています。こうした問題にいかに対処しうるかに関心があります。
2016.01.09
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】日本の医療が危ない [ 川淵孝一 ]価格:777円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)日本の医療のどこがそんなにいけないのか。何が足りないのか。次期医療改革を目前に控え、現在の医療制度を技術・サービス・経営・国際競争力などさまざまな角度から見直す必要がある。本書は、医療経済学という観点から医療制度改革に携わってきた著者が、わが国の医療問題について海外・国内での事例を豊富に挙げながら、その長所・短所を比較検討し、「よい医療」とは何か、医者と患者の間にあるギャップは何か、現状をどう改善したらよいのか、などについて具体的な提案を試みる。【目次】(「BOOK」データベースより)第1部 今、なぜ「医療改革」が急務なのか(「機会の平等」さえもない日本の医療システム/「結果の平等」については絶望的!/海外に流出しはじめた日本人患者/行き場のない現状をどう打破するか)/第2部 「よい」医療はこうして実現できる(自分の身は自分で守る/ITを駆使して患者本位の医療を/努力する者が報われる医療システムに)【著者情報】(「BOOK」データベースより)川渕孝一(カワブチコウイチ)1959年富山県生まれ。一橋大学商学部卒業。シカゴ大学経営大学院修士課程修了(MBA取得)。民間病院・企業勤務の後、旧厚生省国立医療・病院管理研究所、日本福祉大学経済学部教授、日医総研主席研究員、経済産業研究所ファカルティフェローなどを経て、東京医科歯科大学大学院教授。スタンフォード大学客員研究員。専門は、医療経済学、医療政策、医療経営(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)医療を主に経済的観点から読み解いています。特に新しい医療技術の話が多かったように思います。地理学と関連するのは,スケールの話です。---------------------------市町村合併,三位一体の改革,保険者の再編・統合が進む中で,都道府県単位で,保健・医療・福祉を考える時代が早晩やってくる。事実,国は医療計画制度を見直して,医療提供体制の質の向上を図る都道府県に対し,補助金改革を実施するという方針を明らかにした。より具体的には,これまでの病床数の規制などハード面だけではなく,地域特性を踏まえた疾患や医療機能(小児医療・小児救急,在宅医療など)ごとに定めた指標による具体的な数値目標を設定して,質の向上を目指すという。都道府県が目標を実現するため,これまでの補助金のように使途を細かく決めず,地方の裁量・自主性を発揮できるように「統合補助金」や交付金化を含めて検討することにしたのだ。そうなると,保険料も都道府県ごとに異なることになる。政管健保を例に,わが国の医療費に年齢と所得構成を加味した場合の65歳未満の保険料率を計算したところ,最大(北海道)と最小(長野)で1.2ポイントもの差が生じる。なお,この中で,若者の多い東京の粗保険料率は3.3%と最も低くなるが,所得が高い人が多いため,年齢・所得調整を行うと長野より若干高くなる。果たして,都道府県単位の医療費適正化が功を奏するかどうか動向を注視する必要がある。---------------------------この後地域医療再生基金が交付されるわけですが,一律で各都道府県ごとに使途自由の補助金が投入されます。2段階に分かれており,第2段階では震災後ということもあって,被災三県には,基金の上乗せがありました。どんなにお金があっても,地域特性をしっかり踏まえた医療再生のビジョンがなければ,需要に見合った提供体制には使われないことになります。しかし,そうした使い道の実態や事後評価は今のところみられません。最後に医療の産業化への提言を行っています。医療を市場化すると,アメリカのように逆選択が起こることが知られているため,どの程度の例外を認めるべきかという議論になるのだろうと思います。治療を伴わない福祉分野では市場化が進んでいます。ただ,財源と価格設定は公的部門が担っていることから,準市場のメカニズムが働いているといえます。地域の逆選択が都道府県レベルでも,市町村レベルでも起こっています。採算が取れない過疎地域を社協が担当する構図です。福祉・介護アクセスの機会をどう担保するのか,その管轄範囲はどのスケールが望ましいのかが論点になります。
2015.12.12
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部員のアドバイザーを務めている関係で誘われていってきました。定期演奏会は3年ぶりにホールで開催されるとのことでした。邦楽をきちんと生で聞くのは初めてでどのような姿勢で聞いたらいいかも含めてこちらが緊張してしまいました。でも,少ない部員ながら一生懸命に演奏していて日頃の努力を感じました。お師匠さんも含めた全員での演奏は聞きごたえがありました。第一部の終わりに花束贈呈。また,緩急をつけた曲目もあり,意外に激しいものなんだと知りました。なかなか普段触れる機会がなかったですが,歴史や伝統を感じた時間でした。ご家族やOBなどが観衆に多かったようで,お客さんは全体的に少なめでしたが,より多くの人に邦楽に触れてほしいと感じました。
2015.12.08
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【はじめての方限定!一冊無料クーポンもれなくプレゼント】社会学を学ぶ【電子書籍】[ 内田隆三 ]価格:702円【内容情報】(「BOOK」データベースより)社会学とはどういう学問か。また、社会学を学ぶ理由は何か。これらはそのまま、「社会」とは何かという問いにつながる。本書では、著者自身の経験に即しながら、パーソンズの行為理論、マルクスの物象化論、レヴィ=ストロースらの構造主義、フーコーの言説分析、ルーマン/ボードリヤールのシステム論、柳田国男の習俗の思考、ベンヤミンのパサージュ論などを通して、これらの問いに答えてゆく。社会学の本質に迫る、渾身の入門書。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 社会学を学ぶ人のために/第1章 社会学以前/第2章 社会学入門-行為理論を学ぶ/第3章 マルクス-物象化論の射程/第4章 構造主義-あるいは主体の不安/第5章 ミシェル・フーコー-系譜学のまなざし/第6章 現代社会の理論-システム論と極端現象/第7章 習俗の思考-柳田国男の挑戦/第8章 ヴァルター・ベンヤミン-あるいは社会記述の方法をめぐって【著者情報】(「BOOK」データベースより)内田隆三(ウチダリュウゾウ)1949年大阪生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得。東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は、社会理論、現代社会論。消費社会論やシステム論、パサージュ論の視点を総合し、従来の社会学では捉えきれなかった“社会”“歴史”“身体”の新しい位相を提示しながら、現代における「社会記述」の可能性を探る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)著者が学部以降何を学んできたか,著名な社会学者の論考とともに振り返るかたちをとっています。本書では先生に言われた「本質的なことが大事」という言葉が述べられています。これは社会学だけではなく,生きる上で必要な視点ではないかと思います。本書を通じて著者が言いたかったことは,人々の生の様態について少しでも本質的なことを考えることであると述べています。地理学でも同様で,地域とは何かを考えるうえで本質を見抜く目を養う必要があります。来年の卒業生にはこのことに関連した言葉を最後に送るつもりです。
2015.12.06
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シーズン2が始まって,主に録画したものを見ています.わりと人口規模の大きい地方都市を中心にめぐっています.しかし,毎回タモリの先読みの鋭さには驚かされます.地形屋さんと張り合えるほどの地理的想像力をもっていると思います.土地改変がなされた現在の地形のわずかな高低差や土地利用などから過去の地形を推測できる力はすごいです.その後の展開として,都市の発展のために土地をどのように改変していったかという先人の知恵に焦点が当たります.希望としては,今後の日本の均衡ある国土のあり方とか,経済性だけではない自然との共生や防災上の知識など,何か提言につなげられるような議論があるとさらによいと思いました.タモリ自身は上記の問いに対する考えを持っていそうな気がします.
2015.11.08
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】学歴分断社会 [ 吉川徹 ]価格:820円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)日本の大卒層と非大卒層ー。全人口におけるその割合は、ほぼ同数となってきた。しかもそれは今後も続く。これが本書の言う、学歴分断社会である。そして大卒/非大卒という分断線こそが、さまざまな格差を生む。学歴分断社会は、どのようにして生じたのか。そこに解決すべき問題はないのか。最新かつ最大規模の社会調査データを活用し、気鋭の社会学者がこれまでタブー視されてきたこの領域に鋭く切り込む。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 変貌する「学歴社会日本」/第2章 格差社会と階級・階層/第3章 階級・階層の「不都合な真実」/第4章 見過ごされてきた伏流水脈/第5章 学歴分断社会の姿/第6章 格差社会論の「一括変換」/第7章 逃れられない学歴格差社会【著者情報】(「BOOK」データベースより)吉川徹(キッカワトオル)1966年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。計量社会学を専攻。現在、大阪大学大学院人間科学研究科准教授。同大学行動経済学研究センター准教授(併任)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)格差論はたくさんありますが,それらの議論を補強するかたちになっています。言葉の定義について参考になったので整理しておきます。豊かさと格差と不平等について。豊かさとは,社会の状態を示す標準値(GDP,平均所得,大学進学率など)が年を追って高まっていることができます。ただし,それは社会全体の水準について示しているにすぎず,ばらつきの大きさについては知ることができません。狭い意味での格差は,人々が上・中・下の各層にどんな比率で振り分けられているかという,社会の分布の形を見るものです。不平等は,理念としての平等がうまく実現していないことを意味します。ここでは原因と結果,あるいは出発点・途中経過・到達点といった因果関係が扱われます。さらにその因果関係について,本来ならばこうあるべきだという理想の状態(平等社会の姿)が考えられ,「○○によって△△になるのは不平等だ」というように,二つ以上のものの関係が,望ましい社会状態と照らしあわされて,不平等問題とされるのです。ですから,不平等とは,格差を発生させる因果的な仕組みを意味するもので,豊かさの程度や分布のばらつき(格差)とは異なる次元の物事だと考えればよいのです。一般に「格差問題」と言われる場合,そこで扱われている主要で深刻な「問題」は,実はこの不平等の次元のことなのです。とりわけ社会学では,親子の世代間関係の不平等を重要な論点としてきました。---------------------------------これは自身がいつも地域格差を論じようとするときに意識することでもあります。分布にばらつきがみられる場合に,それを単なる地域差ととらえるべきか,地域格差ととらえるべきかは慎重にならなければなりません。分布のばらつきを生じさせる要因をしっかり明らかにしたうえで,結果として不平等な状態に置かれているかどうかを見極めなければ,判断ができないということです。テーマ設定の際にも検証する前から「地域格差」として論じようとする傾向があります。たしかに対象とする問題群は地域格差問題として語れることが圧倒的に多いのですが。
2015.10.31
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】地域再生の罠 [ 久繁哲之介 ]価格:864円(税込、送料込)地方再生策は間違いだらけだ!多くは専門家らが独善的に進める施策にすぎず、それが原因で地方の衰退は深まっている。このカラクリを暴き、市民のための地域再生を示【内容情報】(「BOOK」データベースより)社員を大切にしない会社は歪んでいく。それと同じように、市民を蔑ろする都市は必ず衰退する。どんなに立派な箱物や器を造っても、潤うのは一部の利害関係者だけで、地域に暮らす人々は幸福の果実を手にしていない。本書では、こうした「罠」のカラクリを解き明かし、市民が豊かになる地域社会と地方自治のあり方を提示する。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 大型商業施設への依存が地方を衰退させる/第2章 成功事例の安易な模倣が地方を衰退させる/第3章 間違いだらけの「前提」が地方を衰退させる/第4章 間違いだらけの「地方自治と土建工学」が地方を衰退させる/第5章 「地域再生の罠」を解き明かす/第6章 市民と地域が豊かになる「7つのビジョン」/第7章 食のB級グルメ化・ブランド化をスローフードに進化させるー提言1/第8章 街中の低未利用地に交流を促すスポーツクラブを創るー提言2/第9章 公的支援は交流を促す公益空間に集中するー提言3【著者情報】(「BOOK」データベースより)久繁哲之介(ヒサシゲテツノスケ)1962年生まれ。地域再生プランナー。早稲田大学教育学部卒業。日本IBMを経て、現在は民間都市開発推進機構都市研究センター研究員。日本でのスローシティ提唱者として脚光を浴びている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)既存のまちづくりの問題点を指摘しながら筆者なりの具体的な地域再生策を提示しています。前者では,土建工学者のハード建築指向を非難しています。後者では,市民の考えを盛り込むなどソフトの側面を重視することを訴えます。最後の提言では7つが挙がっていますが,そのなかでも,既存の施設を活用したスポーツクラブ,女性専用フィットネスクラブに目を付けています。これはCCRCに近い発想のように感じました。一つ気になったのは,市民の声というときの市民とはいったい誰なのかということです。地域にもともといた人もいれば,Uターン,Iターン者もいます。老若男女それぞれ考え方が違う中でどのように合意形成をとっていくべきか,落としどころの具体案について一つでもヒントになる事例があればわかりやすかったように思います。そうでなければ,新たな地域再生策も絵に描いた餅に過ぎなくなる気がします。
2015.10.07
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光文社新書 595東京は郊外から消えていく! 首都圏高齢化・未婚化・空き家地図/三浦展【後払...価格:864円(税込、送料別)かつて団塊世代が東京圏にあふれ、郊外に大量の住宅が建てられた。それが今や、人口減少社会へと転じ、ゆくゆくは40%が空き家になるという予測も出ている。そうなれば、東京の随所にもゴーストタウンが現れるだろう。長年ローンを払い続けて手に入れたマイホームも、資産価値のない「クズ物件」となってしまう。日本の都市は、他にもさまざまな問題をはらんでいる。居場所のない中高年、結婚しない若者、単身世帯の増加…。とくに首都圏では、それらが大量に発生する。これから郊外はどうなる?住むべき街とは?不動産を最大限に活用するには?独自の意識調査などをもとに、これからの東京の都市、郊外のあり方を提言する。郊外論の行方を左右するのは,団塊ジュニア世代がどこに住まうかです。本書では,カルチャースタディーズ研究所などが,男女20~69歳の5,932人(埼玉,千葉,東京,神奈川および茨城県の一部在住者)を対象に行ったインターネット調査によっています。団塊ジュニア世代が東京圏のどこに住んでいるかについてまとめると,1.未婚で,所得が比較的低いものは,郊外を中心とした親元の家に同居を続けている。2.未婚で,所得が比較的高いもの,あるいは既婚で子どもがいない夫婦は,23区内の都心部から西南部にかけての,比較的ブランド性の高い地域に住む。3.既婚で子どもがいる,所得が一般的な世帯は,東京スカイツリーライン沿線や千葉ニュータウン方面などの大衆的な郊外住宅地に住む。4.既婚で子どもがいる,比較的裕福な世帯は,23区内の西南部,またさらにその西南の東急田園都市線沿線にかけての,比較的ブランド性の高い地域に住む。所得の階層によって,明確に住むエリアが分かれています。居住地域への指向性は,それぞれのエリアのブランディングを行う私鉄系不動産会社の戦略によるところが大きいと感じます。特に,東急田園都市線は,明確に高所得の若いファミリー層にターゲットを絞った都市開発を行っていて,そのことがアンケートにも表れているようでした。引っ越し前に,武蔵小杉の再開発を目の当たりにしてその勢いを感じました。JR南武線や横須賀線も乗り入れており,乗り換えの結節点としての地の利もあります。それ以外の郊外では,自分のライフスタイルで住む地域を選ぶ時代になると指摘しています。都心のタワーマンション,世田谷・目黒でコーポラティブハウス,さいたま市の自宅でSOHO,下町でアーティストインレジデンス,都心でシェアハウス,地方でロハスな暮らしなど最後は,郊外の中で選ばれない地域では,空き家が増えていくとして,コミュニティのために再生する方法を提示しています。かなり大胆な予測もありますが,不動産価格などを見ていると,だいたいはあてはまるのかもしれません。郊外論が一筋縄では語れない理由がそこにはあります。
2015.10.02
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【中古】新書 東北発の震災論 周辺から広域システムを考える / 山下祐介【P16Sep15】【画】【...価格:170円(税込、送料別)中心(中央)のために周辺(地方)がリスクを負い、中心から周辺に利益が還流する「広域システム」。その存在を顕在化させたのが今回の震災であり、福島原発事故だった。東北において典型的に見られる「中心‐周辺」のシステム形成史をたどり、そのシステムから脱却するために、周辺に暮らす人々や自治体がいかに主体的に動くべきなのかを考察。広域システム災害一般の問題と、東北社会特有の問題との両方を論じた先に見えてくる、未曾有の災害を乗り越える新しい社会のあり方を構想する。目次 : 第1章 広域システム災害/ 第2章 平成三陸大津波/ 第3章 東北という場/ 第4章 原発避難/ 第5章 復興と支援/ 第6章 システム、くに、ひと東日本大震災にみる広域システムの特徴を,東北地方の周縁性と関連付けて論じています。特に支援の中心-周辺の関係で興味深い記述がありました。今回の東日本大震災の市民ボランティア活動には,いい意味でも悪い意味でも,パターナリズムが強く表れたと言えそうである。ここでいうパターナリズムには,次の二つの意味を含ませている。第一には,中心に対する周辺の従順主義である。これがボランティア領域に限らず,この震災で多方面に強く表れたことを本書ではずっと見てきた。そしてこのことはによって効率的に支援活動が進んだ反面,参加する個人や,被災地周辺の小さな活動が,周辺化してしまった可能性がある。第二には,活動のパターン化である。第一点目とも関係するが,現場で活動していた多くのボランティアたちには,首都圏や関西圏などからの大都市出身者が多く含まれていた。そのため地方の生活,農山漁村や地方都市の生活を知らないものが多く,さらに被害の大きさが,現場の人々とのコミュニケーションを阻害した。今回ほど,被災現場へ行くことへの恐れ,被災者と呼ばれる人とコミュニケーションすることへのためらいが大きく表現された災害もないだろう。被災地と交流するよりは,まずは確実に役立つことをしようという思考法が働いたことも,活動のパターン化を強く導いた要因と思われる。ここから拾い出すべきことはなんだろうか。むろんこうしたパターナリズムが悪いということではない。考察してきたように,その背後にはこうした特徴を作り出してきた構造があり,それはしばしばこの震災がもたらした様々な条件をストレートに反映したものだからだ。むしろ,次のことを指摘する必要がある。市民ボランティアはもはや災害社会の中で非常に大きな存在となっており,それはすでにこの広域システムの中に自らの領域を確立して,市民活動システムともいうべきものを形成してしまっている。そしてそれは,東日本大震災の被災地の復興を考えるにあたっても無視しえないものになっている。--------------------------政治・経済・社会のシステムが東京を中心とする権力構造のなかにあるということを思い知らされたといえそうです。原発再稼働は普通に再開されようとしているし,支援の打ち切りに向けた準備も水面下で行われているようです。そこに,被災者の主体性は感じられません。結局,支援の枠組みそのものが中心-周辺関係のなかで展開される以上,本当の復旧復興にはつながらないと言えます。こうした分断状況をありのままにまずは伝える努力をしていかなければならないと感じます。また,忘れがちな被災地のことについて知ろうとする努力も必要です。一筋縄ではいかない意識の分断が進行しているからこそ,そこから読み取れる地方の論理があるのではないかと思います。それほど従順で隷属的な存在ではないとも思います。
2015.09.18
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】農山村は消滅しない [ 小田切徳美 ]価格:842円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)増田レポートが「どっこい生きている」地方にショックを広げている。このままでは地方は消滅するのか?否。どこよりも早く過疎化、超高齢化と切実に向き合ってきた農山村は、この難問を突破しつつある。現場をとことん歩いて回る研究者が丁寧にその事例を報告、地方消滅論が意図した狙いを喝破する。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 「地方消滅論」の登場/第1章 農山村の実態ー空洞化と消滅可能性/第2章 地域づくりの歴史と実践/第3章 地域づくりの諸相ー中国山地の挑戦/第4章 今、現場には何が必要かー政策と対策の新展開/第5章 田園回帰前線ー農山村移住の課題/終章 農山村再生の課題と展望【著者情報】(「BOOK」データベースより)小田切徳美(オダギリトクミ)1959年生まれ。明治大学農学部教授。農政学・農村政策論・地域ガバナンス論。東京大学大学院農学研究科博士課程単位取得退学(農学博士)。(財)農政調査委員会専門調査員、高崎経済大学助教授、東京大学大学院助教授などを経て、現職。著書に『日本農業の中山間地帯問題』(農林統計協会。1996年日本農業経済学会奨励賞受賞)、『農山村再生に挑むー理論から実践まで』(編著、岩波書店。2014年地域農林経済学会特別賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)地方消滅論に対する反論本です。こういった新書は数多く出されています。地方といってもその特性は千差万別なので,消滅する地域もあれば,持続する地域もあるのだと思いますが。------------------------本書で興味深かった事例は鳥取県日南町です。同町での社会移動は,移住者の動きにより以前の大幅なマイナスから急速に回復し,2011年度には社会増へと変化した。その後は再度マイナスになるも,以前と比べれば小幅な水準となっている。これは,同町が「まちは大きなホスピタル」,「まちの道路は病院の廊下」として掲げる町立病院を中心とした医療・福祉サポートの充実が移住者を呼び込む魅力となり始めたことに加えて,町独自の農林業研修生制度(最長二年間)導入の成果の反映と考えられる。しかし他方で,自然移動はほぼ一定数で推移している。これは,過去の過疎化で大きくゆがんだ「逆ピラミッド型」の人口構成では,自然移動を改善することが簡単ではないためである。-------------------------こちらでは医療・福祉サービスの充実に向けた取組みの実績が30年間と長く,医療従事者に先見の明があったことが特筆されます。今後のフィールドとしても魅力的です。また,スケールとしては自治体よりも小さいスケール(集落単位)で議論しなければ見えてこないことも多そうです。現場の取組みによって,地方でも一部の勝ち組と多数の負け組が明確になってくるような気がしています。こうした過程を丹念に追うことが自身にとっての研究課題になります。
2015.09.02
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創造的福祉社会 ーー「成長」後の社会構想と人間・地域・価値-【電子書籍】価格:750円「限りない経済成長」を追求する時代は終焉を迎えた。私たちは、人類史上三度目の「定常期」に直面している―。飽和した市場経済のもと、われわれの社会は「平等と持続可能性と効率性」の関係をいかに再定義するべきか。「拡大・成長」のベクトルにとらわれたグローバル化の果てに、都市や地域社会のありようはどう変化するのか。そして、こうした「危機の時代」に追求される新たな価値原理とは、人間と社会をめぐる根底的思想とは、いかなるものか。再生の時代に実現されるべき社会像を、政策と理念とを有機的に結びつけ構想する。目次 : 時間軸/歴史軸―私たちはどのような時代を生きているか(創造的定常経済システムの構想―資本主義・社会主義・エコロジーの交差)/ 空間軸―グローバル化とローカル化はどのような関係にあるか(グローバル化の先のローカル化―地域からの“離陸”と“着陸”(コミュニティとしての都市―コミュニティ感覚と空間構造/ 地域の「豊かさ」とは何だろうか))/ 原理軸―私たちは人間と社会をどのように理解したらよいか(進化と福祉社会―人間性とコミュニティの進化(はじめに―「人間についての探求」と「社会に関する構想」をつなぐ/ ケア/コミュニティの進化―人間社会の起源 ほか))哲学的な内容に踏み込んでいます。創造的なというタイトルどおり,想像力を働かせないと,価値の転換に対する筆者の考えを理解することが難しかったです。でも,これまでの経済成長モデルが崩れてこれまでとは異なる価値体系を作り出す必要があるという主張は理解できました。それが社会モードの大転換に結び付くものなのかについては疑問符が付きます。価値の転換といったものは,ショック療法で進められたり,一部の人が既存のシステムの中のニッチとして採用するに過ぎないのではないかということです。好例は原発再稼働です。日本の場合,政府依存の体質が大きな事故を受けてもなお変わらない強固なシステムなのではないかと思います。システムというか,そういうシステムであろうという大方の信念といったものに近いかもしれません。でも,草の根の取組みが実を結びにくいのには,もっと強大な権力が押さえ込んでいるからではないかと最近では思えます。日本が独自に主権国家として取りうる選択肢はそれほど多くはないのではないかと最近の政治事情を見ても思います。本書のように,この新しい社会への転換は理想論としては納得できます。しかしながら,それが一部では実現するにしても,大きな流れにはなっていきようのない政治力学が厳然として存在するように思えてなりません。
2015.08.21
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】里山資本主義 [ 藻谷浩介 ]価格:843円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)課題先進国を救うモデル。その最先端は“里山”にあった!!危機を超え未来を生む、すり潰されない生き方を提言!!【目次】(「BOOK」データベースより)はじめに 「里山資本主義」のススメ/第1章 世界経済の最先端、中国山地ー原価ゼロ円からの経済再生、地域復活/第2章 二一世紀先進国はオーストリアーユーロ危機と無縁だった国の秘密/中国総括 「里山資本主義」の極意ーマネーに依存しないサブシステム/第3章 グローバル経済からの奴隷解放ー費用と人手をかけた田舎の商売の成功/第4章 “無縁社会”の克服ー福祉先進国も学ぶ“過疎の町”の知恵/第5章 「マッチョな二〇世紀」から「しなやかな二一世紀」へー課題先進国を救う里山モデル/最終総括 「里山資本主義」で不安・不満・不信に訣別をー日本の本当の危機・少子化への解決策/おわりに 里山資本主義の爽やかな風が吹き抜ける、二〇六〇年の日本【著者情報】(「BOOK」データベースより)藻谷浩介(モタニコウスケ)1964年、山口県生まれ。株式会社日本総合研究所調査部主席研究員。株式会社日本政策投資銀行特任顧問。88年東京大学法学部卒、同年日本開発銀行(現、日本政策投資銀行)入行。米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経ながら、2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究・著作・講演を行う。平成合併前の約3200市町村の99.9%、海外59ヶ国を概ね私費で訪問した経験を持つ。その現場での実見に、人口などの各種統計数字、郷土史を照合して、地域特性を多面的かつ詳細に把握している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)にわかに新書では地方消滅か地方再生かまったく異なるベクトルの本がいくつも出されています。きっかけは増田レポートです。地方に対して具体的な将来予測データを利用して,危機感を煽ったことは確かです。これに対して,そうは単純な結論にはならないとしてさまざまな実践例が紹介される新書が多いです。その一つが「里山資本主義」です。高知の事例も触れられていました。真庭モデルで知られる林業によるエネルギー自立を大豊町で実践するというものです。真庭市では,銘建工業や真庭市,地元の林業・製材業の組合など9団体が共同出資した新会社「真庭バイオマス発電株式会社」が設立されました。2013年に大規模な製材所を建設するとともに,木くずを利用した発電所も建設するといいます。里山資本主義は,身近に眠る資源を生かし,お金もなるべく地域の中で回して,地域を豊かにしようとすることです。域外との金のやり取りをまったくせずにというのは現実的ではないような気がします。また先行モデルの先行者利益を後追いする後発組は競合に負けてしまうのではという懸念があります。それぞれの地域が自立した圏域を形成するという発想とその政策は,すでに試みられうまくいかなかった経緯があります。その反省を踏まえて,どうすれば東京一極集中の流れを止めることができるのかをその構造的要因から解き明かして,国策として実践していかなければ根本的な解決にはならないかもしれません。草の根的な活動が利益を上げている場合,どの地域のどの顧客層をターゲットとしているのか冷静な分析をする必要があります。高知県は課題先進県とされるだけあって,取組みもいち早く行われている印象がありますが,単なる先行者利益に預かっているのか,それでも市場開拓できずに失敗するのか,その成否は各方面から注目されているのではないでしょうか。
2015.08.16
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ザ・ミリオンセラー ~尾崎豊「十七歳の地図」~よく聞いていたアルバムで,カラオケでもよく歌ったし,ギターもよく弾いてました。懐かしく見ました。舞台裏のプロデューサーたちが彼をどう見ていたのか,実際にどうプロデュースしたのかが垣間見えました。普段の笑顔と,レコーディングでの気迫とのギャップに一言で表しにくい性格だったことがわかりました。また,その時代の最先端の技術やトレンドを取り入れながら,一流のバンドマンを組み合わせて一つの極にしていった経緯が分かりました。対談では息子が出ていましたが,テープのでも音源を代わりに歌って世に出す提案も出されました。聞いてみたい気がします。
2015.07.25
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】縮小都市の挑戦 [ 矢作弘 ]価格:885円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)急激な人口減少と産業の衰退のために、世界中の都市が「縮小」し、時に破綻している。しかしそこには、空き家や荒廃地、廃校といった不良資産化した「空き」を再活用し「小さく、賢く、成長する」ための挑戦も存在した。破綻からの再生を目指すデトロイトとトリノの試みからその具体策を学び、日本が進むべき道を導き出す。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 縮小都市の時代/第1章 甦るデトロイトー財政破綻から、都市再生の胎動へ(縮小と破綻の事情ー都市構造の矛盾/都市再生の息吹を訪ねるー自生的な営み)/第2章 トリノを再位置化するーポストフォーディズムの都市づくり(「都市イメージ」を更新する/「都市空間」を再構築するー「場の創造」戦略)/第3章 人口減少と高齢化の最先端を走る日本(パラダイムを転換する/集約型都市圏構造を形成する/空洞化した都市を甦らせる)【著者情報】(「BOOK」データベースより)矢作弘(ヤハギヒロシ)1947年東京生まれ。1971年横浜市立大学卒、日本経済新聞ロサンゼルス支局長、編集委員、オハイオ州立大学/ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員研究員、大阪市立大学大学院創造都市研究科教授などを経て、龍谷大学政策学部教授、ジャーナリスト、博士(社会環境科学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)デトロイトやトリノを例にとりながら,雇用や人口が減少していくなかで都市のあり方を考えています.仕組みや制度が違うので,海外都市の事例をそのまま日本に導入する際には注意が必要であることは言うまでもありません.富山市のコンパクトシティ政策についても批判的でした.限られたパイを奪い合う仕組み自体が維持されている限りにおいては,都市間競争の次元を超えることはできないとしています.そして,今後は都市間協働/共同をめざすべきであると提言しています.理念としてはその通りですが,都市経営やマーケティングの如何で都市の盛衰が決まってしまうこの仕組みのなかで考える限りは,都市間協働は絵に描いた餅です.都道府県や国といったより大きなスケールの管轄地域をもった行政が具体的に都市のあり方,人口の配置,産業政策についてどのようなビジョンと,それに基づいた施策を打ち出せるかに大きく依存してしまうのではないかと思います.これまでにも全国総合開発計画は何度も地方への産業分散を図り,頓挫してきた経緯があるわけで,東京圏への一極集中傾向は止まる兆しが見えません.地方創生政策においても,それが実現しても,地方間の優勝劣敗が明確になるだけであろうし,そもそもリタイヤ世代の地方移転を目指すのみでは,医療財政負担の地方への押し付けと捉えられても無理はありません.人口の多寡だけで各地域の維持可能性を語ることも一面的に過ぎるように思います.もともと人口が少なかった時代にもどるだけとかんがえれば,現代は高度経済成長期に郊外を中心に乱開発を通じて可住地面積を広げすぎたのかもしれません.それでもどっこい生きる地域は世代継承しながら残っていくのだし,放棄されていく地域は空き家が並んだゴーストタウンになっていくだけなのかもしれません.当該地域の住民は今のうちに,現役世代やあるいは他の支援者と今後この地域をどうしたいのかについて話し合い,引き継いでいくならば,その具体的方策を見つけていかなければならないのだと思います.補助金による支援を求めること自体は否定しませんが,あらゆる地域がお金で解決できるような次元をすでに超えています.以上のような,コミュニティや集落の維持をめぐる危機的な状況と具体的な対応策について機会があればまとめてみようかと思います.
2015.07.12
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藤原竜也「おかえり、はやぶさ」価格:3,024円(税込、送料別)説明:2010年6月に小惑星イトカワのサンプルとともに帰還した小惑星探査機はやぶさを題材にしたファミリー・ムーヴィー。父をはじめとしたさまざまな人々と衝突しながら、チームとして成長するエンジニアの姿を描く。出演は藤原竜也、杏ら。ストーリーはとても明快です。はやぶさの打ち上げから帰還までを描いています。その前の「のぞみ」の失敗も取り上げて,今回は失敗できないというプレッシャーがあったことを伝えています。のぞみにかかわった父親と,はやぶさ打ち上げに携わる息子との関係が見どころです。どこまで脚色された部分かわかりませんが,知恵を絞りながら,残った機能を生かして何とか帰還させようとした努力が伝わりました。
2015.07.07
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】アホウドリを追った日本人 [ 平岡昭利 ]価格:842円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)明治から大正にかけ、一攫千金を夢みて遙か南の島々へ渡る日本人がいた。狙う獲物はアホウドリ。その羽毛が欧州諸国に高値で売れるのだ。密猟をかさね、鳥を絶滅の危機に追い込みながら、巨万の富を築く海千山千の男たち。南洋進出を目論む海軍や資本家らの思惑も絡んで「帝国」日本の拡大が始まる。知られざる日本近代史。【目次】(「BOOK」データベースより)プロローグ 絶海の無人島に、なぜ、日本人は進出したのか/第1章 アホウドリを追ってー「海の時代」の到来/第2章 鳥類輸出大国「帝国」日本と無人島獲得競争/第3章 糞を求めるアメリカ人・鳥を求める日本人/第4章 アホウドリからリン鉱へー肥料・マッチ・兵器の原料を求めて【著者情報】(「BOOK」データベースより)平岡昭利(ヒラオカアキトシ)1949年広島県呉市に生まれる。1978年関西大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、下関市立大学経済学部教授。専攻は人文地理学・歴史地理学(文学博士)。著書『アホウドリと「帝国」日本の拡大ー南洋の島々への進出から侵略へ』(明石書店、日本地理学会賞・人文地理学会賞・地理空間学会賞を受賞)、『離島研究1~4』(編著。海青社、3が地理空間学会賞を受賞)、『地図で読み解く日本の地域変貌』(編著、海青社、地理空間学会賞を受賞)、『地図でみる佐世保』(編著、芸文堂、親和銀行ふるさと振興基金を受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)データ入手が困難な事象を新聞記事や統計資料,個人史などを洗い出して検証しています。アホウドリに一攫千金を狙った日本人たちの行動と帝国日本の南洋進出との関連性が描き出されています。実際の国家領域は,当時の複雑な当事者間の行動と利害によって既成事実化していくものであることがわかりました。そこには山師的な人間の強欲が目立っており,世間の目や時には政府の目も欺く形で私腹を肥やす姿がありました。現在の島嶼は漁業水域が生ずる場所として,防衛拠点として,国境を接する国同士で領有権の主張がなされる場所になっています。かつてどのような経緯でこれらの島々が誰によって利用されてきたのか,その史実を踏まえれば,島の領有における考え方も少し変わってきそうな気がします。
2015.07.05
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】四国遍路 [ 森正人(文化地理学) ]価格:820円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)八八の寺院を巡るあり方を決定づけた僧侶の案内記、貧困・病気・差別に苦しめられた巡礼者たちの記録、新聞記者による遍路道中記、バスや鉄道の登場がもたらした遍路道の変貌ー。本書は、近世以降の史料を掘り起こし、伝説と史実がないまぜになった四国遍路の実態を明らかにする。千数百キロの行程を歩く巡礼者と、彼らと相対し、お接待文化を育んだ地域住民。歩くだけでは見えてこない歴史の真実を浮かび上がらせる。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 巡礼とは/第1章 起源を探る/第2章 江戸時代の四国遍路/第3章 近代の巡礼者たち/第4章 貧困、差別、行き倒れ/第5章 近代化への道/終章 レジャー化する四国遍路【著者情報】(「BOOK」データベースより)森正人(モリマサト)1975年(昭和50)香川県生まれ。2003年関西学院大学大学院文学研究科博士課程修了、関西学院大学博士(地理学)。三重大学助教授を経て、07年より同大学准教授。専門は文化地理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)文化地理学者のこれまでの研究を新書にしたものです.昨年,弘法大師が四国八十八カ所霊場を開創して1200年といわれ,メディアがこぞって四国遍路を特集しました.しかし,あとがきにもあるように,四国遍路は空海が開創したという説は疑わしいといいます.いつできたか,そもそも仏教や真言宗の巡礼とは呼び難い.四国の人々にいつも温かく迎え入れたわけでもなく,政治的思惑の片棒を担いだこともありました.四国遍路は,その時々の時代性を反映しつつ,過去,特に江戸時代以降の歴史的要素も踏まえながら,そのあり方をさまざまに変えてきたといえます.それは四国遍路だけではなく,歴史性を帯びたものは少なからずそうした側面をもっているのではないかと思います.したがって,現在の四国遍路がどう描かれているかできるだけ客観的に描き出すことが本質をとらえるうえでは重要だと感じます.
2015.06.23
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】商店街はなぜ滅びるのか [ 新雅史 ]価格:799円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)極めて近代的な存在である商店街は、どういう理由で発明され、そして、繁栄し、衰退したのか?よく言われるように、郊外型ショッピングモールの乱立だけが、商店街衰退の原因なのか?さらに、地域コミュニティの要となる商店街の再生には、どういう政策が必要なのか?膨大な資料をもとに解き明かす、気鋭の社会学者による画期的な論考。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 商店街の可能性/第1章 「両翼の安定」と商店街/第2章 商店街の胎動期(一九二〇~一九四五)-「商店街」という理念の成立/第3章 商店街の安定期(一九四六~一九七三)-「両翼の安定」の成立/第4章 商店街の崩壊期(一九七四~)-「両翼の安定」の奈落/第5章 「両翼の安定」を超えてー商店街の何を引き継げばよいか【著者情報】(「BOOK」データベースより)新雅史(アラタマサフミ)1973年福岡生まれ。学習院大学非常勤講師。東京大学人文社会系研究科博士課程(社会学)単位取得退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)自身の研究テーマにも関連する内容です.商店街の形成プロセスを紐解き,行政や当事者,大型店などの思惑を踏まえながら論じています.商店街の比較的歴史が新しいことがわかります.商店街の胎動期を示した1920~1945年は以下のように整理されます.-------------------------「商店街」という理念には,個々の小売業者を専門店化し,それを地域ごとに束ねることで,高い消費空間を提供しようという明確な目的があった.また,その空間に娯楽性を付与することで,コミュニティの人々がそこに気軽に集まりうる空間に仕立てようとする意図もあった.それは,商店街という空間を通して,新しい公共性の基盤を作り上げる試みだった.そのうえで社会学者の奥井復太郎は,「商店街」という理念を,繁華街だけでなく,住宅街の近傍地域に広げようとした.わたしたちが商店街と聞いて想像するのは,中心街のものだけではないだろう.住宅街の中にある10軒程度の商店街もイメージとしてあるはずである.住宅街の中にある商店街―生活必需品の販売が中心である商店街―,それが,この時期に構想されたのである.このように,商店街は,伝統的な存在とみなすことはできない.スーパーマーケットやショッピングモールが「新しい」存在である一方で,商店街が「古い」存在とみなされることがあるが,実際のところ商店街は,20世紀の社会変動に合わせて作られた「新しい」存在であった.また,注意すべきは,商店街という考えが,百貨店などと同じ時期に出てきて,その要素を取り入れて形成されたことだ.ただ,こうした商店街の形成プロセスは,戦後になって,多くの人に忘却された.商店街を形成する零細小売商は,自民党の保守政治と結び付くことで,既得権を固守しようとする「地域ボス」としてふるまう存在であるとみなされた.-------------------------商店街研究をする際にも第二次大戦後の動きを議論の出発点に据えることが大きいと感じます.でも,戦前,戦中の動きにも目配せしなければ,そもそも商店街がどのような理念のもとに形成されてきたかが不明なままです.商店街の基礎が戦後に引き継がれてきたならば,誕生当初からの歴史を踏まえることが必要です.そういう意味で,新書でありながら,時間軸を長くとってあることで,現在の商店街の意義や課題を考えさせてくれる良書と感じました.
2015.06.20
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科学は誰のものか 社会の側から問い直す価格:799円(税込、送料別)【内容情報】(「BOOK」データベースより)遺伝子組換え作物から再生医療まで、暮らしに深く関わる科学技術の問題にどう向き合うか。哲学、政治学など文系のアプローチを用いて科学を見つめれば、サイエンスの「不確実性」や、テクノロジーに埋め込まれた「政治性」が見えてくる。科学技術と社会がいかに深く作用しあっているかを解き明かし、専門家と素人の知性を架橋するSTS(Science,Technology and Society科学技術社会論)入門の決定版。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 輝かしく陰鬱な1970年代という曲がり角/第2章「統治」から「ガバナンス」へ/第3章 科学は「完全無欠」か/第4章 科学技術と社会のディープな関係/第5章 科学の不確実性とどう付き合うか/第6章 知ること、つながること/第7章 知を力にするために【著者情報】(「BOOK」データベースより)平川秀幸(ヒラカワヒデユキ)1964年生まれ。国際基督教大学、東京工業大学で物理学を学んだ後に、国際基督教大学で科学哲学を研究。京都女子大学現代社会学部助教授を経て06年より大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授(科学技術社会論、サイエンスショップ代表)。専門は科学技術のガバナンス論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)読みごたえがあって良書だと思います.科学に向けられる価値中立性のまなざしに疑問を投げかけています.現代の科学技術の性質そのものに由来する「科学なしでは解けないが,科学だけでは解けない問題」,いわゆる「科学なし/だけ問題」がキーワードになっています.そこには「科学の不確実性の増大」と「社会のなかの利害関係・価値観との絡み合い」が,科学技術の発展,普及とともに増大してきたために,公共的ガバナンスのもとでみなが科学に対する扱いを迫られるようになった背景があるとしています.また,科学技術と社会との影響関係を捉える際に重要な見方は,相互形成的で,相互浸透的な共生成(co-production)といいます.ここで「相互形成的」というのは,「科学技術が社会に影響し,社会を変える」というだけでなく,逆に「社会が科学技術に影響し,科学技術を変える」というベクトルについても考えるということです.いいかえれば,一つ一つの科学知識やテクノロジーは,科学技術と社会の「合作」なのであり,それが作られることで社会の側も科学技術の側も変わっていく.そのような「ともに作り,ともに作られる」という関係が「科学技術と社会の共生成」ということの第一の意味と述べています.そこには,科学の概念の意味やロジック,テクノロジーの仕様や性能にも,社会のなかの政治的,経済的な利害関係や権力関係,価値観などが埋め込まれているということまで意味している.--------------------------技術自体に社会関係が埋め込まれているという見方は地理学でもみられます.ただ,実証するのが難しいテーマです.あとは開発された技術が当初の意図とは関係なく,新たな社会関係を生み出しうるというところも追究したいと思っています.そうすれば,技術が構築されるプロセスと地域に受容されていくプロセスの解明につながり,技術と社会(地域)との共生成を明らかにできるものと考えます.
2015.05.13
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】地方消滅の罠 [ 山下祐介 ]価格:972円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)「二〇四〇年までに全国の市町村の半数が消滅する」とぶちあげ、「すべての町は救えない」と煽って衝撃を与えた日本創成会議の「増田レポート」。だがその警鐘にこそ、地方を消滅へと導く罠が潜んでいる。「選択と集中」などという論理を振りかざす本当の狙いは何か。「棄民」への政策転換がなされたように見せかけているのはなぜか。限界集落問題が「つくられた」ことを示して話題となった社会学者が、増田レポートの虚妄を暴き、地方を守るために必要な論理と、再生に向けた道筋を示す。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 地方消滅ショック/第1章 人口減少はなぜ起きるのか/第2章 地方消滅へと導くのは誰か/第3章 「選択と集中」論の危うさ/第4章 多様なものの共生へ/第5章 「ふるさと回帰」は再生の切り札になるか/第6章 持続する制度を生み出す/終章 新しい社会を選べるか【著者情報】(「BOOK」データベースより)山下祐介(ヤマシタユウスケ)1969年生まれ。九州大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程中退。弘前大学准教授などを経て、首都大学東京准教授。専攻は地域社会学、環境社会学。『津軽学』(津軽に学ぶ会)の運動にも参加(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)増田レポートの地方消滅を題材にして,その論理の批判を展開しています.さらに,核家族化や地域コミュニティが培ってきた豊かな子育て環境の喪失も,子育て回避の社会的環境の変化として指摘されています.増田レポートは「選択と集中論」を唯一の解決策として提示しています.それは各地方中核都市に周辺のより規模の小さい都市の人口を集約するというコンパクトシティ戦略です.------------------------------------人口はいまそこに居住する人々の数で表される.しかし,自治体の住民を数としての一面性にとらわれてみてしまえば,「選択と集中」論に行きつき,自治体の住民を数としての一角年にまとめればよいという発想にもなるのだろう.------------------------------------筆者は二重住民票を提案して,人が居住地域にかかわらず,複数地域に住民票を置く選択肢を用意する方策を提案しています.これとて,二つ目の住民票をめぐって都市間競争が行われるのは目に見えています.重要なポイントは住民とは何か?自治体とはどうあるべきか?という議論を,地域にかかわる者が話し合って合意形成を図っていくということだと思います.選択と集中による画一性の依存から多様性の共生による地方の分散化をいかに実現するか.一人ひとりがそうした目標への共通認識を持たない限り,政策実現は遠いような気がします.
2015.04.25
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】銃・病原菌・鉄(上巻) [ ジャレド・ダイアモンド ]価格:972円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位を受賞した名著、待望の文庫化。【目次】(「BOOK」データベースより)ニューギニア人ヤリの問いかけるもの/第1部 勝者と敗者をめぐる謎(一万三〇〇〇年前のスタートライン/平和の民と戦う民の分かれ道/スペイン人とインカ帝国の激突)/第2部 食料生産にまつわる謎(食料生産と征服戦争/持てるものと持たざるものの歴史/農耕を始めた人と始めなかった人/毒のないアーモンドのつくり方/リンゴのせいか、インディアンのせいか/なぜシマウマは家畜にならなかったのか/大地の広がる方向と住民の運命)/第3部 銃・病原菌・鉄の謎(家畜がくれた死の贈り物)【楽天ブックスならいつでも送料無料】銃・病原菌・鉄(下巻) [ ジャレド・ダイアモンド ]価格:972円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)世界史の勢力地図は、侵略と淘汰が繰り返されるなかで幾度となく塗り替えられてきた。歴史の勝者と敗者を分けた要因とは、銃器や金属器技術の有無、農耕収穫物や家畜の種類、運搬・移動手段の差異、情報を伝達し保持する文字の存在など多岐にわたっている。だが、地域によるその差を生み出した真の要因とは何だったのか?文系・理系の枠を超えて最新の研究成果を編み上げ、まったく新しい人類史・文明史の視点を提示した知的興奮の書。ピュリッツァー賞・コスモス国際賞受賞作。朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位。【目次】(「BOOK」データベースより)第3部 銃・病原菌・鉄の謎(承前)(文字をつくった人と借りた人/発明は必要の母である/平等な社会から集権的な社会へ)/第4部 世界に横たわる謎(オーストラリアとニューギニアのミステリー/中国はいかにして中国になったのか/太平洋に広がっていった人びと/旧世界と新世界の遭遇/アフリカはいかにして黒人の世界になったか)/科学としての人類史1万3000年にわたる人類史の謎を解いています。上下の2巻を読み切るのはなかなかに大変でしたが,書いてある内容はかなり平易でした。本書を一文で要約すると,「歴史は,異なる人々によって異なる経路をたどったが,それは,人々の置かれた環境の際によるものであって,人々の生物学的な差異によるものではない」おもに地理的要因が歴史にどれほど影響を与えたかに注目しています。筆者は進化生物学者としてフィールドワークを行い,さまざまな人間社会に接してきたといいます。たとえば,ポリネシア社会の多様性については,6種類の環境要因を指摘しています。島ごとに異なるそれらの要因とは,気候,地質,海洋資源,面積,地形,隔絶度である。また,ニューギニアの人々が独自に誕生させた食料生産システムの展開が制約された原因を,この地域の人々の特性に合ったわけではなく,この地域の生物相や環境要因にあったと結論付けています。ユーラシア大陸の人々は,たまたま他の大陸の人々よりも家畜化可能な大型の草食性哺乳類を数多く受け継いできた。このことは,やがてユーラシア大陸の人々を人類史上いろいろな面で有利な立場に立たせることになるが,この大陸に家畜化可能な大型の草食性哺乳類が多数生息していたのは,哺乳類の地理的分布,進化,そして生態系という三つの基本的要素がそろって存在していた結果という。上巻の最後には,病原菌が人類史上で果たした役割に言及している。少数のヨーロッパ人が,圧倒的な数の先住民が暮らしていた南北アメリカ大陸やその他の地域に進出していき,彼らにとってかわったのは,ヨーロッパ人が,家畜との長い信仰から免疫を持つようになった病原菌を,とんでもない贈り物として,進出地域の先住民に渡したからと締めくくっています。アメリカ大陸に関して,食料生産をスタートするタイミング自体が遅かったこと,そして家畜化できたり栽培化できたりする野生動物の種類が限られていたことに加えて,地理的要因や生態的要因が大きな妨げとなって,南北アメリカ大陸では主要な発明や,技術や,作物や,家畜といったものが迅速に拡散しなかった。それに対して,東西方向に横長な陸塊であるユーラシア大陸では,緯度や生態系の違いをまたぐことなく,さまざまなものが各地に拡散していけた。ところが,南北方向に縦長で,とりわけパナマのあたりでぎゅっとくびれている南北アメリカ大陸は,砂漠やジャングルによっても地理的に分断されていた。そのため,食料の生産に適した地域や,人が密集して生活できる地域がユーラシア大陸のように広く続いていなかった。ヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化できた要因として,白人の人種主義者が考えるように,ヨーロッパ人とアフリカ人に人種的な差があったからではない。それは地理的偶然と生態的偶然のたまものに過ぎない。しいていえば,それは,ユーラシア大陸とアフリカ大陸の広さの違い,東西に長いか南北に長いかの違い,そして栽培化や家畜化可能な野生祖先種の分布状況の違いによるものである。つまり,究極的には,ヨーロッパ人とアフリカ人は,異なる大陸で暮らしていたので,異なる歴史をたどったということなのである。エピローグには,人間社会の展開に影響を与えうる環境上の要因を4つ指摘しています。第一に,栽培化や家畜化の候補となりうる動植物種の分布状況の違い第二に,伝播や拡散の速度の違い第三に,異なる大陸間での伝播に影響を与えたもの第四に,それぞれの大陸の大きさや総人口の違い地理的な要因としては,技術の発達は,地理的な結びつきからプラスの影響とマイナスの影響を受けている。その結果,時間的に長い尺度で評価した場合,技術は,地理的な結びつきが強すぎたところでもなく,弱すぎたところでもなく,中程度のところで最も進化のスピードが速かったとしています。過去1000年の技術の発達でいえば,中国は地理的な結びつきが最も強かったところの例であり,ヨーロッパは中程度だったところの例であり,インド亜大陸はもっとも弱かったところの例だということだろう。-----------------------------------一言でいえば,人類の進化の地域差の要因は,環境決定論に帰結するということです.本書ではよく,たまたまとか偶然という言葉で要因を説明することがあります.物事には原因と結果の関係が存在するといいますが,偶然性でしか説明のつかない事象もまだ多いのだということだと感じます.そこには,長い歴史の中における地域間の関係や気候変動など,時間や空間のスケールをどのようにとるかでいかようにも人間の進化に影響を与えうる要因が複雑に絡み合っているのではないかと思います.その多様性を考慮しすぎると,要因間の関係が複雑すぎて説明がしづらくなります.多様性をそぎ落とすと,ある要因だけをことさら強調してしまいがちになります.このバランスをいかに考えるかですが,特に日本の地理学者にとっては,あまりに空間と時間のスケールが大きすぎて,本書のように物事を単純化して描ききることはできないという印象がぬぐえないのだと思います.強調された出来事は,ある面では的を射ているかもしれませんが,ある民族の拡散を促す必要条件であって十分条件ではないように思えます.もっと他に考慮されるべき要因があるのではないかと思わせるある種明快な論理が貫かれています.
2015.04.16
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文春新書 559団塊格差/三浦展【後払いOK】【2500円以上送料無料】価格:820円(税込、送料別)実はこんなにも階層間格差があった!!月刊「文藝春秋」と共同で行った団塊世代2000人全国調査によって得られたデータを、ベストセラー『下流社会』の著者が分析。彼らの人生六十年とこれからを考える。久しぶりに本の紹介.自分の専門の本や論文を読むのに追われてなかなか異分野の本をめくる時間がありません.今回は団塊世代について膨大なデータをもとに分析しています.かなり荒っぽい考察もありますが,そういうものとして読めば,面白いです.団塊世代も収入・貯蓄やリタイヤ後の生活希望格差が存在しているという.そこから自身の格付け(上中下)が決まってきます.あと退職金の額も相当違います.当然自営業はじめそもそも退職金がないところもあります.所得の上昇を見た高度経済成長期ですが,上昇の度合いは明らかに存在していた.退職をする時期になって見えにくかった格差がより明確に現れてきたということだと思いました.特定の世代をあるキーワードで括ろうとする風潮は,隠された差異をさらに覆い隠す面があるものだと気づかされます.
2015.03.14
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】台湾現代史 [ 何義麟 ]価格:3,024円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)戦後すぐの1947年、台湾では民間人を政府が過酷に弾圧、多数の死者を出した二・二八事件が起きた。事件をめぐる認識の対立と史実を対話的に再検討しつつ、台湾の現代史を叙述する。台湾民主化の達成によっても、克服できない歴史認識の対立。二・二八事件、白色テロをめぐる記憶の抗争の歴史を辿る。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 「再植民」と「再光復」の間/第2章 二・二八事件への道のり/第3章 事件の経過と社会亀裂の深刻化/第4章 自由中国としての台湾/第5章 一九六〇年代における台湾社会の変容/第6章 転換期を迎えた一九七〇年代の台湾/第7章 民主化の進展と歴史記憶の喚起/終章 族群和解と過去の克服【著者情報】(「BOOK」データベースより)何義麟(カギリン)1962年台湾生まれ。1999年東京大学大学院総合文化研究科学術博士取得。国立台北教育大学副教授、同大学台湾文化研究所所長。著書に、『二・二八事件ー「台湾人」形成のエスノポリティクス』(東京大学出版会、2003年、第20回大平正芳記念賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)二・二八事件前後を中心に,国民党がこれまで戒厳令下でタブー視させてきた事件の真相を明らかにしようとしています.これまでの研究はそもそも数が少なく,研究者の出身地域やアイデンティティによって,事件に対する認識が異なります.日本の植民地支配をどうとらえるのかが大きなポイントです.本書では,植民地支配によって住民管理のシステムがある程度成立していたことが,戦後の国民党による暴動を阻止するための住民管理をスムーズにしたことが述べられています.--------------------------1945年の日本の敗戦後に台湾省行政長官公署が総督府とその付属機構を接収した際,警察が所管していた戸籍行政は一時的に行政長官公署の警務処が担うことになった.しかし,これは国民政府が謳っていた「民政管理の原則」に違反しており,また台湾住民の要求にも反していたため,戸籍管理はよく46年には民政処へと移管された.その後,武力鎮圧に際しての取り締まりのため,植民地期に警察が管轄していた保甲制度が一時的に復活した.そして,反乱者の取り締まり強化のため,1947年末までにすべての住民を対象とする「国民身分証」が発行され,その検査体制が次第に確立されていった.例えば,1948年3月1日には「出入境旅客管理弁法」が実施され,5月30日には全島一斉に国民身分証の総検査が行われた.これにより,台湾住民は島内外の移動の自由が制限されるようになった.台湾では日本の植民地支配においてすでに住民登録及び管理システムが確立されていたため,直ちに身分証を作成することが可能だったのである.つまり,戦後台湾人を監視してきた国民身分証の制度は,二・二八事件の副産物であるとともに,植民地支配体制の「遺産」でもあるといえるのである.--------------------------本書の出版自体が,台湾の出版の自由を象徴しているような気がします.つい最近まで国民党の意向なしには批判的な論調は発禁処分を受けていました.党外人士(野党)がどんどん勢力を増す中で歴史認識も改められていきました.この自由化の背景には,米国の圧力も相当あったようです.やはり歴史を欠いた地理を見てもその地域のすがたは見えてこないことがよくわかります.
2014.11.09
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】教育委員会 [ 新藤宗幸 ]価格:820円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)いじめや体罰事件、教科書採択、日の丸・君が代問題…。学校運営をめぐり、頻繁に登場する「教育委員会」とは、いったいどんな組織なのか。学校や保護者とどのような関係にあるのか。また、自治体の首長から教育委員会廃止論が出てくるのはなぜか。見えにくい組織の仕組み、歴史、問題点の全容を解き明かし、抜本的な解決策を示す。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 いま、なぜ、教育委員会が問われるのか(いじめ問題と教育委員会/教育現場との乖離/「教育委員会廃止論」の台頭/「首長vs教育委員会」なのか)/第2章 教育委員会とは、どんな組織か(教育委員会の役割とは/教育委員はどのように任命されるか/エリート教員が支配する教育委員会事務局/学校と教育委員会のあいだー教員評価システムから教科書採択まで)/第3章 教育委員会制度は、なぜ誕生したか(戦後改革と教育の民主化/文部省「生き残り」の謎/「教育統制」のスタート/廃止された教育委員会法ー地方教育行政法案の争点)/第4章 タテの行政系列のなかの教育委員会(確立されるタテの行政システム/タテの行政系列をささえる人びと/教育行政をささえる論理は、妥当だろうか/荒廃しゆく教育ー文科省と首長の二重支配)/第5章 教育を市民の手に取り戻すのは可能かー地方分権と民衆統制への道(市民の手による教育の基礎条件/教育における「政治的中立性」とはなにか/タテの行政系列を廃止する/教育委員会に代わるシステムへ)【著者情報】(「BOOK」データベースより)新藤宗幸(シンドウムネユキ)1946年神奈川県生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了後、東京市政調査会研究員、専修大学法学部助教授、立教大学法学部教授、千葉大学法経学部教授をへて、現在、後藤・安田記念東京都市研究所研究担当常務理事、千葉大学名誉教授。専攻は行政学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)教育委員会とはどういう組織で,委員の顔ぶれと人選,設立の歴史的経緯,改革への展望と,新書といえども非常に骨太の考察がなされています.都道府県,市町村ともに教育委員候補専任のプロセスはブラックボックスであって,首長が議会に提案する際の人物評価や活動歴からは全く分からない.国家主義的な地方教育行政法の作り上げたシステムを,戦後の教育委員会法と比べる時,最も大きな変化は教育委員の任命方法にも増して,地方教育委員会に対する文部省,そして市町村教育委員会に対する都道府県教育委員会の「統制」を制度化したことだ.不思議に思えるのは,教育委員会制度についての教育行政学者の言説が,中央教育行政組織のあり方に及んでいないことだ.教育委員会制度の理想主義の精神の回復や教育統治過程への「直接参加」は,中央から自治体に至る教育行政の構造を根本から変えなければ,実現を見るものではないだろう.地域レベルでの教育委員会制度の重要性をいう教育行政学者も,タテの行政系列を支える人々なのだ.最後に教育の展望が述べられます.教育の基軸におかれるべきなのは,ローカル,ナショナル,グローバルの関係性をバランスよく教え,相互の重要性を理解できる基礎学力と感性を涵養することであるといえよう.もちろん,日本における公教育としての学校教育だから,当然,日本の言語,歴史,文化の教育・学習が中心となる.それは日本人のみではなく日本に暮らす外国人の生活にとっても,不可欠な知識である.ただし,強調しておきたいのは,それを多角的視点から教育することだ.特に,教科書無償化問題に触れ,教育を受ける権利の根幹とは,教育内容の自己決定権でなくてはなるまい.教科書の決定権が誰にあるのか,決定権はいずれも子供たちの学習状況などを踏まえた教員,学校,自治体教育行政にある.教科書を子どもたちに無償供与するか無償貸与するかは,教育内容の自己決定権に付随する財政責任の問題であり,順序は逆ではないのだ.--------------------------------------今まさに中教審で道徳の特別教科への位置付けについて議論がなされているところです.中教審答申を受けた下村文部科学大臣は、「今回の答申を契機に学校での道徳教育の充実を図るのはもちろんのこと、家庭や地域との連携を強化して社会全体でこれからの時代を担う子どもたちのよりよく生きる力を育成することができるよう力を尽くしていきたい」と述べた.(NHKニュース)その背景には,いじめの問題が大きいとされていますが,本質はもっと違うところにあるのではと思います.道徳の教科書が作られますが,ここで国による価値観の押し付けにならないかが懸念されます.多様な価値観を認める社会の実現こそこれから求められる教育のあり方なのではないかと思います.
2014.10.22
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】社会保障亡国論 [ 鈴木亘 ]価格:907円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)政治家・官僚が絶対言わない本当の話。消費税10%でも、「焼け石に水」という現実。数字で見る社会保障の構造と財政赤字の問題点とは。世界最速の少子高齢化を乗り越えるための処方箋!【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 財政から語る社会保障/第2章 社会保障の暗黙の債務は一五〇〇兆円/第3章 社会保障と税の一体改革、社会保障制度改革国民会議/第4章 年金支給開始年齢は七〇歳以上に/第5章 高齢化社会の安定財源は消費税ではなく相続税/第6章 公費投入縮減から進める給付効率化/第7章 消費増税不要の待機児童対策/第8章 「貧困の罠」を防ぐ生活保護改革/第9章 改革のインフラ整備と仕組み作り【著者情報】(「BOOK」データベースより)鈴木亘(スズキワタル)1970年、兵庫県神戸市に生まれる。経済学者。専門は社会保障論、医療経済学、福祉経済学。上智大学経済学部卒業後、1994年日本銀行入行。1998年日本銀行退職。大阪大学大学院にて経済学博士号取得。大阪大学助手、大阪大学大学院助教授、東京学芸大学准教授等を経て、学習院大学経済学部教授。現在、大阪市特別顧問(西成特区構想担当)等を兼任。著書に『生活保護の経済分析』(共著、東京大学出版会、日経・経済図書文化賞)、『だまされないための年金・医療・介護入門』(東洋経済新報社、日経BP、BizTech図書賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)書きっぷりがセンセーショナルで,最初に社会保障費の増大にかかる絶望的な試算を示したうえで,それを回避するための処方箋を解説しています.本書で興味深かったことは医療産業の特殊性の部分です.医療はあらゆるサービスのなかで最後の聖域とされてきました.かつては,効率化,コストカットのために手を付けるなどということはタブー視される側面もあったように思います.その理由の一つとして考えられるのが,日本の医療産業は,参入規制が非常に厳しいことです.医療産業の中心である病院の開設は,自治体や医療法人などに限られており,その限られた病院のベッド数も,「病床規制」として,行政に完全にコントロールされています.つまり,医療産業は,「価格」と「参入」という産業として最も重要な要素が,両方とも規制されているのであり,「競争」による切磋琢磨で,創意工夫や技術革新が起きる余地が少ないと考えられます.それにもかかわらず,こうした厳しい規制が維持されている主な理由は,医療の「平等性を保つ」ということにあります.この場合,保たれているのは当然ながら,患者間の平等ではなく,医療機関の間の平等です.しかし,「平等性を保つ」ためには,質や効率性の高い医療機関の方に基準を合わせることはできませんから,質や効率性の低い病院や開業医でも経営が成り立つように,「護送船団方式」によって,一番低いところに合わせて平等な料金が設定されます.しかし,これではサービス水準の低い病院が開業医が,相対的に高い料金を付けることになってしまいますから,患者の不満が募ることになるでしょう.そういう理由もあってなのでしょうか,日本では医療保険に対して多額の公費投入が行われ,患者の自己負担や保険料を非常に安くして,患者からの苦情が出にくい構造が作られています.もちろんそれ以外にも,医療機関には,消費税課税をはじめとする税制面での優遇や,施設整備に対する各種補助金,助成金も多数存在しており,医療産業には公費による手厚い「産業保護」が行われているのです.------------------------------中村(2013)で検討したのも,まさにこの医療の特殊性にあたる部分です.医薬品の流通を対象にしましたが,護送船団方式として,地域薬剤師会が出現して政治力を発揮していました.医療機関の平等性に焦点を当てるなら,一番質や効率性に劣る部分を基準にすることは理解できます.これを仮に患者の平等性に焦点を当てたとしたら,質や効率性の高い部分にリソースを集中的に投入する一方,それらが低いものについては廃止も含めてある程度の効率性を重視する姿勢もありうるのではないかと思います.費用対効果を常に考えない財政支援は,回り回って将来世代への医療費負担として転嫁されていきます.このことをあらゆる世代が本気で考える時が来ていると感じます.
2014.10.18
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】流通大変動 [ 伊藤元重 ]価格:842円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)流通業界ではメーカー(上流)、問屋(中流)、小売(下流)の垣根がなくなり、チャネルリーダーのポジションをめぐる戦いが激化している。壮絶な主導権争いは消費者にどのような影響を及ぼすのか。30年間にわたって流通の現場を歩き、「ウォーキング・エコノミスト」と呼ばれる経済学者が、マクロとミクロ両面の視点から大きく動き始めた日本経済を見通す。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 流通から見えてくる日本経済/第2章 なぜセブンーイレブンはミールサービスを始めたのか/第3章 アジアが日本の流通を変えたーユニクロの成功の秘密を探る/第4章 そうは問屋が卸さないーいま中間流通に何が起きているのか/第5章 情報通信技術で変わる日本の流通/第6章 都市の変容とともに小売業も変わる/第7章 チャネルリーダーの地位を確保せよ/第8章 アジアの需要を日本の内需に/結びにかえてー流通の現場は刺激に満ちている【著者情報】(「BOOK」データベースより)伊藤元重(イトウモトシゲ)1951年生まれ。東京大学経済学部卒業。米国ロチェスター大学大学院経済学博士号取得。専攻は国際経済学。東京大学大学院経済学研究科教授、総合研究開発機構(NIRA)理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)一般向け新書なので読みやすいですが,内容が浅い部分が多いことは否めません.それでも詳しい解説を海外事情を中心にしている個所はおもしろかったです.まず,中間流通業者である問屋の生き残る手段について解説した部分.米国の医薬品卸であるカーディナル・ヘルスの事例です.競合他社との製品差別化が難しいなかで,「Follow the pill」=自分の売っている商品を追うことを実践しました.営業マンが病院の在庫管理ニーズをみつけたり,盲腸などのキットにして機器を届けたりするなど,病院がありがたいと思うサービス=ソリューションを提供して利益を伸ばしました.印象的なのは,チャネルリーダーの地位を誰が確保できるかという点です.従来はメーカーの地位が強かったものの,その地位が切り崩されていったのが現在までの構図です.メーカー流通で成功したのは,流通チャネルごとにブランドをうまく使い分けてきた資生堂,強力なディーラー網で強い販売力を持つトヨタ自動車,自ら問屋機能を持って販売強化を推進する花王,系列店の構築で販売拡大したパナソニック(かつての松下電器産業)などです.その背景にあるのはメーカーによる商品の価格維持戦略です.代表例が大衆薬です.大衆薬には,大正製薬や佐藤製薬のように,問屋を通さないで自ら薬局へ商品を供給する直販メーカーと,武田薬品や三共製薬(現在の第一三共)のように問屋を経由して商品を流していくメーカーがある.ここで,一昔前のデータと断ったうえでそれぞれの小売りマージンが示されていました.直販メーカーの小売マージンは60%近くになっていたのに対して,問屋を経由するメーカーの商品は30~40%であったという.直販の方が小規模多数の小売店への中間流通に経費がかかる分,できるだけ商品を多く売る必要がある.再販商品の品目が減少した今,こうした構図は,現在のメーカー品とPB商品に変わっているような気がします.このように流通の現場には経済の真理が隠されているというのが本書の主張です.同様に,流通の現場には,地理の真理が隠されています.自身の研究においては,今後は地方都市の従来型の流通の維持可能性を,都市型流通との対立軸で検討していくつもりです.
2014.10.16
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岩波新書 青版【1000円以上送料無料】コンプレックス/河合隼雄価格:820円(税込、送料別)「コンプレックス」という言葉は日常的に用いられるが、その意味を正確に理解している人は少ない。それは、現代なお探険の可能性に満ちている未踏の領域、われわれの内界、無意識の世界の別名である。この言葉を最初に用いたユングの心理学にもとづいて、自我、ノイローゼ、夢、男性と女性、元型など、人間の深奥を解き明かす。いろんなタイプのコンプレックスを実例を交えて解説しています.また,夢が内在しているコンプレックスの表れとして,夢の内容と解説もなされています.コンプレックスは,新しい仕事を遂行するための糸口ともなろうとユングは述べている.ともすれば小さく固まろうとする自我に対して,コンプレックスという発展の糸口(苦難でもある)をつきつけ,自我がより高次の統合性を指向してゆくようにするプロモーター,それが自己なのである.-----------------------------------コンプレックスは誰にでもあります.問題はその程度です.現代はあらゆる可能性が自由に開けています.そこで自己実現を自分の責任において果たしていく必要に迫られます.自己実現における自我の役割を強調しつつ,それでもコンプレックスと対決するには,自我が十分に強くなければなりません.コンプレックスを拒否したり,回避したりすることなく,それとの対決を通じて,死と再生の体験をし,自我の力をだんだんと強めていくことが自己実現の過程なのだと説きます.コンプレックスを解消するとは,コンプレックスを認め,それも含めて自分なのだという自己確立の過程なのだと理解しました.自分自身にもコンプレックスが自我に支配されていた時期があったように思います.それでもあるがままに生きようとすることで,自我を強く鍛えた記憶があります.今でもなんとなく気が合わないとか,関わりたくないといった他人への感情が起こることがありますが,それはきっと自分のなかにあるコンプレックスがさせていることなのかもしれません.このなんとなくの答えは,自分の心の中に潜んでいるかもしれないということでしょう.
2014.10.10
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】南海トラフ巨大地震 [ 石橋克彦 ]価格:1,944円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)必ず来る「西日本大震災」にどう備えるか。大災害を繰り返してきた南海トラフ巨大地震の歴史記録を徹底検証し、その発生機構に独自の視点で迫る。都市型震災の脅威を『大地動乱の時代』で予見し、自ら造語した“原発震災”の警鐘を鳴らし続けてきた地震学者が「地震に強い社会」を根底から問う。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 南海トラフ巨大地震の歴史(くり返し発生した巨大地震/昭和の南海トラフ巨大地震/幕末の南海トラフ巨大地震/近世の南海トラフ巨大地震/中世の南海トラフ巨大地震/古代の南海トラフ巨大地震)/第2章 南海トラフ巨大地震の科学(フィリピン海プレートの沈み込み/地震と津波の正体/政府を想定した最大クラスの南海トラフ巨大地震/南海トラフ巨大地震の原動力を問い直す/過去の南海トラフ巨大地震の震源像)/第3章 南海トラフ巨大地震と社会(南海トラフ巨大地震の被害想定/巨大な危険施設ー原子力発電所とリニア中央新幹線/超広域複合大震災の時代にどう備えるか)【著者情報】(「BOOK」データベースより)石橋克彦(イシバシカツヒコ)1944年神奈川県生まれ。東京大学理学部地球物理学科卒業、東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学、東京大学理学部助手、旧建設省建築研究所国際地震工学部室長、神戸大学都市安全研究センター教授などを経て、神戸大学名誉教授。中央防災会議専門委員、原子力安全委員会専門委員、国会東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員などを歴任。専門は地震学、歴史地震学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)筆者独自の仮説を提示しているところが本書の特徴です.過去の史料なども踏まえながら,地震学の知見も生かして,過去の地震がどこで起こり,その原因が何であったのかを一つ一つ検証しています.特に南海トラフ巨大地震の原動力として「アムールプレート東縁変動帯」仮説を提示しています.その原動力はフィリピン海プレートの沈み込みだけではなく,アムールプレートの東進も重要だと考えられます.アムールプレートは1981年にソ連の研究者が提唱した極東のマイクロプレートで,バイカル湖を北西縁,スタノボイ山脈付近を北縁とする.結論として,アムールプレート東縁変動帯仮説は3・11東北沖地震の後の日本列島の広域的変動も基本的に説明できるといいます.第一に,サハリン・北海道沖を含む日本海東縁変動帯と西南日本衝突域の広い範囲のどこかで,今後も東西圧縮力による大地震が起こる可能性がある.第二に,南海トラフの超巨大地震の震源域が駿河トラフから富士川河口断層帯を経て,糸静線断層帯にまで延びる可能性が考えられる.今後の備えとしては,原発対策(再稼働への疑問)が重要です.四国電力伊方原発の3号機が再稼働に向けて「新規制基準適合性にかかる審査」を受けており,やがて合格しそうだという.だが,伊方も南海トラフ巨大地震の震源域の上にあるといってよく,ここで原発を運転するのは無謀なことである.----------------------------大地震の想定がいかに科学的根拠の少ないなかで仮定に仮定を重ねたシュミレーションに依存しているかが分かりました.今後はその予測に頼りすぎず,どんなに大きな災害が起きた時でもできるだけ短い時間で災害復興できるような態勢を整えるかを考える必要があります.高知は地震と津波,その他の災害でも容易に陸の孤島になることが想定されますが,これまでに構築された平時の広域流通システムで対処しきれない部分も大きいかと思います.普段は無駄の多い冗長性を含んだ狭域流通システムが,非常時には以外と効果を発揮するのではないかと思ったりしています.
2014.10.07
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】蟹工船/党生活者改版 [ 小林多喜二 ]価格:432円(税込、送料込)海軍の保護のもとオホーツク海で操業する蟹工船は、乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。“国策”の名によってすべての人権を剥奪された未組織労働者のストライキを扱い、帝国主義日本の一断面を抉る「蟹工船」。近代的軍需工場の計画的な争議を、地下生活者としての体験を通して描いた「党生活者」。29歳の若さで虐殺された著者の、日本プロレタリア文学を代表する名作2編。話題の本をようやく読みました.本当にあった話かどうかは不明ですが,過酷な労働環境であったことは事実のようです.室戸で聞いた話も似たような内容でした.新自由主義が浸透していく中で,プロレタリア芸術運動の推進者として評価されるべきと思いました.文学をはじめとする芸術は世の中でなかば常識とされる考え方,価値観に対して警鐘を鳴らすという役割があるように思います.そこに隠された本質があるのであり,これらを排除しようとする権力にも屈しない態度はもっと評価されていいように思います.立場・仕事の内容は違えど,自分自身もつねにそうありたいと思います.
2014.10.02
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階級都市 格差が街を侵食する価格:907円(税込、送料別)「格差」が問題視されるようになって、はや数年。ついに格差は、風景にまで現出してきた。小さな木造家屋が建ち並ぶ下町に、富裕層向けマンションが建設され、昔ながらの街の景観は破壊される。同時に、地域間の格差は拡大し、富めるものは富める地へ、貧しいものは貧しい地へと、振り分けられる。そして、「山の手」「下町」といった歴史的な境界線は、都市をより深く分断する。まさに「階級都市」の出現である。本書では、理論、歴史、統計、フィールドワークなど様々な視点から「階級都市」の現実に迫る。目次 : 第1章 風景としての格差社会/ 第2章 なぜ「階級都市」なのか―都市構造と資本主義/ 第3章 異国の風景―「下町」と「山の手」の言説史/ 第4章 進行する都市の分極化―統計でみる階級都市/ 第5章 階級都市を歩く/ 第6章 階級都市から交雑都市へ久しぶりに骨太の新書を読んだ気がします.都市社会学ですが,地理学の成果もかなり引用されていて非常に読みやすかったです.特にカステルの成果に言及した部分は印象的です.カステルは都市を資本主義の社会構造の中に明確に位置づけることができると考えた.労働者は消費活動を通じて再生産されるが,消費活動には個人的消費と集合的消費の二種類がある.個人的消費とは,人々が主に家庭で,自分の所有する消費手段を消費することである.これに対して集合的消費とは,大規模な住宅地や集合住宅,道路や鉄道,学校・病院,文化施設など,公共的な性格を持つ消費手段,つまり集合的消費手段を消費することである.産業の発展によって,大量の労働力が必要になると,もはや労働力の再生産を,個人的消費だけで賄うことはできなくなる.こうして集合的消費の必要性は高まり,大量の集合的消費手段が用意されるようになる.この供給量や利用のしやすさで都市に格差が生まれるというものです.こうした理論的背景を軸にして,実際に東京23区を中心とした下町と山の手の格差について実証していきます.ここで山の手とは標高20m以上の閑静な場所が多い台地を示し,下町とは神田,日本橋,京橋,下谷,浅草等の商人たちが集まったエリアです.社会的地位や風俗なども明確に分かれており,戦後山の手と下町との格差はますます広がったといいます.さらに興味深いのは両者の地域間格差のみならず,地域内の格差にも焦点を当てていることです.両者の格差ともに拡大していることが統計調査により明らかにされます.都心四区は,旧下町地域を中心にジェントリフィケーションが進行し,旧中間階級とマニュアル労働者層が駆逐されて,富裕層が住む地域としての性格を強めてきた.下町は,都心に近い部分と臨海部でジェントリフィケーションが進行し,新中間階級の比率を高める一方,貧困層の集積が進んでいる.山の手は,古くからの住宅地を中心に多数の豊かな新中間階級世帯を含むが,労働者階級の構成比が急増していることから,その内部にはかなり大きな格差が存在している.このように都心四区,下町,山の手はそれぞれ,内部に大きな格差を含み,また格差の構造を変化させているが,相互の間の格差構造には基本的に変化がなく,むしろ拡大傾向にある.こうした地域内格差と地域間格差の積み重ねによって,東京は分極化を進行させてきたのである.その後の章では世田谷の下町と山の手(三軒茶屋から下北沢)を歩いたりしています.かつて住んでいた場所に近いと格差を実際に感じます.大田区も同様です.蒲田・大森と田園調布が同じ大田区というのが信じられません.川崎市も東西に細長いので沿岸部から丘陵地まで見てみると景観上の違いが一目でわかります.このように階級都市という観点から多様な東京のすがたをあぶりだした本書は,今後講義をする上でも大変参考になりました.
2014.09.08
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【送料無料】地政学入門 [ 曽村保信 ]価格:756円(税込、送料込)・発売日:1984年03月・著者/編集:曽村保信・出版社:中央公論新社・サイズ:新書・ページ数:219p・ISBNコード:9784121007216各国の地政学の展開を影響力のあった人物の考え方をもとにひも解いています.イギリスはマッキンダー,ドイツはハウスホーファー,アメリカはモンロー主義,そして最後にソ連や南米などの諸国の外交戦略をみています.結局,これらは各国の国際関係に基づく外交の基本的な戦略を読み解いていると言えます.国際情勢は現在,大きく変わっていますが,それでも中東やアフリカが地政学的リスクを抱え続けていることを指摘した点は変わっていません.ドイツの地政学(ゲオポリティーク)について書かれた一文があります.--------------------------ゲーテの推薦でワイマール市教会の主任牧師になったヘルダーは,「地理の美と効用について」と題した講演の中で「地理の研究は自然史および諸民族の歴史と不可分の関係にあり,政治,文化,教会,国家等の歴史もまた,地理の背景を欠けば,ほとんど空中楼閣に等しいものになってしまう」といった.思うに,ドイツ人の地理学に対する執念は,このようなところから始まっているので,それがやがてラッツェルの政治地理学となり,ゆくゆくは外交政策の代用品としての地政学(ゲオポリティーク)ともなったわけである.--------------------------アメリカが中米地域を大西洋と太平洋を結びつける場所として重要視していること,ドイツ民族が北欧に対するあこがれの感情を抱いており,その地理的関係から領土の拡大に腐心し続けてきたことなどが説明されています.一方,日本は地政学を戦争の道具として利用しようとする政治力学に地理学者が加担したという反省を踏まえて,戦後では地政学あるいは政治地理学が地理学の一分野としてあまり活発ではない印象です.そして現在,日本の外交の基本方針が表からはよくわかりません.その時々の国際情勢に対して,場当たり的な政策対応をするのみで,一貫した方針がないようにも見えてしまいます.今後安倍政権下での外交戦略に潜む本質を見極めていかなければなりません.
2014.09.04
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】やっぱり変だよ日本の営業 [ 宋文洲 ]価格:700円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)「顧客は神様」と言いながら、社員にノルマを強要。読まれない日報を熱心に書かせる上司。世界一の通信技術を持ちながら「足で稼ぐ」-。やっぱり変です、日本の営業。精神論だけでは営業は成功しない。勝つ営業には、組織的な戦略を持った経営論が必要なのだ。ソフトブレーン創業者が、旧来の常識や習慣を明快に一刀両断し、組織的なプロセス・マネジメントへの改革論を展開したベストセラー。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 やっぱり変だよ、日本の営業マンの姿(あなた方は害虫よ/エリート営業マンの「凄腕」 ほか)/第2章 営業のたくさんの「なぜ」(なぜ、日本製品は売れたか/なぜ、営業のせいにするのか ほか)/第3章 真実に目を向けよう(裸のモノ作り企業/顧客は神様ではない ほか)/第4章 効率的な営業を実現するために(eセールスマネージャーの使命とは/CRM、SFAという仕組み ほか)/第5章 常識や習慣にとらわれないために(ストーン・キャット/東京は米国の二個分 ほか)【著者情報】(「BOOK」データベースより)宋文洲(ソウブンシュウ)ソフトブレーン(株)マネージメント・アドバイザー。1963年中国山東省生まれ。85年に北海道大学大学院に国費留学。天安門事件で帰国を断念し、札幌の会社に就職するが、すぐに倒産。学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、92年28歳の時にソフトブレーンを創業。98年に営業など非製造部門の効率改善のためのソフト開発とコンサルティング事業を始めた。05年6月東証1部上場。06年8月会長を退任し現職に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)外国人であるからこそ客観的に日本の営業の特殊性を論じられていると思います。IT業界の慣行についても持論を展開しています。営業の本質は「売る」ことではなく「知る」ことにあります。「今,何が起きているか」「何を提供すれば顧客が得するか」を知ることが,営業の本質です。ITは本来,「最先端の通信技術を用いたビジネスの新しいやり方とスタイル」を意味します。「仕事の仕組み」と「プロセスのあり方」に重点を置き,「存在」である技術はあくまでも道具にすぎません。日本の経営者にはITを技術問題だと勘違いし,分からないことを自慢する人がいます。これは大きな間違いです。ITは経営理念の問題です。その理念を理解しないで現場任せで導入しても,期待するほどの効果が出ないのは当然です。戦後の日本製品が世界のブランドに慣れた理由の一つは,QC(品質管理)運動にあります。いまのIT は直訳すれば「情報技術」となってしまいますが,実はITはQCと同じく,技術ではなく経営理念なのです。「いかに今の情報通信時代に会う経営を行うか」という経営理念です。-------------------IT業界のハードウェア重視の営業活動の背景は,経済界(経団連)がモノづくり重視の産業構造で成長してきた自負があることも大きいように思います。提供側も顧客もそうした戦後の高度経済成長期の成功体験に縛られているのではないか。現在では,ハードそのものの性能よりも,データ分析・加工による自社利益率向上を目指すソフトウェア=ソリューションが重要です。自身の研究対象である医薬品業界や医療業界にそのまま当てはまりそうです。営業もITツールを使いこなした新たな展開が模索されています。地域医療連携システムはいまだに互換性が十分でなく,ハードウェアメーカーによる自社独自の電子カルテをベースとした販売活動を続けています。医師を金のなる木とみた,囲い込みの営業がまだ有効だということかもしれません。しかし,今後はシステム互換性を前提とした顧客にとって真に操作性が高く収益構造改善や地域の医療ニーズに順応したソフトウェアづくりが求められます。そうでなければ,これまで通り,システムの有効性を検証しつつ,莫大な医療費の一部がシステム開発・構築のための人件費に当てられ続けることになります。そういう意味では,医療業界はIT屋や営業にとって規制によって保護されていた最後の聖域だったとみなすこともできます。
2014.08.09
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教師格差 ダメ教師はなぜ増えるのか 角川oneテーマ21 / 尾木直樹 【新書】価格:843円(税込、送料別)今、教師たちは自信をなくして次々と倒れ、“教師崩壊”が起きようとしている。なぜ教師はここまで追いつめられたのか? 過酷な教育現場の実態や、ますます低下する教師力への実践的処方箋を綴った、本当の「教育再生論」。〈尾木直樹〉1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業。教育評論家。法政大学キャリアデザイン学部教授、早稲田大学大学院客員教授、臨床教育研究所「虹」所長。著書に「新・学歴社会がはじまる」など。政府が行おうとしている教育改革についてかなり批判的な立場です.教師が置かれている状況を十分に理解しているからこその提言がみられます.たとえば,教師たちが社会人としての幅のある市民生活を過ごせていないことが,そのまま学校での学習指導力の低下にもつながっていることを暗示する分かりやすい例をあげています.2002年から段階的に,小学3年生から高校生までを対象とした「総合的な学習の時間」が取り入れられたときのこと.総合学習は,学校・家庭・地域が連携した体験学習などを通して,環境問題や,福祉・健康問題を学び,国際化・情報化していく社会の実情を学んでいこうとする教科です.これは,変化の激しい時代の中で生きていく子どもたちの”社会の中で生きていく力”を育成しようという目的で創設された,社会に開かれた学習教育です.これからの学力でもあります.各地でいろいろな体験的学習が行われていますが,テーマ設定やその背後にある問題意識など,教師の目の付け所がずれていれば,生徒にしても何をどのように学習すべきなのか分からなくなるのも当然です.他教科を学ぶ時間を割いて行われる総合的学習が学力低下とつなげて語られることも多く,「縮小・廃止すべき」という強い批判の声も聞かれるほどです.社会に開かれた学習内容を保証するためには,教師自身が社会に開かれていなければならないのは当然です.こうした場面での指導力が問題視されるのも無理からぬことです.一方,教師の権威はかつてほどではなくなっています.文部科学省や教育再生会議などから,「毅然とした指導を」するようにと促されていることを見ても,教師の権威の低下がうかがえます.子どもを叱るばかりが教育ではありませんが,必要に応じて子どもを叱ることができるようになるためには,教師自身が揺るぎのない生き方をしていなければなりません.子どもを叱れない教師が増えているということは,生きる信念を持った教師が少なくなり,ダメ教師が増えてきているということにもなりかねません.それだけでも,「教師力は低下している」と,いえてしまうのです.こうした問題に対して,教育に目標管理型の評価システムなど民間企業で導入されて効果が得られている仕組みを導入する動きがあります.これに対して,尾木氏は教育の直接性が必要であると説きます.それは教育の本質から導き出されていることです.つまり,教師の教育実践は,その専門性と両親に依拠して,子どもの発達保障と人格の完成という二つの目的にのみ服するからです.このような特殊な本質を有する教育実践には高度な専門性が必要ですから,時の政治権力や行政官僚の「不当な支配」の下におかれてはなりません.したがって,教師は今日,批判を浴びるような独善性や閉鎖性に陥ってはならないのです.つまり,「国民全体」の意思に従うためにこそ大胆に学校を開き,父母や地域と共同した実践を展開する必然性が存在しているのです.では保護者が教師に求めている条件は何か.NHK「少年少女プロジェクト」の調査によると,保護者たちが,授業の分かりやすさについても重視しているのは確かなようですが,やはりそれ以上に,子どもの心を理解でき,いじめや非行などを防いでくれる教師を理想として望んでいることは事実のようです.----------------------------教師の置かれている厳しい実態がよくわかりました.教師の生の声を知っているからこそ,その窮状を少しでも訴えたい尾木氏の思いが伝わってきました.さまざまな政策の根底に子どもの目線が欠けているという指摘は非常によくわかります.教員同士のいじめ,教員評価システムなど成果主義の導入,残業による過重労働,校長や教育委員会のトップダウンによる上意下達など,個々の教員の意思や心がないがしろにされる環境下でどうして子どもの豊かな心が育てられるでしょうか.教育をないがしろにする国に将来はありません.そのことにわれわれはもっと注意を払うべきです.
2014.07.27
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】他人を見下す若者たち [ 速水敏彦 ]価格:821円(税込、送料込)「自分以外はバカ」の時代!●自分に甘く、他人に厳しい●すぐにいらつき、キレる●「悪い」と思っても謝らない●泣けるドラマや小説は大好き●無気力、鬱になりやすい若者の感情とやる気が変化している!現代人は自分の体面を保つために、周囲の見知らぬ他者の能力や実力を、いとも簡単に否定する。世間の連中はつまらない奴らだ、とるに足らぬ奴らだという感覚を、いつのまにか自分の身に染み込ませているように思われる。……このように若者を中心として、現代人の多くが他者を否定したり軽視することで、無意識的に自分の価値や能力を保持したり、高めようとしているーー<本文より>ストーリーは単純明快です.ただ結論に導くための調査設計が甘いような気がします.限られたバイアスのかかった集計データから,推測がかなり入った考察をしているのでミスリードのおそれがあります.いかなる心理的側面が他人を見下す背景にあるのか,についてはもっと慎重に議論をすべきかと思いました.例えば,筆者は仮想的有能感(他者軽視)という概念を提示し,若者だけでなく,すべての年齢層に広がっていることを論じた.しかし,自尊感情が低いのに仮想的有能感の高い,いわゆる仮想型という有能感タイプは,明らかに若い人ほど多い.これがどの世代でも繰り返される発達的,暦年齢的な差異なのか,いわゆる文化差に基づく世代差なのかは,現在のところ不明であるが,言うまでもなく,われわれは世代差的なものが強いと考えている.そして,仮想型の有能感を持つ人たちが,わが国において今後増大すると予想される.一方,年配層も問題がないわけではない.自尊感情も仮想的有能感も高い全能型が占める割合が現在の時点で多いのである.自分を過信して他者を見下す50台,60代は確かに少なくない.筆者の印象で語られる部分も少なくないし,世代差が生まれる要因については教育される側の問題か,教育する側の問題か,特定のコーホートが置かれた時代的背景によるものか,判別が難しいなかで推測の議論がどうしても多くなる.若者に対する解決策として,1.本当の意味でのしつけ,2.自尊感情の強化,3.自由にコミュニケーションできる場を増やす,が挙げられる.自尊感情を強化するだけでは,現在の高齢層が抱く全能型に近づくだけであろう.子どもに対するしつけというよりは,親への教育のあり方が問われているのではないか.子のストレスは親のストレスを受けている.ストレスは弱い立場に置かれているものへ移転していく.そうした構造的な問題が横たわっているのなら,若者が個人で対処できる方法はそれほど多くはないのではないかと思います.
2014.07.16
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】破戒改版 [ 島崎藤村 ]価格:724円(税込、送料込)内容紹介明治後期、部落出身の教員瀬川丑松は父親から身分を隠せと堅く戒められていたにもかかわらず、同じ宿命を持つ解放運動家、猪子蓮太郎の壮烈な死に心を動かされ、ついに父の戒めを破ってしまう。その結果偽善にみちた社会は丑松を追放し、彼はテキサスをさして旅立つ。激しい正義感をもって社会問題に対処し、目ざめたものの内面的相剋を描いて近代日本文学の頂点をなす傑作である。[付・北小路健「『破戒』と差別問題」]内容(「BOOK」データベースより)明治後期、部落出身の教員瀬川丑松は父親から身分を隠せと堅く戒められていたにもかかわらず、同じ宿命を持つ解放運動家、猪子蓮太郎の壮烈な死に心を動かされ、ついに父の戒めを破ってしまう。その結果偽善にみちた社会は丑松を追放し、彼はテキサスをさして旅立つ。激しい正義感をもって社会問題に対処し、目ざめたものの内面的相剋を描いて近代日本文学の頂点をなす傑作である。部落問題がテーマとなっていますが,藤村は部落問題そのものを描こうとしたのではなかったようです。あとがきの解説に詳しく記述されています。本人の心情を丑松に重ねて描写しているというのが専門家の見方だそうです。確かにラストは国外に行ってしまうので,問題を回避したというか,時代状況を考えるとどうしても抗えない構造的な問題が横たわってるとも読み取れます。ともかく,自身の内面の葛藤がありつつも,自らの信念を貫いて,社会と折り合いをつけていく過程は読みごたえがあります。他にあとがきには出版に際して全国水平社(のちの部落解放同盟)からの圧力で表現が一部改められた経緯などが記されていました。現在各出版社から出されている内容は原著のままの文章で,逆に改定された本の内容については入手が困難なようです。
2014.06.19
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】有川浩の高知案内 [ 有川浩 ]価格:1,188円(税込、送料込)【内容情報】(「BOOK」データベースより)『県庁おもてなし課』映画公開!原作者みずから舞台・高知のオススメスポットを徹底案内!【目次】(「BOOK」データベースより)ルポ 有川浩と一泊二日/有川浩ミニインタビュー/映画『県庁おもてなし課』の高知案内/特別対談 錦戸亮×有川浩/有川浩オリジナル高知一泊二日プラン&豆情報【著者情報】(「BOOK」データベースより)有川浩(アリカワヒロ)高知県生まれ。2004年、第10回電撃小説大賞“大賞”受賞の『塩の街wish on my precious』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)新任歓迎の若手飲み会にお誘いいただきました。いずれの先輩教員方も個性の強い方ばかりでまとまりがなさそうに見えてなんとなくの一体感が醸し出されていたような気がします。お互い仲がいい証拠なのだと思います。新任ということで最後にお祝いの品をいただきました。県庁おもてなし課の有川浩が1泊2日で高知の観光案内をしてくれるというスタイルです。ガイドブックにも載っているべたな観光地から自然を生かした高知ならではの観光スポットまで幅広く紹介されています。また市内だけでなく,周辺市町村までまんべんなくめぐっているところも好感が持てます。気になるところがたくさんあるので時間を見つけて訪問してみようと思います。
2014.06.18
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きんこん土佐日記 第1巻 / 村岡マサヒロ 【単行本】価格:802円(税込、送料別)著者 村岡マサヒロ(著)出版社 高知新聞社発行年月 2006年04月ISBN 9784875031659ページ数 191P高知新聞に連載されている四コマ漫画の単行本です。お爺さんとお婆さんが中心になって土佐弁で笑わせてくれます。孫のたくみ君とのやり取りもおもしろいです。土佐弁の勉強になりますが,ところどころ意味が分からない部分もあります。高知ネタも入っていて楽しめます。
2014.05.22
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【楽天ブックスなら送料無料】君が踊る、夏 [ 溝端淳平 ]価格:4,103円(税込、送料込)高知を舞台に、余命わずかな少女の夢をかなえようと奮闘する人々の物語を溝端淳平主演で綴る。元恋人の香織の妹・さくらが難病を患っていることを知った新平。さくらと5年前に交わした“よさこいを一緒に踊る”約束を果たそうとするが……。【ストーリー】プロカメラマンを夢見て上京した新平(溝端淳平)は、久しぶりに故郷・高知へ戻ったとき、元恋人の香織(木南晴夏)の妹・さくら(大森絢音)が難病を患っていることを知る。さくらを支えているのは、5年前に新平と交わした「一緒に踊る」という約束。毎年8月に行われている躍動感溢れる本場よさこい祭り、真っ青な空に纏を舞わせる新平の勇姿を、さくらはずっと覚えていた。「最後の夏になってもいい、わたし、踊りたい」と香織は、親友の司(五十嵐隼士)らを巻き込み、解散していた伝説のチーム「いちむじん(高知の方言で一生懸命の意)」の再結成に走り出す。だが、カメラマンになる夢をあきらめかけていた新平に、プロ登竜門である賞を受賞したという連絡が届く。受賞式は、祭りの日。少女との約束か、自分の夢か。大舞台は、すぐそこまでやってきていた・・・。【解説】主人公の新平を熱演したのは、映画、ドラマ、舞台、CFなどで幅広く活動する溝端淳平。妹のために夢を封印する香織に、『20世紀少年』三部作の出演が話題となった木南晴夏。ふたりの親友・司に、ドラマ・映画『ROOKIES』の五十嵐隼士。今、最も注目されている若手俳優三人の共演は、早くも話題となっている。小児がんの一種・MRTKという難病を患う実在の少女をモデルにしたさくらには、『アマルフィ 女神の報酬』の天才子役、大森絢音が挑戦。他に、藤原竜也、DAIGO、高嶋政宏、宮崎美子、高島礼子ら、豪華共演陣が作品に深みを与えている。また、高知の美しい大自然の中でのロケーションや、クライマックスの演舞のシーンは圧巻!心を震わせる。一生懸命に夢を駆ける若者たちと少女の感動物語が、わたしたちに元気と笑顔を与えてくれる!実話が元になっているそうです。ストーリーはかなりわかりやすく構成されています。個人的には高知のロケ地選びがおもしろかったです。踊り子探しのために旧友を訪ねに行きますが,高知の主だった職場へ出かけたり,練習するときに鏡川のそばに集まったり。ひろめ市場や高知城なども当然出てきます。桂浜での練習もありました。お遍路で訪れるお寺は青龍寺でした。さくらちゃんが入院する土佐中央病院は桂浜にある坂本竜馬記念館でした。相当海際にあったのに中央病院という名前だったのが不自然な気がしましたが。高知の魅力を伝えることもこの映画の目的の一つなのかと感じました。この映画のロケ地めぐりのプランも企画されていました。ロケ地めぐり!高知名所案内
2014.04.04
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【3/19 am10:00〜3/20 am9:59 エントリー&対象ショップ2ショップ購入でポイント10倍】【送料無...価格:3,591円(税5%込、送料込)全国が観光ブームに沸く中、高知県庁は観光促進を目的に「おもてなし課」という新部署を設立した。「県全体をレジャーランドに!」という壮大なプロジェクトに関わりながら、掛水(錦戸亮)や多紀(堀北真希)たちが成長していく姿を描いたラブストーリー。DVD版。高知にいながらまだ見ていなかったのでレンタル。さすがに地元だけあってたくさん品揃えされていたけど貸出し中もたくさん。単なる観光案内ではなくて,ラブコメディも入っているので楽しめます。県庁や日曜市などすでに訪れた場所も登場します。それ以外にも沈下橋,高知名物アイスクリンを食べた黒潮ラインや吾川スカイパークのパラグライダーなど,自然を満喫できる観光スポットが出てきます。フィルムコミッションとしてロケ地旅をする企画もできています。高知の魅力が発見できる映画なので訪れる前に一度見ておきたいオススメの作品です。
2014.03.20
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