つぁひ→た~く→らずぴぃのおへや

つぁひ→た~く→らずぴぃのおへや

そのきゅう ~しゅうしょくかつどう~

学校が終わって就職活動を始めたのはいいのですが、日本人である事、女である事というこの2つの事実が冷たく私の前に聳え立っていました。

カナダで就職活動をしようと思った私も無謀だったと言えば無謀だったのかもしれません。しかも、日本人でなくてもいい菓子職人として探したわけですから、雇う側もビザの心配をしなければいけないし、その手続も面倒なものです。

何通もの履歴書を出し、何回も面接に足を運んだものの、結局同じ理由で断られました。たぶんビザの問題がなかったらもう少し楽だったのかもしれません。
そんなことをしているうちに1月も下旬になり、だんだん私も自信をなくし、あと1ヶ月で何も起こらなかったら帰国しよう、と決心しかけた頃、調理学校へ顔を出して、製菓科の先生と話をしました。すると…

「ちょっといい話があるんだけど、行ってみない?」

よく話を聞くと、先生がフォーシーズンズで働いていた時に一緒に働いていたシェフがバンクーバー島の西側にあるトフィーノと言うところで料理長をしていて、丁度菓子職人を探している、との事でした。

「行ってみるだけ、行ってみなよ。」

と言う先生の言葉を信じて、アポを取り、バンクーバーからバスで4時間かけてトフィーノまで行ったのでした。

さて、話は私の先生からすでにいっていて、私の事は私が話す前にずいぶん知っていらっしゃいました。とりあえず厨房を見学させていただき、ついたその日はバンケットがあるから、と言う事で少し手伝わせてもらいました。面接はその翌日。

まずはシェフと面接。緊張しました。でも、このシェフ、若い人材を自分で育てながらいい物を作る事を望んでいらっしゃって、シェフ自身総料理長なのに自らキッチンに立つ自称“Working chef”なのでした。私としては願ったりかなったり。
厳しいけど優しい、と言う人でした。

次にホテルのマネージャーと面接。
私は最初にはっきりと言いました。ビザの手続はとても面倒だし、会社に負担のかかるものだから、やりたくなかったら雇わないで下さい、と。断られて普通だし、それに関しては私は何もできないわけで…

とりあえず、面接は終了し、1週間以内に連絡します、と言われました。

この1週間は長かった。でも、最後の望みだったし、これでダメだったら本当に帰国するつもりでした。あー、私のカナダでの生活もこんな風にして終わっちゃうのかなぁ、なんて思ってみたりして。

1週間後、シェフ自ら電話を下さいました。

「つぁひに仕事してもらいたいと思うんだ。」

と言われた時、

「本当ですか?! 凄すぎる!」

と思わず言ってしまい(笑)、シェフには

「んで、この仕事、引き受けてくれる?」

と言われるまでジョブオファーを受ける返事をするのを忘れていた私(^^;)>
1週間後に来て欲しい、と言われ、1ヶ月前に引っ越してきたばかりのアパートを出る事になりました。

ついに長年思い続けてきた自活生活が始まります。
念願の厨房での仕事。しかもいいシェフの元での修行です。
そして、トフィーノで私を待っていたのは…


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