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2004年09月16日
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カテゴリ: 本、マンガ
「歓喜月の孔雀舞」(夢枕獏/徳間文庫)

 久しぶりに獏氏の短編を購入。十代から二十代と、とてもはまっていた時期があって、私は氏の長編よりも短編を好んでいた。古代インドを舞台にしたものなどは特に好きで、陰陽師も出た当初は「おお」と叫んだものである。(まさかこんなにブームになるとは)ホラーも怖かったし、幻想的な話も素晴らしく、螺旋を巡る不思議な縁にうっとりともした。もちろん、九十九乱蔵・三蔵の話、丹波文七といった肉と骨のぶつかる音が聞こえるような話も、わくわくした。
 けれど、もっとも好きだったのは、氏の描く大気だった。なんと形容したらよいのか分からないが、氏の描く空気、自然。我々と宇宙が一つになるような独特のリズム。あれがとにかく好きでたまらなかった。読むたびに、自分の呼吸と一致するような気がして、目を閉じ、大自然に全神経をとがらせてみたものである。
 雲南や大同、モンゴルなどを旅していて、壮大な自然に感動した時、必ず氏の描く独特のリズム、大気ともいえる何かを思い出していた。ああ、そうだ、あれがここにある、と。
 きっと氏の描く何かが、私の中の何かと、恐ろしいほどに共通するものを持っていたにちがいない。

 さて、というわけで本作品。
 うーむむむ。最初の半分に満ちあふれる近親相姦ネタは正直、ちとつらい。生理的にうけつけないテーマなのだから、どうしようもない。が、後半、特に「檜垣」や「歓喜月の孔雀舞」になると、私の好みのネタでぐいぐい引き込まれた。独特の、あの文章のリズムはやっぱりものすごい。描かれる美しくもあり恐ろしくもあり、神々しくもあれば凄絶とも思われる光景。ああいった視覚的、聴覚的な描写は、やっぱりまねできるものではないなあ、と感嘆。

 ハードカバー四冊で買うのをためらっていた新作、どうしよっかなー。文庫まで待てる自信がなくなってきたかも。





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最終更新日  2004年09月19日 18時34分04秒
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