~通過点~   

~通過点~   

理由


それは父が思いがけない病気になったから。
「認知症」
いわゆるボケ、痴呆症だ。

以前からその兆候はあったのかもしれない。
でも私たちは気づかなかった。
歳が歳だけに(78歳=05’当時)多少の物忘れや言動のおかしさは
あって当たり前だと思ってたし仕方ないと思っていた。

ただ、一緒に住んでいる母はその変調に少なからず気づいていたのかもしれない。
でも今思えば、母はその「おかしさ」を認められなかったんだろう。
いまさらそれを考えたところでどうにもならないけれど。

弟が生まれる前から、週末はほとんど実家を訪ね実家で過ごし、
その後、車で一時間ほど離れたこの土地へ越してきてからもその習慣は変わらなかったのに
ここ数年は自分の仕事や子供の用事等で忙しく、週末は疲れ果てて
実家への足も遠退いてしまった。
そんな私の親不孝のツケがこうして回ってきたのかと悔いても遅い。

気づいたのは姉だった。
離婚して、バスで10分ほどのところに住む姉とその子供が
父や母と食事に出かけ、いつものようにお酒を飲み、
楽しく過ごしたんだそうだが、その晩はおかしかった。
有り得ない話を延々と話す。至って真面目に・・・

「パパ、なんかおかしいよ」
その日の夜中、姉が電話をくれた。

大雑把で脳天気な私と違い、繊細で心配性な姉。
私は姉の言葉に耳を傾けてはいたけれど、
心の中では「また考えすぎなんじゃないの」と高をくくっていた。

そして決定的な出来事が。



続く~


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