たぬきぶたの日記2

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冷水峠



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冷水峠



昭和47年(1972)3月26日  高校3年の春休み

九州に入って最初は筑豊本線から撮影開始です。

金も車もない高校生がどうやって撮影地まで行くか分かりますか?

ほとんどが列車ですよね。そうなんです。夜行急行で行くのですが、

大阪発鹿児島行きの急行列車は佐賀県の鳥栖に何時に到着するかです。

深夜の2時です。他にないのです。

筑豊本線は少し北へ戻った原田(はるだ)から分岐しています。

原田から2駅先がこの路線で唯一の山岳地帯です。

冷水(ひやみず)峠です。峠には長いトンネルがあり、トンネルに入る前に

SLは蒸気圧を上げて勾配にいどみます。

原田で降りても時間が余りすぎる。それにトラックも止まってくれません。

そこで、鳥栖まで行きます。

そしてここからヒッチハイクです。これが難しい。夜の夜中にトラックを止めるのですよ。

随分と厚かましい神経と度胸がないとできません。

鳥栖で北上するトラックはなんとか見つかります。幹線道路ですから。

しかし、原田で降りて、その先がなかなか大変です。

車はそんなに通らない。通っても止まってくれない。そりゃそうですよ。

昼間じゃなくて夜の3時か4時のことですから。

何度も手を振って、頭を下げて、頼みまくりです。

今の時代みたいに至る所にコンビニがあるわけでないし、夜露をしのぐ場所がなかった。

なんとか車に乗ることができて、峠の手前あたりに降りることができた。

でも、時間が早い。撮影できる明るさになるにはまだ時間がある。

お腹はすいている。食料はなし。基本的に金がないから食事を省く。

峠の線路沿いに夜露にあたりながら、ひたすら時間が過ぎるのを待つ。

ここでは民家があったので、その軒先を借りた。もちろん黙って。

泥棒とか騒がれてはいけませんから、ひたすらじっと我慢です。

なんてバカなことやってんるんだろう。今の鉄さんがみたら驚くだろうなあ。

はっきり言って、今の鉄さんたちの苦労どころじゃなかった。

自分の足と厚かましい性格とくそ度胸が必要でした。

写真から当時の峠の様子が少しは分かると思います。これです。



3月15日のダイヤ改正で前がDD51に代わっていた。早朝なので

機関車がライトを点灯しています。この列車の前にも何本か列車が

通過したがとても撮影できる明るさではなかった。

せっかくの最初の列車がDD51とはね。少しがっくりです。

嘆いてばかりではいけません。後ろのSLを撮影です。



いい煙を出していますねえ。これが正面だったらいいのになあ。

もう一枚。



D6067号機でした。門デフなのでスマートな感じもしますが、

古めかしいD60には標準デフの方が似合っているように思うのですが・・・

このD60の右側に民家が見えますね。ぼくはここで夜露をしのぎました。

大学の1年の時もここに来たが、そのときもこの民家の軒先でじっと時間つぶし

をしました。SL撮影は忍耐なのです。そして危険と隣あわせ。命がけなんです。

その話は後ほど。鹿児島で事は起こりました。

すぐに、次の列車が来た。(すぐといっても30分以上は間隔が空いています)





旅客列車はD51だった。感激したのが 「なめくじ」 だったこと。

D51は初期型は煙突の後ろがすっぽりと覆われていて、別名

「なめくじ」とよばれていました。数が少ないので、僕は写したのが初めてで

びっくり、感激でした。光量不足でシャッター速度を速くできなくて少しブレ気味です。

普通のD51はこの後に出てきます。比べてください。

さて、注目はこのD51のテンダー部分の落書きです。

分かりますか。この時期は国鉄のストのシーズンなのです。

国鉄だけでなく、賃金闘争は全産業の取り組みなのですが、

国鉄の場合は列車やSLにスローガンを落書きすることが多かった。

このストのせいで、数日後に僕の身に生死を分ける出来事が起こりました。

もうちょっと待っててね。




このときはSLのテンダーだけだったが、ひどいときは客車のサイドにも

白ペンキでべたべたと書いていましたね。

次は普通のD51です。




画面の左に国道が見えます。一応車を持っている人には、

写しやすい場所です。いい煙ですねえ。朝のしめった空気に

煙がとけ込んでいい色を出していました。アップでおまけ。



峠での写真はたったこれだけなんです。次の列車を写す気力が

なかったか、ダイヤ改正でDD51に変更になっていたのか、分からない。

とにかく、ここを離れた。最後におまけ、もう一枚。



この後は直方機関区で記録写真を撮りまくります。

では、冷水峠でした。いい写真がなくてごめんなさい。


( 思い出しました。 腹が減ってしかたがなかったからでした。)




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