たぬきぶたの日記2

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都城で感謝の宿泊


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都城で感謝の宿泊



 <1972年8月1日の夜>

都城駅前で降ろしてもらった。予定より大幅に遅れたが、大雑把な予定なので、別に気にしない。

なんせ、泊まるところも写すところも、一応の予定であって、臨機応変で撮影に来ていますからね。

逆に、昼間の撮影時には、1分1秒が大切でした。ヒッチハイクで乗り込んだ車に、急いでもらったこともありました。

ダメなときは、それなりに対応策を持って、ここに臨んでいますから、なんとでもなります。いや、しました。

なんとでも対応するところが我ながらすばらしい。こんな人材を企業が手にしたら、きっと業績が上がることまちがいない。(笑)


さて、日中の強行スケジュールと好天で疲れがたまっている。

列車で寝る場合の菓子パンと飲み物ではエネルギー不足になります。

たまにはご飯を食べて栄養補給しなければいけません。

余談ですが、だいたい1週間の撮影旅行で、3kg~5kgは痩せるのが普通でした。

今のブタ体型ではなく、骨、皮、筋肉だけの状態からの減量ですから、それはきついものでした。

都城駅前の食堂を探しました。

カウンターがあって、居酒屋を兼ねているような店に入りました。

「へい、いらっしゃい。何にしましょう。」
「え~と、ご飯に漬物は付いていますか?」
「そりゃあ、たくわんが付いていますけど・・」
「じゃあ、ご飯と味噌汁をください。」
「えっ、他におかずは?」
「いえ、いりません。それだけでいいです。」

なんせ、金がない。フィルムには高額な高性能の商品を使っているが、自分の食いぶちには金を掛けるのは、貧乏に育ったおいらにはできないことだった。

「へい、お待ちどうさん。」

出てきたご飯はなんとなく大盛だったような気がする。味噌汁もどんぶり鉢だった。

手にした飯と味噌汁を時間をかけて食べました。

二人連れの隣のおじさんが話し掛けてきました。

「おい、にいちゃんや。学生かい。」
「ええ。」
「それだけで足りるんか?」
「足りないけど、金がないので、仕方ないです。」
「まあ、なんとまあ、かわいそうなこっちゃ。おい、おやじ。この子に何ぞ一品つけてやってくれ。わいがおごるわ。」
「え~っ、いいんですか。ありがとうございます。」

惨めだが、背に腹はかえられない。遠慮なくいただきました。

食べながら、いろんな話をした。小学校まで佐賀県にいたこと。SLを撮影に一人で来ている事。

などなど・・・。

「そいじゃあ、今夜はどこで寝るんや。」
「駅の待合室か、だめなら、ホームのベンチか、軒下で野宿です。」
「それじゃあ、体がもたんぞ。いくら若いというてもな。よし、今夜はおれの家で泊めちゃる。」

まあ、びっくりですね。いくら親切な人とはいえ、そこまでしてもらうのは気が引けます。

僕の返事は、

「いいんですか? そうですか、わあ、嬉しい。お願いします。」

遠慮という言葉はおいらの頭の中には無いみたい。

人の好意を遠慮なく受け取る癖というか、厚かましさが身についたようです。(笑)

ガキのころから、大人と上手に話しができた。尊敬語、丁寧語を駆使して、会話が成り立っていた。

これも才能の一部なんでしょうかね。今ではこの才能をいかして給料をもらっている。

食堂を出て、駅の近くを通って、しばらくして家に着いた。

奥さんに、事情を説明して、部屋に案内された。

ふかふかの蒲団を敷いてくれた。

まさか、撮影旅行に来て、蒲団で寝られるとは思ってもいなかった。

せいぜいが機関区のせんべい蒲団がいいとこだろう。

きたないGパンのまま、蒲団にもぐりこんだ。

Gパンをはいたままは気が引けたが、脱いだらもっときたない。

疲れていたので、すぐに寝てしまった。


熟睡したせいか、朝の4時には目が覚めた。

予定では始発の鹿児島行きに乗ることになっている。

お世話になったお礼を言いたいが、予定の行動をすることにした。

蒲団をたたんで、紙切れに、お礼の言葉を書いて、そ~と、抜け出した。

今回撮影したSLの写真を送って、お礼にしようと、表札の住所と名前を記録した。

この紙切れが行方不明になって、実現しなかった。

この場を借りてお礼申し上げます。

「都城駅の近くの親切なおじさん、ありがとうございました。
 お礼のSL写真をどうぞ。」


当時はSLブームで、全国で何万人ものファンが各地で撮影していたと思うが、

こんな体験をしたのはきっと僕だけでしょうね。

この日のSL写真は次のページに。(霧島神宮付近)




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