デラシネの日録

デラシネの日録

『向田邦子の手料理』(2003年11月)


 大昔の話だが、女友達と話していて、この本の話題になったことがあった。女ばかり、数人の中、この本を持っていないのは私だけだった。しかも、存在もしらなかった。私の料理は見よう見真似といえば、かっこがよいが、実は料理とも言えないようなお粗末なもので、向田邦子さんの料理と比べれば、ほとんど「えさ」みたいなもんである。
 ひとり暮らしをはじめたころ、「ひとりを慎む」という文章を読んで、ぎくっとし、部屋をかたづけ、掃除機をかけたりした。
 女性の間で向田邦子さんは、人気があるらしい。しかし、読んで思うことは、並みの人間ではないということだ。いろんな失敗を書いている。口紅を塗り忘れて、一日すごしたとか。うっかり、親しみやすく思うが、あれほどの仕事、あれほどの楽しみをこなしたのなら、失敗もしでかそうというもの。人生をかけぬけた人ならでは、並みの人間ではこうはいかない。
 阿修羅のごとくが、公開されている。見に行かないと。


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