2009年6月、ヴァンクライバーン国際ピアノコンクールで一人の全盲の若者が
世界を感動の渦に巻き込みました。
辻井信行さん、小眼球症という生まれつきの病気で目が見えません。
ある本で辻井さんの母、辻井いつ子さんのお話が載っていました。
1998年9月13日、信行が生まれたとき、無事に出産を終えた安堵感で
なかなか眠れませんでした。
翌日、授乳室に行きベビー室で並んで眠っている赤ちゃんの中で
信行だけがずっと目を閉じたままです。
何度足を運んでも、ずっと同じような状態でした。
専門の眼科医から真実を知らされたとき、
深い谷底に突き落とされたような衝撃に襲われました。
夢なら覚めて欲しい、誰か嘘だと言って欲しい、
心の中で何度もそう思いました。
それでもなんとかココから脱却しないと、私もこの子もダメになってしまう。
そう思い、信行に音楽を聴かせるようになりました。
ブーニンが弾く「英雄プロポーズ」には手足をバタバタさせて喜びます。
英才教育を施したいという気持ちではなく、少しでも楽しんで欲しいという気持ちで
電子ピアノを与えてあげました。
素晴らしいピアノの先生とのめぐり合い、
本人の努力が重なり、ピアノの腕は上達していきました。
そして2009年、アメリカで開かれたヴァンクライバーン国際ピアノコンクールで
見事優勝することができました。
審査結果のあと、表情を崩して涙ぐむ信行の姿をみたとき、
小眼球症と診断されたときの苦しみ、
ピアノを弾き始めたときの愛くるしい笑顔、
そのひとつひとつが甦ってきました。
そして、信行がインタビュアに答えたメッセージはとてもありがたいメッセージでした。
「もし僕に一つだけ見える目があったら、両親の顔がみたいです。
両親にとても感謝しています」
今や世界的ピアニスト辻井信行さん、
その子を産み、育てた辻井いつ子さん、
自分がその立場になると同じことが出来るか自信がありません。
強い想いで、困難を乗り越える姿勢はとても参考になります。
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