1985オメガのHP

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冷静と情熱のあいだ Blu 辻仁成


辻仁成

初めての彼の作品。彼については、伝聞しか知らなかった。元ミュージシャン、南果歩と結婚、離婚、そして中山美穂との結婚。まあうらやましいといえばうらやましい。芸術的才能はいかほどなのか?と読み始めた。
数ページでの印象はよろしくなかった。表現方法がなじめなかった。そして、主人公を拒絶したい自分がいた。小説と現実、順正と自分。
読み進めていくにつれ、だんだん慣れてきた。小説に入っていけた。辻という作家について、素直に、人間の心のうちとそれを取り巻く関係そして美しい舞台を表現する能力を認めざるを得なかった。
たわいもない過去の約束。別れた女性との約束。
言葉には寿命がある。実際の人生で、それらの言葉―たわいもない約束であり、かわされた愛の言葉―は、寿命を終え、手紙の中、メールの中、そして人の心の中だけで静かに安置される。付随する思い出とともに。
順正は、その約束、その過去をもって生き続けた。
美しい新しい彼女という現実をもそれは超えた。
思い出の中の人に勝てるわけはない。
彼女と別れたことは必然だった。
小説の最後のほうで初めて明かされた、あおいとの別れの理由。
若い当時の彼にとっては、そうするしかなかったのだろう。
そして、あおいは自分の行動の理由を伝えなかった。
なぜだろう?
そしてあおいはでていった。順正が追い出したのであり、あおいがでていったのでもあろう。
順正は、あおいの行動のその理由を知った。
そして、約束の地へ向かった。
それは必然であった。それを説明する理論を探していると、辻は順正の親友、崇に語らせている。
そして約束の地
約束の時間
そして、未来にむけて、順正は動き出した。

現実、そして未来
辻も実生活では再婚相手の美しい女優に子供を生ませながらも、さらに全てを捨てて、新しい人生に入っていった。
もう別れることはない。
もう二度と離さない。

美しい響きの言葉だ。
僕は黙って瞳を閉じるしかない。

この小説、あおいの立場にたった
冷静と情熱のあいだ Rosso
江國香織
がある。それを読み始めたところだ。

「阿形順正は 私の全てだった。」から始まるその小説を楽しみにしている。








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