うりぼうず

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犯罪系


 ★精神鑑定の事件史~犯罪は何を語るか~(中谷陽二、中公新書)
 最近、犯罪と精神鑑定の問題がよく話題になる。この本は、レーガン大統領狙撃事件のヒンクリーの記録や、多重人格と犯罪(数年前、NHKで「存在のなんとかかんとか」というタイトルで大竹しのぶ主演で多重人格者の犯罪がドラマ化されていましたが)、大津事件、津山30人殺しなどを題材にし、精神鑑定の難しさを書いている。
 ヒンクリーに関しては、その後どうなったかを忘れていたが、無罪になっていたとは知らなかった。ジョディ・フォスターに付きまとっていたこと、映画「タクシードライバー」との共通点など、興味深かった。
 また、あとがきで神戸の小学生殺傷事件について、マスメディアで、犯罪、教育の各種専門家、評論家と称する人々が、限られた情報で、好き勝手なことを言うことに苦言を呈しているが、これも納得。これらの無責任な論議が、とんでもない対策を導き出す一因になるのだから。

 ★「19歳の結末ー一家惨殺事件」(祝 康成、新潮社)
 1992年の市川市のマンションで発生した、19歳の少年による一家惨殺。この本が書かれた時点では、二審でも死刑判決が下っているのだが、その後はどうなっているのかちょっと、記憶にない。
 凶悪ではあるが、きわめてずさんな犯罪、しかも、人を殺すことに対する抵抗のなさ。一気に殺してしまうのなら、勢いというものもあろうが、遺体が放置したままのマンションに、何度も出入りし、さらに殺人を重ねるなど、その無軌道さ、無感覚。荒廃していた彼の家庭環境などもあるが、やはり、先天的な犯罪性向があるのだろうか。
 また、何人殺そうと、死刑どころか少年院にでも入れられる程度と思っていたという驚くべき認識の低さ。これは、死刑の適用基準を下げることで抑止できるものなのだろうか。
 現行法では、当然死刑になるケース。永山則夫などに比べても、残虐性などははるかに高い。
 先ほどは、先天的などと書いてしまったが、やはり更生などは不可能なのだろうか。確かに、反省らしきことは語っているが、本質的なところでは反省できていないとも感じられた。

★「こうすれば犯罪は防げる~環境犯罪学入門~」(谷岡一郎、新潮選書)
 いい、悪いではなく、「犯罪者の身」になって、どんな環境が犯罪を誘引するかについて書かれた本。「なぜ、マンションの二階が狙われやすいか」として、1階は、戸締りなど狙われる側が警戒するのに対し、二階にはその警戒心が薄く、それ以上の階は、侵入するのにそれなりの苦労が伴うなど、犯罪者の側にも、それなりの事情があることなどを解説。また、コンビニのレジの位置を少し変えただけでも、(入り口の近くの道路からよく見える位置にする)だけで、強盗が激減した事例などが取り上げられている。
 また、地域を、擬似プライベート的な空間にすることによって、犯意を持った異質な人間が立ち入りにくくする手法などについて、具体的事例をあげながら紹介している。
 「人の身になって考える」って、やっぱり大事なんですね。犯罪者の立場にたって、犯罪者なりの合理性に即して考えることの大切さを教えていただきました。

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