うつっ子、花ちゃん

うつっ子、花ちゃん

同じお部屋のTさん。



 ところがこのTさん、コロコロ転がるんです。ある晩、「助けて!」の声で目を覚ましました。何だ?ゆかに、Tさんが転がっているではありませんか。Tさんの声を聞きつけて、看護師さんが飛んできました。あー、よかった。花は、そのまま入眠しました。
 ところが、しばらくして、がたんっ!とてつもなく大きな音がしました。そして「助けてくだせい。」の声。「あっ、Tさんだ。」看護師さんは気づいていない。言いに行かなきゃ。
 花は、起き上がると、ナースステーションに向かいました。ところが、そうだ、花も低血圧だったんだ。あわてていたせいか、自分のことなど忘れてしまい、ナースステーションに辿り着くまでに、パタリンコ発作を起こしてしまったのです。「いってー。いやいや今はTさんだ。」花はふらふらしながらナースステーションに辿り着きました。「Tさんが倒れてます。」
 看護師さん2人とも、Tさんのところに行ってしまいました。あのね、花も倒れて、頭打ったの。花のこと放っとかないでよ。Tさんは無事でした。
 翌日から、Tさんのベッドには柵が取り付けられ、ポータブルトイレが置かれました。Tさんは、何で倒れてしまうのかいつも看護師さんに訴えていました。「眠剤を飲み始めてからこんなになっちゃったんだよね。」看護師さんは、いつも「先生に言っておくからね。」と言っていました。でも、伝わらないんですよね。花は、Tさんがそう訴えるのを何度も何度も聞きました。でも、眠剤はなくならなくて、Tさんはその後も、よく転がっていました。このままじゃTさん、殺される…。花は、だんだんと心配になってきました。先生、ちゃんと話を聞いてあげてよ。

 それからしばらくして、Tさんの眠剤はなくなり、Tさんが転がることはなくなりました。Tさんは、だんだん元気になって、ひとりで何でもできるようになり、花よりも先に退院していきました。

 Tさん、今頃愚痴ってるかな?「あの眠剤が…」ってね。かわいいおばあちゃん。いつまでも元気でいてね。

それでは、あろはー。

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