虚

本気かそうでないかの区別




    こいつは眠る前いつも白い錠剤を呑む。

   「何なんだ、それ。」

   「錠剤だよ。」

   「俺を馬鹿にしてるのか?」

   「何てことだ。知らなかったよ。馬鹿だったんだね。」

   「お前、とんでもなく俺のこと嫌いだろ。」

   「それこそ、とんでもない。愛してるよ。世界中で下から三番目ぐら

    いには。」

   「・・・・・泣いていいか?」

   「舐めるように慰めてあげるよ。」

   「遠慮する。まだ死にたくないからな。」

   「そんな七面倒くさい事をしなくても君は何時でも死ねるよ。」

   「何で俺が死ななきゃならないんだ。」

   「皆いつかは死ぬよ。」

   ありがたいことに、とこいつはいつものように笑う。

   「で、何なんだよ。その薬は。」

   「遠回しに君には言いたくないって言っているのが分からないのか

    な。」

   「分かってるぜ?」

   「君ってそういう人間だよね。」

   「で、効用は?」

   「永劫の眠り。」

   「・・・・・・・・・・・・。」

   「冗談だよ。」


   こういう時だ。


   こいつののらりくらりとした口調と割と何も考えていない笑みに。


   本気かそうでないかの区別がつかない・・・・・・。






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