虚
サンセツキ <本編> 第一章 9
サンセツキ <本編> 第二章 14
サンセツキ <本編> 第三章 7
サンセツキ <本編> 第四章 2
サンセツキ 【過去編】 9
サンセツキ 2
虚 第一章 26
虚 第二章 6
虚 第三章 1
虚 2
詩 ~月闇と指先~ 30
“Love is behind” 0
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月を、見上げなくなったのはいつからだろうか。 金色にほろほろと降り注ぐ月光の満月も、冷色の蒼白い三日月も。 いつからこんなにも恐ろしく思うようになったのだろう。 十八の春。 高校生活最後の学年の始まりの月は、最低凶悪の忘れられない時になった。 狂夢は、現実になった。 十数年前の、夢の、きざはしが、引き鉄となって。 俺たちは、いったいどこから足を踏み外したのだろう。 消えない『疵』が。 癒えない『呪縛』が。 俺たちを虜にする。 何気ない口先から滑り落ちた言葉も。 朽ちかけて饐えた恋情も。 ・・・・・・・憎悪も。 過去も。 “ソレ”は俺たちを待っていたように突然口を開けた。 “ソレ”は俺たちの過去の汚物だった。 だからこれは。 俺の、この、頬を汚すのは、自業自得の、涙なのだろう。 仕組まれた偶然。 作為まみれの出会い。 突発的な必然。 それでも、惹かれあうように操られたのは----------------------。 始まったのは、償えない『疵』を無尽につくり出す、殺人ゲーム。 ・・・・・俺たちは内心、狂うほどの恐怖を感じながら。 けれど誰一人として自らの生い本心を吐露しなかった。 懊悩も、怒りも憎悪も屈辱も恥辱も恐怖も。 それらに唇を噛み締めて『今』を放り投げ出してしまう楽さを。 知っていたから。 『朱に交われば赤』になる甘さを。 知っていた。 その誘惑を。 (もう、取り返しがつかない・・・・・・。) その怠惰さが、自分の他の全てを破滅させた。 ・・・・・・・・・だから、せめて。 俺は・・・・・・・。 意地でも、前を、見据えていよう。 過去ではなく、ただ、・・・・・・・その先を。
2007年02月19日
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