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アクシデント16


至近距離に顔を近づけて。
暖色の薄暗い明かりの中で彼女は
落ち着いて、俺のくちびるを待つ。
特に緊張した様子もなく
自然体で、目を閉じている。
長いまつげ。
ちょっと上を向いた鼻。
ぽってりとしたくちびる。
陶器のように、すべすべの頬。

もう、躊躇しない。
ただ、くちびるを重ねることだけに
全神経を集中する。
息を詰めて、そっと。

彼女のくちびるは、温かい。
そして、やわらかい。
そっと重ねた後、俺はくちびるを離して
もう一度彼女の顔を見つめた。
彼女の反応を見るために。

やや間があって
彼女の腕が俺の首に回される。
そして
優しく引き寄せられる。
彼女はゆっくりと目をあけて
ちょっと照れたように微笑む。
「もっと、してほしい・・・お願い。」
「うん」
俺は今度はもう少しくちびるに気持ちを込める。
君がほしくなっちゃうよ、それでもいい?
そんな気持ちを、キスに託す。



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