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アクシデント19


「うん」その手をしっかりと握ると
「こうしてると、安心する・・・」彼女はニッコリ微笑んでまた目をつぶった。
そうだね。
俺も、心が暖かくなるよ。
手を伸ばしたら
君がそこにいてくれて、君に触れることができる。
誰かがそばにいてくれる。
それは長いことひとりでいた俺にとって
本当にしあわせで、たぶんずっと望んでいたことだった。

もちろん、誰でもいいわけではない。
ダイナマイトバディで色気ムンムンな女も抱くにはいい。
かいがいしく世話を焼いてくれる古女房みたいな女も楽といえば楽だろう。
でも、心は正直だから
ずっと抱きしめていたい、そんな女を求めちゃうんだ。
ドキドキするだけでもなく、安心するだけでもない
なんていうか・・・
とにかくずっと一緒にいたい。そんな相手。
その人の雰囲気なのかな。
相性みたいなものかな。
君は、それをもたらしてくれる。
出会ってまだ間もないのに
離したくないと、俺の心は感じてしまっている。

理系の大学を卒業して、東京に出てきた。
就職してプログラミングを習得し、SEをしている。
小さな職場だし、まわりは男ばかり。
合コンしても、収穫なし。
Hした子も何人かいたけど、たいがい一回こっきり。
面倒臭く感じて連絡を絶ったり、あっちから逃げられたり。
もうすぐ30になるけど、先なんて見えない。
ただ、今を乗り切るだけ。
レールに沿って、歩いてくだけ。
すごく愛しい相手に、いつかめぐり合うなんて
絵空事なのかもって、半ば諦めかけていた。

でも、こんな形で知り合った君に
こんなにも想いが募るなんて。
君のこと、何も知らない。
名前すらも。独身なのかどうかも。
なのに、どうしてだろう。
自分自身でも、わからないよ。
どうしたらいいのか。
俺、どうしたらいいんだ。

そんなことを考えていたら
いつの間にか、眠りに誘われていた。


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