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玲子4~2人の男~


それも2人きりではなく、慎司が開発部の北山も誘ったということに、私のプライドは傷ついた。

残業の日から1週間ほどじらした後、私は慎司に都合のいい日をメールした。
週末金曜日・・・慎司はきっと食いついてくるだろう、と、たかをくくっていた。
『こちらもその日でOKです。開発部の北山ってわかる?
久賀さんをぜひとも紹介してほしいというので、誘ってやってもいいですか?
久賀さんも、仲いい子がいたら連れてきてもらってもいいですよ。』と、慎司から返信が来て
私は腹が立った。
まるでプチ合コン!同期の男に私を紹介?冗談じゃないわ!
私は一人で行くことにした。

待ち合わせの駅前に、最初に現れたのは北山だった。
ピンクのシャツにシルバーと紺のストライプのネクタイといういでたちで、
汗をハンカチでぬぐいながらやってきた。
「あ、はじめまして、北山です。いやぁ、今日は夏日ですね。」
そう言って人のよさそうな笑顔で挨拶した。
「瀬川は少し遅れるそうです。先に店でビールでも飲んでいましょう。」
北山に連れられて店に向かった。

店に着き、北山と2人で冷えたビールで乾杯した。
「今日は念願叶って久賀さんとご一緒できて嬉しいです。瀬川に感謝しなくちゃなぁ」
「北山さんと瀬川さんとは同期でしたよね。仲がいいんですね。悪友、というやつかしら」
「あははは!悪友、ですかぁ。そうですねぇ。」そういうと、北山はビールをぐびぐびと飲み干した。
「遊びは瀬川になにかと教えてもらっていますよ。アイツは遊び人だから、久賀さん、気をつけなくちゃダメですよ。」
「北山さんも、同じような匂いがするけど・・・」私は意地悪く笑った。
「そうかなぁ、ボクはいたってマジメですよ。」そういいながら北山は店員を呼んで、ビールを注文する。
「北山さんは、結婚しているの?」
「ボクは学生の時分に結婚して、すぐに別れました。若気の到りというやつです。今もひとりですよ。」
そう言って北山は、店の入り口付近に目をやる。
「瀬川が来たみたいだ」

「遅れてごめん。オレも生ね」慎司がスーツの上着をイスにかけながら、忙しなく注文する。
そして私の隣の席に座った。
「あれ、オマエが久賀さんの隣なの?」北山が悔しそうに言う。
「そ。玲子ちゃんの隣はいつでもオレ。ね、玲子ちゃん」慎司が私のことを見て
了承を得るように微笑む。
「会社でも隣なんだから、今日は遠慮しろよ」
「オマエは、玲子ちゃんの顔をしっかり見たいんだろ?正面の方がよく見えるよ。」
「恥ずかしいだろ、そういうこと言うなよ。当たってるだけに」そういって北山は笑った。

私のことをなんのも臆面もなく、さらりと「玲子ちゃん」と呼ぶ慎司は
会社とはまったく違った、少年のような笑顔だ。

アタシのターゲットは、慎司。
屈託のない笑顔の裏の
欲望に満ちた表情が見たい、と、アタシは改めて思った。



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