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玲子41~誠意と責任~


どちらでもどうせ、することは同じなのだから。
ダブルルームでも驚いたりしないのに、と思うと、北山の無駄な気遣いに苦笑した。
でも、北山は、そういう男なのだろう。
もしもアタシがその気を見せなければ、アタシに触れようとはしないだろう。
何かあったのかと、心配そうにアタシの話を聞くだけで、朝を迎えそうな気がする。
でも、もしかしたら今夜に限っては違うかもしれない。
北山は確かにアタシと関係を持ちたがっている。先に進もうとしている。
そうも思えた。

部屋に入ってアタシは、どう出るべきか迷っていた。
「玲子さん・・・」北山が近づいてくる。
アタシの前に立って、瞳でアタシの反応を確かめながらゆっくりと抱きしめた。
「あなたにはじめて会ったときから感じていたんだけど、
あなたは笑っていても、いつもどこか寂しそうだ。その寂しさはどこから来るの?」
アタシは答えなかった。黙って抱きしめられていた。
「言いたくなければ、話さなくていいよ。ただ、俺がその寂しさを埋められないかなぁと、思うんだ」
北山はアタシの肩をゆっくりと押して、ベッドに腰掛けるように促した。
アタシたちはひとつのベッドに並んで座った。
「あなたのそばにいて、あなたの力になりたいと思う。
もっと近くに寄り添っていたいと思う。
あなたは俺をそういう気持ちにさせる人だ。
俺はたいして金も力もないけど、そろそろ誰かに対して責任を持って生きていきたい。
それがあなたならいい、と思っている。」
アタシの目を見つめて、北山は言った。
「前に話したと思うけど、俺は一度結婚に失敗している。
あの頃は、結婚が相手の人生に責任を持つことだという意識がなかった。
お互いに話し合って円満に別れたけど、やはり相手を傷つけたと思う。
今は、少しは成長したと思っている。失敗を繰り返さない自信は、ある」
「でも北山さんは、私のこと、まだなにも知らないわ。そして、私も。だから・・・」
アタシは目を潤ませて、北山の瞳を射抜く。
「こうして今夜、2人きりになりたかったの。あなたはそれを察してくれたんでしょう?」
今度は、北山が黙ってアタシを見つめる。
「どんなに言葉を交わしても、分かり合えない部分があるわ。だから・・・」
アタシから、顔を近づける。そして、北山の唇に自分の唇を、そっと重ねた。
唇を離して、アタシは囁く。「あなたのこと、知りたいの・・・」
北山が、アタシを強く抱きしめる。同時に激しいキスを求めてきた。
これが、北山の、匂い・・・瞬時に熱を放ちだして、立ち昇る、慎司とはまた違った匂い。

北山に押し倒されて、アタシたちはベッドへ倒れこむ。
北山が、夢中でアタシの唇を味わおうとする。
アタシはそれを、受け入れた。
舌と舌が、絡み合う。
服を脱ぎ捨てて、アタシは裸体を見せ付ける。

北山を、捕らえて、堕としてゆく。アタシの意思で。
キモチヨクシテアゲル・・・
ムチュウニシテアゲル・・・
テバナセナクシテアゲル・・・どう?

アタシは真面目ぶったオトコとのセックスなんて、まるで興味ないけど
アンタが言う『責任』とやらを、見せてもらおうじゃないの。
アタシがどんなにアンタを傷つけても、果たしてアンタはそれを全うできるのかしら?
全うできなくても、アタシは傷つかない。はじめから求めていないのだから。
ただ、アンタは傷つくでしょうね。でも、それもアタシを選んだアンタの責任よ。
アンタの言う『誠意』と『責任』が、相手も同等のものを伴うことが条件だとしたら
それは単なるアンタのエゴよ。
それを知るべきだわ、アンタは。

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