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SENPAI 12


大学の構内の木々も、まぶしく輝いてる。青空も澄み切っている。
風も心地よく頬をなでる。
雨の日も、寂しくはなかった。アスファルトに落ちるしずくたちも、軽やかな気がした。
今まで見えていなかったものが見えてくる。世界が明るく開けたようだった。
まったく単純かもしれないけれど。

カナコにも言わずにいた。誰にも秘密にした。このキモチを誰にも分けたくなかった。
私だけのもの。大切な宝物のようだった。

あれから先輩との、週末同棲が始まった。
金曜日の朝、泊まる支度をして大学に行き、バイト帰りに先輩のうちへ向かう。
そして日曜日の夜に家に帰る。
母には一人暮らしをしている友達の家に泊まりに行くと嘘をついた。
父は相変わらず別宅に入り浸り、時々しか帰ってこなくなっていたし、
妹は受験真っ最中のうえに反抗期を迎えていて、家の中は冷え切っていた。
金曜日の朝に母が「友達に渡してあげて」と、果物やら缶詰やら、
パスタやらを持たせてくれるので、胸が痛かったけれど、
家にいたくなかった私は、そのうち金曜日にバイトを入れないようにして、
次第に日曜日も泊まって月曜日に帰るというパターンになり、家から脚が遠のいていった。
とにかく一時でも長く、先輩と一緒にいたかった。
月曜日の朝に駅で別れる瞬間は、とても辛かった。

そんな関係になった後も、私は一抹の不安を抱えていた。
「私たちって、つきあってるんだよね?」そう先輩に自分から確かめることははばかられた。
言葉にしてほしかったけど、先輩は口にしなかった。
「急にオレが外出することもあるかもしれないから、ないと不便だよね?」そう言って
先輩が合鍵を渡してくれた時、私は「そうだね」と平静を装っていたけど、
どんなにうれしかったか!心の中で「やったぁ~♪」って、叫んでいた。
「私は先輩のもので、先輩は私のもの」そう思えた瞬間だった。

先輩の部屋にはユニットバスがあったけれど、「たまには広い風呂に入りたいよね」って
どちらからともなく提案して、近くの銭湯へしばしば通った。
「『神田川』みたいにしようぜ」なんて笑って、Tシャツにスウェット姿で
裸足にサンダルを履いて、タオルやシャンプーを入れた洗面器を抱えて、二人して出掛けた。
先輩とする、すべてが「イベント」だった。
お風呂上りは『神田川』とは逆で、いつも先輩が待ちぼうけだった。
それでも先輩は文句を言わず、向かいにあるコンビニで立ち読みしたり、
飲料水を買って飲んだりして時間を潰してくれた。
帰りは子供の頃によくやった「グリコ」をしながら帰った。
ジャンケンして、グーで勝てば「グリコ」
チョキで勝てば「チョコレート」
パーで勝ったら「パイナップル」その文字数だけ歩けるゲーム。
どっちが先に家に辿り着くか競争した。
先輩はすぐムキになって、思い切り大またになる。
大抵途中でかけっこに変更になって、私が負けて、悔しくて泣いた。
そんな、こども同士のような2人だった。
先輩はサークルでは落ち着いていて、ちょっと近寄りがたい雰囲気でいるけど
私といる時は、無邪気によく笑った。
私をからかっていじめては喜んだりして、「同じ人物とは思えない」と私は苦笑した。
それでも私の我儘を受け止めてくれるから、不思議と喧嘩はしなかった。

いつも私の方から先輩を求めた。先輩は必ずそれに応えてくれた。
先輩とするセックスは、気持ちのいいものだったけど、
例えるなら「ゆっくりと落下するパラシュート」
私が急降下しそうになる前に、先輩の方が果てた。
それでも私は満足だった。
果てる瞬間の、先輩の見せるちょっと辛そうな、切ない表情を見るのがたまらなくうれしかった。
「私が先輩を気持ちよくさせている」そう実感したくて、いつもせがんだ。
その表情を確かめるたびに、私のココロとカラダの芯が、ぴくっと、疼く。
私は先輩のすべてが欲しかった。


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