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ヒトヅマ☆娼婦 4


あの人に電話をするのはどきどきした。
呼び出し音が鳴って、あの人が電話に出るまでの何秒か
あたしは心臓が止まりそうだった。

あと3回コールしてもあの人が出なかったら切ろう。
そう思ったとたん、あの人の声がした。
「はい」落ち着いた声。
「あ、ええっと、ムーンラバーズのミミです」
あたしはキャバクラの店の名前と源氏名を言った。
すごく緊張しいていた。
覚えてくれてるかな。
「ああ、君か」あの人がそう言ったので、あたしはほっとした。
「ちょっと待って。この電話にかけなおすよ」
そう言うと、電話は切れてしまった。
そのあとすぐに、電話はかかってきた。
あの人からだった。

「どうしたの?」
「あの、、、この前の愛人のことで。」
「ああ。だんなさんに聞いてみた?」
「はい」
「なんだって?」
「幾ら貰えるのか聞いてみたら?って言われました」
「ほんとに?」その人はちょっと驚いたような声を出した。
「はい」
「・・・そう。」
少しの間、沈黙が続いた。あの人は黙っていた。
あたしも黙っていた。
「じゃあ、会って話しましょうか」あの人が、やさしい声で言った。

あの人が指定した場所に約束の時間に向かった。
がらんとした休日のオフィス街。歩く人もまばら。
本当にあの人は来るのかな。
そう考えながらぼんやりしていると
黒い車がスーっとあたしの目の前に停まった。
車の窓ガラスが降りると、運転席にあの人がいた。
「遅れてごめんね。乗って」





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