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ヒトヅマ☆娼婦 7


「そんで顔剃り用のカミソリ買ってきたってわけ?」
やっちゃんが寝そべってポテチを食べながら言う。
「自分でできないのに?」
「だからさ、やっちゃん、やってよぉ」
「うーん。」やっちゃんが正座する。
「仕方ないなぁ。おいで」
やっちゃんの膝に頭をのせる。
「手が汚れてる。舐めて」
やっちゃんが自分の指をあたしの唇にあてる。
ポテチの油と塩の匂いがする。
あたしはやっちゃんの親指と人差し指を丁寧に舐めてあげる。
やっちゃんは、にこにこしてうれしそう。
やっちゃんが失敗して、顔に傷ができたらどうしよう。
でもやっちゃんは、あたしのだんなさんだから、いいや。
あ、水島さんが怒るかなぁ。顔に傷つけたら契約してもらえないかも。
「やっちゃん、気をつけてね」
「うん」やっちゃんが真剣な顔になるから
あたしは思わず、噴出しそうになる。
「しのちゃん、じっとして!笑っちゃダメだよ」
やっちゃんが叱る。

「顔を剃るとね、ファンデーションのノリがぜんぜん違うんだって。水島さんが言ってた」
「ふうん」
やっちゃんは無事にあたしの顔をキレイに剃ってくれた。
やっぱりやっちゃんは、器用。
「で、その人がこれをくれたの?」
あたしが水島さんからもらってきた書類を、やっちゃんが眺める。
「契約書と健康診断書だって。」
「健康じゃないとだめなのかぁ。」
「うん。病気を持ってないか確認するんじゃない?」
「しのちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だと思うけど」
「なになに・・・試用期間1ヶ月。その後は1ヶ月更新、と。へぇ。」
「嫌なら更新しなきゃいいよね」
やっちゃんはあたしの言葉も聞こえないぐらい、契約書の内容をチェックしている。
「試用期間の報酬は7万円かぁ。キャバクラに比べたらぜんぜん安いよね。」
「でも月に3回ぐらい会えばいいだけだし。」
「ぶっちゃけ、これじゃキツいなぁ。」やっちゃんは心配そう。
「水商売は禁止だって言うから今の店はやめるけど、他でバイトする。
そのバイト代と水島さんからもらうお金で何とかなるよ」
「うーん」
「そのうち金額も上がるし」
「大丈夫かなぁ」
「あたし、やってみたいの」あたしは、いつになく真剣だった。
やっちゃんに賛成してほしかった。
「そう・・・」やっちゃんもまじめな顔で、あたしを見つめた。
「じゃ、やってみたら。しのちゃんの好きにすればいいよ」
やっちゃんは微笑んだ。









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