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ヒトヅマ☆娼婦16


水島さんからの突然の連絡で、習い事の後のバイトをキャンセルしたあたしは
やっちゃんに電話する。

「もしもし」
「あ、やっちゃん?あたし。」
「うん」
「今日ね、久しぶりに水島さんから連絡があってね」
「うん」
なぜだか、緊張した。
「今日これから会おうって言われたの」
「うん」
「・・・でね」
「うん」
やっちゃんは「うん」しか言わなかった。
「遅くなるかもしれないから・・・」
「うん」
「・・・ご飯、食べてて」
「わかった」
「・・・やっちゃん!?」あたしは急いでやっちゃんに話しかける。
「え?」
「怒ってる?」
「なんで?」
「だって・・・うん、しか言わないから」
「怒ってないけど?」
「そう?」
「うん」
「ほんとに?」
「あはは。うん、怒ってないよ。しのちゃん、気をつけて行ってきてね」
「わかった」

もともと無口なやっちゃんだから、こういう応対は当たり前なのに
なのにどうして、萎縮しちゃったんだろう、あたし。
やっちゃんは、あたしと水島さんの関係をちゃんと理解しているんだろうか。
会ったらHしちゃう関係だってこと、わかってるんだろうか。
わかってるはず。なのに、なんでもない顔でいる。平気な態度でいる。
あたしのことなんて、どうでもいいのかな・・・。
なんて、あたしはいきなり不安になる。
あたしがやりたいって決めたことで、やっちゃんに不機嫌になられたら辛いんだし
やっちゃんが平気でいてくれることはありがたいことなのに。

あたしのことを、やっちゃんは大切に扱ってくれる。
昨日だって、布団の中でずっと抱きしめていてくれた。
今朝だって、おはようってほっぺに何度もキスしてくれた。
やっちゃんは、たしかにあたしを想ってくれている。

水島さんのことは、お仕事。
あたしの方こそ、それを理解しきれていないのかもしれない。





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