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ヒトヅマ☆娼婦30


炭火焼コースが一品ずつ運ばれてきて、水島さんはワインをボトルで注文する。
「詩埜も飲むよね?ワイングラス2つね」

沈黙になる。あたしは何か話さなきゃって焦った。
「あの・・・、炭火焼ってテーブルの上で焼くんじゃないんですね。」
「うん。向こうのカウンターの中で店員が食材にあわせた絶妙の焼き加減で
焼いてくれるんだよ。僕たちは運ばれてきたものを食べるだけ。
食材も全国から選りすぐりのものを取り寄せているんだ。
だからご丁寧にこうやって一皿ずつ運ばれてくる。
そのたびに、どこの産地かも説明してくれるってわけ(笑)」
水島さんがあたしに、やさしく答える。
「そうなんだ~。あ!このお魚おいしいね、やっちゃん。」やっちゃんに振ってみる。
「うん」やっちゃんは、いつもと変わらずマイペースに、もくもくと食べている。
水島さんはそんなやっちゃんに目をやり、その様子をじっと見つめたりしていた。

あたしと水島さんが食事をしながら雑談する中、やっちゃんは会話に入らず
相変わらず静かに食べ続けるだけだった。
食後のコーヒーが運ばれた後、水島さんがやっちゃんに話しかけた。
「君の学校の話だけど・・・」
やっちゃんはコーヒーカップをソーサーに戻して水島さんを見る。
「結論から言うと、僕が君に次の学校を紹介して、君が入学するのは可能だ。」
「よかったね!やっちゃん」あたしはほっとして素直に喜んだ。
「でも、今度は真面目に授業を受けると約束してくれないと困るよ」
水島さんの顔つきが変わった。
「え?」あたしは意味がわからずに、水島さんの次の言葉を待つ。
「悪いけど、以前の学校での君の受講状況を調べさせてもらった。
お世辞にも勤勉とはいえない。ここ半年、ほとんど授業を受けてないね」
「・・・そうなの?」あたしは驚いてやっちゃんを見る。
やっちゃんは、眉ひとつ動かさず水島さんを見つめていた。
「君は本当に公認会計士になるつもりがあるの?このまま詩埜の稼ぎでずるずると
学生ごっこ、夫婦ごっこを続けるつもりなんじゃないのか?」
「・・・・」あたしは何も言えず、やっちゃんを見ていた。
うそでしょ?学校に行っていなかったなんて。その間どこにいたの?なにしてたの?
水島さんの問いかけに、やっちゃんは答えない。
「ま、君の将来のことは僕には関係のないことだけどね。
ただ、詩埜を君のそばには置いておけない。」
「どういうことですか?」やっちゃんが口を開いた。






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