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ヒトヅマ☆娼婦32


あたしは力なく元の席に腰を下ろした。
あたしはなにも言えなかった。水島さんを見ることもできずに、ただ、うつむいていた。
やっちゃんを追いかけたい。でも、やっちゃんは、なんていうだろう。
あたしはやっちゃんに、なんていえばいいんだろう。
言葉が見つからない。学校に行っていなかったやっちゃんを責めることができない。
どこに行っていたのか、なにをしていたのか、訊くのが怖い。
さっきのやっちゃんの、あんな怖い顔、はじめて見た。
あたしは、いつもにこにこと笑っているやっちゃんしか知らない。
あたしの知らないやっちゃんがいる。そう思うと、とても怖かった。

「詩埜、行こうか」水島さんが立ち上がった。
「これから仕事だよ」
そう言って店を出る水島さんの後ろを、あたしはついていくよりほかなかった。

タクシーはいつものホテルへと向かう。
こんな最悪な気分なのに、水島さんはあたしに要求するつもりなんだ。
ベッドの上での、あの仕事を。
今夜は勘弁して欲しかった。どうしてもできない。
水島さんに頼んで帰してもらおうと思い、口を開きかけたときだった。
「こういう時はスペシャルゲストを呼んで、スペシャルなことでもしようか」
そう言って、水島さんは携帯電話で誰かに電話をかけた。







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