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ヒトヅマ☆娼婦33


あたしは思い切って水島さんに頼んだ。
「水島さん、あたし、今夜は帰りたいです・・・。お仕事キャンセルしていいですか?」
あたしから言い出すのは初めてのことだった。
「だめだと言ったら?」水島さんが、あたしをじっと見る。厳しい目だ。
「とてもそういう気分じゃないんです・・・ごめんなさい」
あたしは懇願するように言ったが、水島さんは承諾してくれなかった。
「詩埜、いつもなら帰してあげるところだけれど、今日は帰したくないんだ」
そう言って、水島さんがあたしの手を握った。
「どうしても?」
「ああ、どうしても。」水島さんは口調を強めると、あたしの手を自分の膝に持っていった。
「さっきの提案だけどね、僕は君のだんなさんがちゃんと卒業して資格を取れるとは思っていない。
思っていないから、あんな提案をしたんだよ」
「どういうこと?」
「君をもう返さない、ということだ。これからずっと僕のそばにいるんだ。
君のだんなさんが学校に行かずにどこに行っていたか、僕は知ってるんだよ。聞きたいか?」
そういって、あたしをもう一度見る。あたしはまた、何も言えなくなった。
水島さんはあたしの答えを待たずに、続けた。
「君のだんなさんはね、他の女性の部屋に行っていた」
「うそです!」そこまで聞いて、あたしは耐えられずに声を上げた。
「そんなの、うそです・・・そんなはずないです・・・」こらえきれずに涙が溢れる。
「詩埜、もう帰るな。もう返さない」

タクシーは、ホテルのエントランスの坂を上っていた。
「だとしても、それは・・・それはあたしのせいです。やっちゃんがそうしたのは、あたしのせいです」
あたしは、それを言うだけで精一杯だった。







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