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ヒトヅマ☆娼婦35


あたしは泣きながら浴室へと向かう。
洗面台の鏡を覗くと、そこにはマスカラの取れたひどい顔のあたしがいた。
あたしはどうしたらいいんだろう。どうすべきなんだろう。
どうしたいんだろう。
わからないまま、服を脱ぐ。この黒のワンピースも、この靴も、この下着も
すべて水島さんが与えてくれたものだ。
化粧もマニキュアも香水も、すべて水島さんの好みのものだ。
ここに映っているあたしは、髪の先からつま先まで、ぜんぶ水島さんのための、
水島さんを喜ばせるための、あたしなんだ。
でも、悲しくはない。あたしが、あたし自身が望んだのだから。
それはお金のためだったの?やっちゃんのためだったの?
そうじゃない。
あたしが、そうしたかったんだ。水島さんに受け止められたかったんだ。
あたしは水島さんを好きなのかな。愛しているのかな。
それはわからないけどでも、、、
あたしにとって水島さんが必要だった。
セックスから始まった、奇妙な関係だったけれど
そこから与えてもらったこと、あたしが得たもの。
それは単なるお金だけじゃなく、モノだけじゃなく
カラダの快楽だけじゃなくて
女として、得られる幸福感。
それだったら、やっちゃんにだって、もらっていたはず。
愛されて、大切に想われていたはず。
少なくともあたしはそう思っていた。でも・・・。
水島さんの言うように、心だけでなく、カラダでも繋がらなければ満足しないのだろうか。
そんなことを、ぐるぐると考えたけれども、答えは出ない。
出ないことに疲れたあたしは
頭のてっぺんから、熱いシャワーを浴びた。





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