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ヒトヅマ☆娼婦37


白い肌に吸い付くように食い込む赤い縄。
「詩埜、とってもきれいだよ。思ったとおりだ」
あたしの傍らに寄り添って、鏡に映ったあたしを眺める水島さんは目を細めて言った。
「自分で見てどう?」
そう聞かれて、あたしは考える。
「自分じゃないみたい」
そう。鏡に映るあたしは、あたしじゃないみたいだ。
客観的にきれいだと思う。それにとても艶かしい。
だけど、これはあたしなの?
腕を動かそうとしてみるともちろん動かないから、これはあたしなんだとわかる。
でもここに映っている女は、あたしの知らない表情をして立っている。
まるで、あたしの感情があたしの身体から離れてしまったみたいだ。
「どうしたの?もうやめる?」水島さんがあたしに聞く。
もっと続けたいとも、もうやめたいとも思わなかった。
なにも考えられない。なにも感じない。
答えないあたしに、水島さんはベッドに座るように促して男の人に目で合図をすると、
男の人は荷物を持って部屋から出て行った。

水島さんは床に膝を立てて、ベッドに腰掛けたあたしの腿に頭をのせた。
「詩埜、君はだんなさんにこうして縛られているんだ。それは詩埜にとって安心できるものなのかもしれないね。そして彼を信頼しきっていなければ、できないことだとも思う。」
水島さんは続ける。
「君に初めて会ったとき、不思議なものを感じたんだ。風俗の店にいるのに君の顔は欲望にまみれていなかった。この子はどんな子なんだろうと興味が湧いた。君はだんなさんに縛られて安心していたんだろう。でも君の意志でなにかを決めたことなどなかったかもしれない。
君は僕の愛人になろうと、君自身で決めた。だから僕が、君を縛っているものから君を解いてあげたいんだよ」
水島さんはゆっくり顔を上げて、あたしの目を見た後、後ろ手に縛られたあたしの腕から縄を解き始めた。
縄をすべて解くと、あたしの身体を抱き上げてベッドの中央に横たえた。
「縄をほどいても不安にならなくていい。今度は僕が、こうして抱きしめるから」
水島さんは服を着たまま、あたしの身体をしっかりと抱きしめた。



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