龍影堂

龍影堂

霧雨



 視界の続く限り、

 広く降り注いでいた。


 シトシトと、降っていた。

 とてもとても永いこと。

 ずっと、ずっと降っていた。


 シトシトと、降っていた。

 それは「霧雨」と言われている、

 いろんな人に嫌われていた。

 いろんな人に無視され続けていた。


 シトシトと、降っていた。

 それでも「霧雨」は降っていた。


 シトシトと、降っていた。

 何にも特にならないのに、

 誰にも必要とされていないのに。


 それでもずっと、降っていた。

 とても、がんばっている様に見えた。

 でもほとんどの人が気付かなかった。



 でも、それでもがんばっていたのは、

 気付くのを待っていたから。



 誰かが気付いた。





 「霧雨」は、止んだ。







 気付いた人は、ひとつだけ「幸せ」を掴むことが出来た。



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