C.アバド指揮:ベルリン・フィル(89年録音)
11曲あるマーラーの交響曲山脈の劈頭を飾る、1889年、29歳の時の作品。当初は5楽章(花の章付)であったが現在は4楽章で演奏される。このアバドの録音は、彼がカラヤンの後を継いでベルリン・フィルを掌握し終えた頃の録音。明るく伸びやかで、非常にすがすがしい演奏である。BPOの機能も全開で、緩急の付け方がまた素晴らしい。同コンビのマーラーチクルスは90年代マーラー演奏史における輝かしい業績の一つだ。
小澤征爾指揮:ボストン交響楽団(87録音)
「巨人」はベストを選ぶのが非常に難しい。全体の構成を優先するのか、終楽章の爆発的な推進力を取るのか、いつも悩んでしまう。前述のアバドが前者なら、今から17年前の小澤のこの力演は後者。もちろん終楽章以外も文句なく良いのだが、終楽章のエネルギーの解放が理屈ぬきに素晴らしく、そのパワーに思わず酔ってしまいそうだ。いつも思うのだが、小澤は後期ロマン派から現代曲が最も得意なのだと感じる。まぁベートーヴェンは他の人で聴けばいいか・・・珍しい「花の章」付。
Z.メータ指揮:ウイーン・フィル(75年録音) DECCA440 615-2
1895年初演。75年の録音だがとにかく録音が素晴らしい!もちろん最初はレコードで聴いたのだが、あまりの美音に本当に驚いた記憶がある。きちんとしたオーディオシステムを持っている人なら、絶対にレコードで聴いた方が良いと思う。演奏はメータ若かりし頃、野心に燃えていたアグレッシヴな感情そのままを叩き付けたような躍動感にあふれた名演。近年のこの人は三大テノールの随伴者になってしまったが・・・今の姿からは想像できないが、この録音は信じられないほど完成度が高い。
L.バーンスタイン指揮NYP(87年録音)
バーンスタイン二度目の全集の一つ。まさに入魂、もはや病的ともいえる入れ込みようで、骨太で巨大なスケールの演奏を展開する。尋常でないのは最終楽章。独唱パートを限界までひっぱり、人間業を超えた歌唱を要求している。よくぞここまで声が続くものだ、と驚いた記憶がある。このような演奏を最後まで真剣に聴くと、聴きてまでもが完全に消耗してしまうからコワイ。そういう体験をしてみたい方にはお勧めの一枚。バーンスタインという巨人の、恐ろしいまでの意志の力を体験できる。
MAHLER DISCOGRAPHY by P.FULOP THE CAPLAN FOUNDATION
PENGUIN社から出ているのですが、1995年までに発売されている1168枚のマーラー・アルバムを全て網羅、収録日時・場所、指揮者別の演奏時間詳細まで情報満載です。巻末にはニューリリースのための白紙ページがあり、自分で書き込んでくださいというのですから笑ってしまいます。